「くっふふぅっ♪かぁむいがぁくぽくぅうんっ!!この間のテストで、すっごくいー成績取ったキミに、せんせがご褒美上げるぅっ☆」
Kiss to Baby
「ぅ、わっ?!!」
部屋に入ってくるなり怪しさ全開の笑いを閃かせた家庭教師に、がくぽは素直に仰け反った。
普段から奇行の目立つ人ではあるが、馴れるということはない。肝心要のその人が、がくぽくんは真面目だからねー、とかなんとか言っていたが、そういうレベルを超えている。
奇行をやらかそうが奇矯なことを言おうが、それでも大好きだと言い切るが、それとこれとは別問題。
「せ、先生っ。お気持ちはありがたいですけど、カイト先生が俺にご褒美を上げるんじゃなくて、むしろ俺がお礼をするべきじゃないかとっ!」
「んっ・ふっ・ふっ☆」
逃げに入っているがくぽに気がついているだろうに、カイトは一向に構わない。
かわいい顔をにったにったといかがわしい笑みに歪め、鞄の中から茶封筒を取り出す。
ごく普通の、素っ気ない、茶封筒だ。完全な事務用品。少なくとも、外見は。
封筒なので、問題は中身だ。
椅子の上でさらに身を引いたがくぽにずいっと近づき、カイトは顔の前で封筒を振った。
「なぁんと、せんせのヌード写真、あげちゃう♪」
「ぬーっ?!!」
「それもフルヌード。オールヌード。全裸写真。すっぽんぽんの、生まれたまんまのお姿☆」
「んななななっ!!!」
――カイトは家庭教師で、がくぽは受け持ちの生徒だ。
そんなものがご褒美になるかというと、――単なる生徒と教師の垣根を越えてしまっているので、ご褒美にならないこともない。
しかしがくぽは未だ、成人指定本を買うことも出来ない年齢だ。
いくらそういう仲ではあっても、『教師』として与えていいご褒美と、だめなご褒美がある。
奇行はデフォルトとはいえ、カイトの行為は明らかにやり過ぎだ。
乗り出すカイトから仰け反って逃げたまま、がくぽは表情をきりっと引き締めた。
「先生、いくらなんでもそういったものは受け取れませ」
年頃少年でありながら、見上げた性根できっぱりと断ろうとしたがくぽに構わず、カイトは封筒にちゅっとキスをして笑った。
「カイトせんせ、御年三歳の湯上がりフルヌード写真でーっす☆」
「っっ!!」
「なーはははははっ!!」
高笑ったカイトに、がくぽは瞬間的に瞳を見開き――
逃げていた体が高速でカイトに接近すると、封筒を持つ手をがっしりと握り締めた。
「ん?あれ?がくぽ?」
唐突な勢いにきょとんとしたカイトをきりっと見据えると、がくぽは力強く叫んだ。
「くださいっっっ!!!!」