しょちぴるり
第4部-第1話
――さがさなくちゃ。
焦っていた、おそらく。
異端ゆえに、一族すべての母の命を奪って生まれた、妹=弟。
末の神は異端ゆえに世界と合わず、軋んで暴れた。
叫び、喚き、破壊を撒き散らした。
災禍も災厄も、禍事のすべては、本来自分の配下。
妹=弟は末の神にして定めの神なれば、いずれ力は勝ろう。
けれど生まれたばかりならばまだ、姉である自分の言うことを聞くはず。
なのに、聞かない。利かない。効かない。
力及ばない。
――さがさなくちゃ。
焦っていた、思考も空転するほどに。
異端の末神はただひとり、癒しの力持つ古き兄神にしか、抑えこめない。
抑えこむと言っても、彼はただ、暴れる末神を抱きしめ、うたうだけ。
痛みを取り去り、苦しみをやわらげ、こころ安らがせるうたを。
叩きのめすわけではない。
暴れる末の神に、伸ばす手を、抱く胸を、腹を、背を、足を――
全身をずたずたに裂かれ、殴られ、うたうたう咽喉すらも潰されながら、ひたすらに。
うたう、うたう、うた――
――あるはず。きるものが。えにしを、よすがを、むすびめを………
どんなに強固なキズナでも、不吉を象徴する自分にならば、切り離せる。
焦っていた。
束の間眠る妹=弟の体を、懸命に探って、見つけようとした。
世界と彼ら=彼女らを結びつける、兄と彼ら=彼女らを繋ぐ、――
切り離す以外に、やさしいあまりに傷つく兄神を守る術が、あるだろうか。
切り離す以外に――
――ミク!!それ以上、さわったらだめ!!その子たち、しんじゃうよ!!
叫んで、兄神が体を滑り込ませ、自分を引き裂く末の神を抱きしめた。
異端であり、己の命を危ぶませるものであり、――
それでも兄神は全身で、末の神を庇った。
ミク――冥府を担う、不吉の象徴たる妹神から。
自分の手が、体が、触れたものの生気を吸うことは知っていた。
触れたものの、結ばれたえにしの糸を解きほぐし、切り離すことを。
焦っていた。
焦りからなにも見えず、夢中になって妹=弟の体を探った。漁った。
吸った――いのちを。
ころすところだった。
切り離すことを遥かに通り過ぎて、神にとって最大の禁忌である、神殺しを。
いかな不吉の象徴とはいえ、世界は赦すまい――赦されまい――赦せない――ゆるせない――………
――ミク、総意よ。異端の双ツ神は、世界に存在を禁じ、時系から弾き出す……あんたの力の出番よ。
母神が死んで、総領として立った古き姉神が、絶望に眩む背中を押した。
――あの子たちと、<世界>との結び目を、切り離しなさい。