「わーいっ、オラトリオの日だねーっ!」
「いえーいっ」
歓声を上げて飛びついた信彦を、オラトリオは軽々と抱き上げる。
「ちょぉっと待てぇいっ!!」
るーびっく・びーむ
抗議の声を上げたのは、シグナルだ。だんだんと足を踏み鳴らす。
「信彦の兄はぼくだろうっ?!なんでオラトリオの日なんだよっ?!」
びしっと指を突きつけて喚くシグナルに、オラトリオの腕の上の信彦は無邪気に首を傾げた。
「だってさー、シグナルって『兄さん』って感じじゃなくて、『兄貴』って感じなんだもん。でもオラトリオは『兄貴』じゃなくて、『兄さん』だからさー」
「わっけわからんっ!!」
叫んで頭を掻きむしるシグナルに、オラトリオは朗らかに笑う。
「まあま、いいじゃねえの。どっちにしろ、俺はおまえの兄でもあるんだ。ほーら、シグナルー。『兄さん大好きvvv』って抱きついていいんだぞー♪」
思いきりからかうオラトリオに、シグナルは卒倒しかけて後ろへと仰け反る。それからエクソシストばりの動きで、がばりと身を起こした。
据わった瞳で、オラトリオを睨みつける。
「抱きつくぞ。ほんっとぉお~にっ!!」
オラトリオはきょとんとしてから、にんまりと笑った。
「確かに、男に抱きつかれてもうれしくねえやなあ」
「……………………………オラクルには自分から抱きつくくせに…………………」
ぼそりとつぶやいたのは、傍観していたパルスだ。
「え、そーなの、オラトリオ?」
「A-HA!」
無邪気に訊く信彦に、オラトリオは怪しい笑いを返す。信彦を下ろすと、腕まくりした。
「ヤキモチかー、パルスくん♪ほぉら、おにーさんが抱っこしたげよう!!」
「ぃやめろ、このお調子者ぉおおおお!!」
「………兄…………かぁ…………」
攻防を繰り広げる『兄』二人を眺め、シグナルはため息をついた。