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膝の上にちょんまりと座ったお子様から向けられる疑惑の目に、がくぽはつい、苦笑した。

「確かに、ね……私はこうして、君を膝に上げるのが好きだし、――そもそも『手を出して』しまったときの、君の年齢というものがあるからね疑われるのはまあ、ある程度、仕方ないとは思うよ。心外ではあるけれど」

「せんせ」

気をつけはしたが、おそらく思ったより自虐的に響いただろう。眇めていた目を丸くしたカイトが、一度は離した指をがくぽの胸元へと伸ばした。

縋るような素振りでもあるそれを拒む気はなかったが、がくぽはカイトがさらなる言葉を重ねるより先に、その幼い体を突き放した。

突き放して、ソファ代わりとばかりに座っていたカイトのベッドに、ころりと転がす。

「ふ、ぇ?」

体格差や諸々あれ、それにしても鮮やかな転換だった。

もとより抵抗を知らないが、もしあったとしても抵抗する余地などまるでなく、気がつけばカイトはベッドに転がっていて、天井を眺めていた。せめてもできたことといえば、きょときょとんとして、瞳を瞬かせる程度だ。

未だ無垢にして、無邪気な、いとけない恋人――

愛おしさに笑みをやわらかく解きながら、がくぽは無防備に転がる『幼い』恋人の肩を押さえ、その小さな体へ伸し掛かった。

「君が大きくなって、私の膝にも乗れないような体格になったら――『かわいい』盛りの年齢を過ぎて、君が『大人』になったら、私は君に、愛想を尽かす?」

ちょっとした意見の食い違いから拗ねた恋人が放った言葉をゆっくりとくり返し、辿って、がくぽはわずかに身を沈めた。未だ、抵抗を思いつけもせず見入るだけのカイトの耳朶に、そっとくちびるを添わせる。

「ぁ、せん……」

びくりと竦んだ体を押さえる手に力をこめ、がくぽの笑みは堪えきれない熱情を呑みこみ引き潰して、歪んだ。

「まさか、だよ、カイト――まさか、だ。『そう』なったら、今度は私が君の上に乗るだけだ。こういうふうに、ねむしろ私は、その日が待ち遠しくて堪らないのだけど――君はどうだろう、カイト?」