妹たちは、クリームにまみれた兄が見たかった。
進展するとかしないとか抜きで、とにかく、クリームにまみれた兄が見たかった。
のちのまつり
「………………まあ、つまり、言いたいことは、わかります」
「そ、そうでしょ、マスター!ボクたちの言いたいこと、わかってくれるよね?!」
「そうよ、マスター!わかるでしょ、リンたちの気持ち!!」
珍しくも頭痛を堪えるかのような渋面のマスターに、ミクとリンは手をお祈りに組んで、必死に言い募る。
「わかりますよ…………私だってあの結末にはひとこと、物申したいですから。ですが……」
言いながら、マスターはリビングを見渡した。
札束が羽を生やして飛んでいく幻想が見えた。
「……………………とはいえ、だからといってさすがに、家の中でパイ投げ合戦をしてはいけません…………」
家具も家電も、おそらく壁紙も総取り換えだ。業者を入れないとだろう。
遠い目をしたマスターの力無いつぶやきに、ミクとリンは悄然と項垂れた。
「……………おこづかい、へらしてください………………」