ぐ、と手で掴まれ割り開かれた双丘の、奥。

そこに、躊躇いもなくぺちゃりと舌が触れて、畳に俯せていたカイトは悲鳴を上げて背を仰け反らせた。

「ぁ、ぅそ………っ、ぅそ、がくぽ………っそこ、そこ……もっ?!そこも、なめる、のっ?!」

逃げようとする体は、がくぽがしっかりと掴んで離さない。

カイトは震えながら、懸命に振り返る。薄い肉付きのそこに、顔を埋めているがくぽが見える――彼が閃かせる、赤い舌が。

「ぁ………っ」

体から力が抜けて、カイトは再び畳に沈みこんだ。

まにあるせくす-03-

すべて舐めたい、というから、舐めてもいい、かなとはてなマーク付きで、許諾してみた。

莞爾と笑ったがくぽは、今ひとつ状況のわかりきっていないカイトが深く考える前に、言葉通りに行動した。

つまり、全身を舐めたい――と言ったままに、カイトの体のそこかしこを、きれいに舐めて辿ったのだ。首から胸へと辿り、足の先まで。

どこを舐められても、体に痺れと疼きが走った。カイトが「いやだ」と言った場所は、殊更に丹念に舐められて、「気持ちいい」に変えさせられた。

そうやって体中を散々に舐め回されて、撫で回されて、喘がされ啼かされ続けた。

足の指先を含まれて、そこでまで下半身が痺れを訴えたときには、カイトは自分の体が、すべて快楽で出来ているのだと思った。

がくぽが触れたところで、およそ「気持ちいい」にならなかったところがない――そして、がくぽはカイトの全身、隈なく触れたのだ。

つまり、自分の体はすべて「気持ちいい」で出来ている。

ぐったりとして「悟った」カイトを、がくぽは俯せにした。背中を舐めて辿られて甘い声が上がっても、もうカイトは不思議とは思わなかった。背中も自分で、自分は快楽で出来ているのだから。

