休みの日に、ベッドでごろごろしているだけなんて、もったいない。
せっかくの、外国。
学校が休みとなったら、あちこちあれこれと、観光に行きたい。
いわゆる観光名所と呼ばれるところに行ってもいいし、有名ではない近所の博物館や美術館だって、日本人の二人からすれば、十分に見物。
それから――
Lake of Kiss
「ん、は………ぁふ」
「んー」
息継ぎのために少しだけ離れたら、がくぽは途端に不満そうに鼻を鳴らした。
カイトは笑って、吸われ過ぎて腫れぼったくなったくちびるでがくぽのくちびるを撫でる。
「ちょっとだけ、息させ……ぁ、んん………っ」
舌足らずにお願いした途端、逃げた頭を捕まえられて、キス。
――休みの日に、ベッドでごろごろしているだけなんて、もったいない。
せっかくの外国だし、いい若い者なのだし。
けれど。
「ん、はふ……っ」
「カイト」
「ぁはっ」
呼ばれる名前も舌足らずで、カイトは笑う。
がくぽは、自分が舌足らずになるのは気持ち悪いと言う。
けれど、お互いに舌がもつれるくらい、キスに溺れて。
「がぁくぽ」
「ああ」
甘く名前を呼ぶと、陶然とした色を刷いて伸し掛かっていたがくぽは、撫でられる犬のように瞳を細めた。
休みの日に、ベッドでごろごろしているだけなんて、もったいない。
でも、二人で暮らしているからこそ出来る、休みの日の過ごし方。
朝起きてからずっと、二人でベッドにごろごろして、飽きるまでくり返すキス。
――飽きる、なんてことが、あればの話。
いつものように括られることもなく垂れるがくぽの髪をひと房取り、カイトは微笑んだ。
指に絡めた髪にくちびるをつけると、悪戯な光を宿して横目にがくぽを見上げる。
「ね。…………キス、だけ?」
「………望むなら、全身に。隈なく、雨あられと――」
蕩けるささやきを落として、がくぽは笑うカイトのくちびるを塞いだ。