Cutie Duckey
「か、かいちょ………っ!!」
「ん?なぁに?どしたの、がくたん?」
『なえなえ変柄おぱんつ大作戦』に参加すべく、カイトが持って来たぱんつを見たがくたんはわなわなと震えた。
それくらい衝撃的な変柄だった――というわけではなく。いや、ある意味、非常に衝撃的ではあった。
つまりだ。
「おんなしでごじゃる」
「おんなじ?え?なにが?カイト、ちゃんと全部、違う柄を……」
戦慄してつぶやいたがくたんに、カイトはきょとんと目を丸くする。最終候補として絞りこんだ何枚かのぱんつに視線を走らせ、柄を確認した。
いずれもいずれ、甲乙つけがたい変柄だ。
ただしそれは、『同じ』という意味ではない。すべてがすべて、方向性や色味が違う。
もしも『同じ』だとしたら、それはいずれにしろ、感想がすべて『ヘンな柄』でまとめられるという程度の――
「おんなしでごじゃるよ!!」
言いたいことがわからず困惑するカイトへ、がくたんは大事なことだとくり返した。
だけでなく、自分の袴をがばちょと下ろす。
袴だけだ。下着はきちんと穿いたまま――ちなみにがくたんの上着、普段着は和装が基本だが、下着は洋式だ。幼子にも始末が楽だからだ。
つまりがくたんが普段から穿いている下着は、一般に『パンツ』と呼ばれる。
そう。
ぱんつだ。
「せっしゃのおぱんつと、おんなしでごじゃる!ちがうけど、おんなしでごじゃるよ!かいちょがいつも、せっしゃのために用意する、おぱんちゅと……っ!!」
「あ……っ!」
叫ぶがくたんに、カイトははっとした。次いでその表情は己の失態を素直に認め、わかりやすく歪む。
それこそ、でかでかとした文字で『しまった』と、顔面いっぱいに書いたがごとくだ。
つまり、そう――がくたんが今穿く、ぱんつだ。普段穿いている、ぱんつだ。
そして今、カイトが『がっくりがっくんしちゃうような変柄☆☆☆』だと言って持って来た、ぱんつだ。これからカイトが穿いて、『旦那さん』のがくたんをがっくりがっくんとさせるための。
確かに柄はすべて『違う』が、『同じ』だった。方向性、もしくは傾向がだ。
ひと言にまとめて括って、『変柄』というカテゴリに入れられるという、その点で。
「もし、もしや、かいちょ……っ!かいちょは毎日、せっしゃにがっくりしてがっくんしていたでごじゃるか?!ゲンメツしていたでごじゃるか?!な、なんれ、しょんなぱんちゅを、せっしゃに……っ!!」
最悪の答えを予想し、問い詰める幼子の語尾は涙に掠れて消えた。
「が、がくた………っ、ちが………ぅうっ!違わないけど、ちが………っ!」
なんとか言い訳ようとしたカイトだが、ややして覚悟を決めた。あるいは、諦めた。
どこか必死さを宿して揺らぐ瞳で、涙に潤む花色の瞳と見合うと、幼子の華奢な肩をそっと掴む。
「だって、がくたん……っ。がくたんったらこんなにちっちゃいのに、すっごくカッコいいんだもの!こうでもしないと、カイト、ガマンが……!カイトのためだけじゃなくて、がくたんのためでもあるのっ!だから、お願い!これからもなえなえおぱんつ、いい子に穿いて?!」