アパートメントの扉を、がちゃりと開く。
「カイト、ただい………」
「おっかえりぃ、がくぽー♪」
キュートパス・ハニィとワイルダリィ・ダァリン
がくぽが扉を閉じながら言う途中で、エプロン姿のカイトがキッチンから駆け出してきた。
ご丁寧に、片手にはおたまを持っている。
満面の笑みで飛び出してきたカイトだったが、いつものようにがくぽに抱きつくことなく、寸前で止まった。
受け止めようと開いた腕を微妙に彷徨わせるがくぽに、わずかに腰を屈めると、殊更な上目遣いになる。
「おかえりなさい、ア・ナ・タvvごはんにする?お風呂にする?そ・れ・と・」
「カイトだ!!」
「どぅわぁ?!」
――おそらく『新婚さんの大定番』で出迎えようとしたカイトだが、皆まで言うことは出来なかった。
最後まで聞くことなく、がくぽが伸し掛かってきたからだ。
力の差もあるが、こういうときのがくぽの器用さといったらない。
カイトはあっという間に床に転がされ、服を捲り上げられていた。
「ちょ、ちょ………が、がくっ、がくぽっ!!こらぁっ、このおばかわんこっ!!せっかく俺がっ!ってぅわぅわわっ!!」
「俺がカイト以外のものなど、選ぶわけがないだろう!なにを示されようが、カイト一択、カイト限定、カイト一直線だ!!」
わたわた暴れるカイトを押さえ込んで服を剥きながら、がくぽはすらすらと吐き出す。
確かにそうだろう。
わかっている。
わかっているが。
それはそれ、これはこれ。
「だとしても、ひとの話は最後まで聞きなさいっ!!だいたいがくぽはいつもいつもっっ!!」
「いっだだだだっ?!」
長い髪を容赦なく引っ張られた挙句に始まったカイトのお説教に、がくぽは二重の意味で悲鳴を上げた。