うっすらと目を覚まし、カイトは少しばかり後悔した。
寒い。
ベッドの中で、きちんと布団にもくるまっているのに、なんだか足先が冷えているような気がする。
愛襲
「んー……………っ」
失敗した。
寝る前に布団をもう一段、暖かいものに替えようと思っていたのに、忘れてしまった。
有耶無耶のうちにベッドに雪崩れこみ、寒さとは無縁の心地で寝る羽目に陥ったせいで、すっかりと――
「ぅー………」
反省。
今日はもう、部屋の掃除が終わった時点で、昼間のうちに布団を取り替えておく。
「ぅ…………ん」
あとは目が覚めてしまった『今』を、どうするか――いや、それよりも気になるのは、隣に眠るがくぽ。
風邪を引いたりしたら、どうしよう。
もともとは体を鍛えていて、滅多には風邪を引いたりしないがくぽだ。寒さにも、カイトよりずっと強い。
けれど、自分と暮らし始めたことでいろいろと、心理的にも体調的にも変化があったという。
それは良い意味で、とは言われたけれど。
これまで張っていた気が、緩んだというから――もしかしたら、これまで気を張っていて罹らなかった風邪にも。
もちろん、日々の食事からなにから、カイトはとてもとても気を遣っている。
それでも今日のような失敗は、ある。
まだまだ経験不足で、万全とはいかなくて――
「…………ん?がく…………?」
ふと、隣に眠るがくぽが体を反して、カイトのほうを向いた。手が伸びて、体が抱き寄せられる。
起きたのかと思ったが、寝ている。浅い眠りの中の、無意識の行動らしい。
口を噤んだカイトを、がくぽは眠ったまま抱き寄せる。体をぴったりとくっつけて、仕上げにもふん、と首筋に顔を埋めてきた。
「……………ほんと、犬だよねぇ………」
ぼそりとつぶやきつつ、カイトは自分からもがくぽへと擦り寄った。
おそらくがくぽの行動は、寒さゆえだ。
寒さから、手近にあるカイトというぬくもりを抱きしめた。
そう。
ひとりきりなら、寒い――けれど、二人でくっつき合えば。
「………」
カイトはそっと様子を窺いつつ、がくぽの足に足を絡めた。
起きる様子もなく、がくぽのほうも足を絡めてくる。
「……………………んー…」
ぬくぬくと、再び戻ってきた暖気に、眠気も戻ってくる。
起きる時間にはまだ少し余裕があるから、二度寝をしようと瞳を閉じつつ、カイトは小さくため息をこぼした。
――ごはんを食べて、がくぽを学校へと送り出したら、掃除。
掃除のときに、暖かい布団を出して、天日干し。ふかふかもふもふにして、万全の態勢に。
同じ失敗は、くり返したくない。
絶対に、くり返さない――の、だけど。
「…………どーしよっかなー………………」
こうしてくっつき合って、お互いのぬくもりを分ける。
この心地よさも、手放しがたい――