勉強の合間の小休止。
氷が程よく溶けて、冷たく爽やかなお茶を啜りつつ、隣に座るカイトが上目遣いでがくぽを見た。
「がくぽせんせって、お休みの日って、どう過ごしてるの?」
風曲花詠
「休みの日、か?」
問われて、がくぽはわずかに眉を跳ね上げる。
好奇心に駆られて、――というにはあまりに真面目な顔で、カイトはこくんと頷いた。
「うん。お休みの日。なにしてる?」
「んー…………まあ」
答えにならない答えで返し、がくぽは冷たいお茶をひと口含む。
コップからくちびるを離すと、きちんとした答えを待っている生徒に、曖昧な笑みを向けた。
「カイトは?君は、どう過ごしているんだ?」
「俺?」
答えが得られないままに返される、同じ問い。
瞬間的に瞳を見開いたカイトだが、それはすぐに恥じらいを含んで伏せられた。
目元から頬からほんのり染めて、カイトはお茶の入ったコップを弄ぶ。
「…………せんせのこと、考えてる。今なにしてるかなとか、なに考えてるかなとか。…………がくぽせんせ、ちょっとくらい、俺のこと思い出してくれてるかな、とか………」
「……………」
最後はか細く消えた言葉は、けれどしっかり届いた。
思わずこぼれるため息を、がくぽはコップを口に当てることで誤魔化す。
ひんやりと冷えた感触――それでも冷めない、募る体の熱。
こくりとひと口飲んでコップを机に置き、がくぽはカイトへ手を伸ばした。弄ばれるコップを取ってそれも机に置くと、もじもじしている体を抱き寄せる。
「………せんせ?」
きょとんとしつつも大人しく膝に招かれたカイトに、がくぽは笑みの形のくちびるを寄せた。
赤く染まって熱っぽい頬に触れると、カイトはぴくりと身を竦ませる。
構うことなく、がくぽは膝に乗せた体をやわらかに抱きしめた。
「――君のことは、思い出さないようにしている」
「………っ」
きゅっと縋りついてきたカイトの頭に顔を埋め、がくぽは苦い笑いをこぼした。
「思い出したら、会いたくて我慢できない。――会いに行ってしまうよ、カイト」