とは思ったものの。

がくぽのくちびるはさらに下りて行き、薄い肉付きの場所を割り開いて、躊躇いもなく舌を伸ばした。

そこは、がくぽを受け入れる場所だとわかってはいたけれど、舐める、場所――では、ない、はず。

「ぁ………っ、ゃあ………っ」

舌が差しこまれ、襞を伸ばすようにしながら、奥へと辿る。指が、狭いその場所を広げるように動く。

閉じようとひくつくのに、触れる空気がわかるほどに開かれて、唾液が流しこまれるのを、まざまざと感じた。

ロイドの体だ。人間とは違う。そこは愛撫を加えることはなくても、宛がわれたものを宛がわれたままに受け入れる。

丹念に舐め解いて、指で刺激し、濡れることを誘う必要もない――のに。

「がくぽ………ぉ………っ」

「まだ『気持ちいい』には遠かろう今、気持ちよくしてやるゆえ」

「や、じゅーぶん………っっ」

なにかの目標を定めたらしいがくぽは、ひたすらにカイトを「気持ちよく」することに熱心だった。

カイトは涙目で頭を振り、力の入らない体を引きずって、がくぽから逃れようと試みる。もちろん、逃がしてくれるがくぽではない。

こんなに「気持ちいい」ばかり与えられては、体も思考も蕩けて消えそうだ。

入口近辺を探っていたがくぽは、ひくつく場所に指を差し入れた。やわらかく解けて呑みこむそこを、慎重に探る。

「ぁ……っは………っ」

カイトは震えながら、ひたすらに畳を掻いて、啼く。

あるのは違和感だが、同時にもどかしさと期待に、熱が集まる。

この間、初めてがくぽを受け入れて――そのあと、強請られるままに、何度も抉られて、擦られた。

覚えている熱と、質量と、体を襲った感覚と。

「………ここだったか」

「ひっぁ、やぁあ……っっ」

がくぽの指が一際強く内襞を抉り、カイトは仰け反った。そこ、だ。

がくぽのものがそこを突くたびに、抉っていくたびに、思考が飛んだ――記憶は生々しい。

「ん、ぅ………っが、くぽ………っそこ、は、だめ………っだめ………ぁ、ぁあっ」

しつこくしつこく押されて揉まれ、カイトは仰け反って震える。自分のものが痛いほどに反り返り、雫をこぼしているのがわかった。

がくぽは笑って、カイトのものに手を伸ばす。

「駄目、かもう一度、教え直すか…………ここが、こうなっているときには………」

「ゃあ、だめぇ………っっ」

片手では中を弄り、もう片手が反り返って雫をこぼすものを掴んで扱く。

二か所を同時に刺激されて、カイトは畳を掻いた。

がくぽがわずかに身を乗り出し、仰け反って震えるカイトの耳にくちびるを寄せる。

「気持ちいいのだろうなにが駄目だ?」

「ひ……っ」

吹きこまれる声は甘く蕩けて、耳からも犯されるようだ。

がくぽの手はますます強く、カイトの中を掻き回し、雫をこぼすものを扱き上げる。

カイトは畳に崩れ、下半身へと手を伸ばした。がくぽの手に触れるが、止めたいのか、煽りたいのか、わからない。ただ、ぎゅっと握った。

「カイト………駄目なら、放すか」

「ぁ………っ」

やさしそうに吹きこまれた言葉に、カイトはびくりと止まった。

がくぽはカイトの肩に咬みつき、反り返るものから手を離す。差しこんだ指も抜いて、咬んだ肩に舌を這わせた。

「…………ほら。どうする?」

「ぁ…………っは…………っっ」

中途半端に放り出され、カイトは震える。じんじんと疼く、体に熱が溜まって篭もっていく。

我慢出来ない。

「さ、わって…………だめ、じゃ、ないからぁ…………っがくぽ、さわって…………っ」

泣き声で強請られ、がくぽは微笑んだ。

カイトの肩にキスを落とし、再び反り返るものに手を添わせる。もう片手はひくつく窄まりに宛がい、撫でながら押しこんだ。

「ぁ………っ」

襲い掛かってくる感覚に、カイトはかえって安堵して、体から力を抜いた。痺れるし、疼くし、苦しいけれど、途中で放り出されるよりは、ずっとましだ。

「ん………ふぁあ………ぁあ、ん………っ」

だめ、の代わりに、素直に啼くようになったカイトに、がくぽは身を屈める。浮き上がる肩甲骨にくちびるを落として、軽く吸った。

「カイト、気持ちいいか?」

訊かれて、カイトは頷いた。

「きもち、い………っきもちい………よ…………っ…………からだ、アイスみたいに、とけちゃう、よぉ…………っ」

実際、舐められて溶け崩れるアイスの気持ちがわかるような気がした。気がしたと同時に、そんなことに気がついては、これからアイスを食べるたびに、不埒な気分になりそうで怖い。

大好きなアイスを食べながら、がくぽに舐められて溶ける自分の体を思い出す――のでは、あまりに落ち着かない。

食べるたびにいやらしい気持ちになっていたら、もう外では食べられなくなってしまう。

ぐすぐすと洟を啜るカイトに、がくぽは愉しそうに笑った。

カイトはそんながくぽを懸命に振り返り、見つめる。

「もっと………きもち、よく………なりたい………っ」

「ん?」

愉しそうながくぽが、きょとりと首を傾げる。

カイトはぐすりと洟を啜り、手を伸ばした。がくぽが弄る窄まりに触れ、広げるようにする。

「…………がくぽの………入れて…………奥まで…………される、の…………きもち、よかった………」

「………」

「ゆ、指より………深いとこ………おなか、いっぱいになって…………こすられるの…………」

言いながらこの間の感覚を思い出し、カイトの瞳が陶然と潤んだ。ちろりとくちびるを舐め、窺うようにがくぽを見上げる。

「きもちよかった………」

「……」

熱とともに吐き出す言葉に、がくぽは花色の瞳を見張る。

カイトが見つめる前で、見張られた瞳はなにかを堪えるように歪み、眇められ、それから強い欲を宿した。

カイトの全身を舐め回した舌が、湧き上がる欲にくちびるを舐める。

「気持ちよかったのか」

「ん……っ」

訊かれて、カイトはこくんと頷いた。

あのときはいっぱいいっぱいで、「気持ちいい」のかどうか、正直なところ、よくわかっていなかった。

ただ、がくぽが熱を持ち、吐き出すのが、うれしかった――とりもなおさず、それはがくぽが「気持ちいい」ということだからだ。

ひとの「気持ちいい」には思いを馳せても、自分には至らない。

その体が今日は、散々に嬲られて弄られて、「気持ちいい」を教え込まれた。

カイトは懸命にがくぽを見つめる。

「………きもち、よかった……………がくぽの、入って……………おなかのなかに、出されるの………」

もつれる舌で言い募り、カイトは軽く首を傾げた。

「いれて?」

「………」

見つめていたがくぽが、笑う。

指が抜かれ、ひくつく場所にキスが落ちた。

「ぁ……っ」

「入れてやろう。お主から『気持ちいい』と強請ってくれたものゆえな。存分に、愉しませてやる」