「れぇええええええええんんんーーーーーっっ!!!」

廊下から響いてくる大声に、座敷に転がって携帯ゲーム機で遊んでいたレンは、眉をひそめた。

にいる!!

聞き間違いようもなく、相方の声だ。「誰かのリン」ではなく、レンのリン。

となれば呼んでいるのは、もちろん自分。

そしてここは、旅館。

それも、ゆったりのんびり過ごすために訪れるひとが多い、温泉旅館。

いくら旅の恥はかき捨てとはいえ、温泉旅館の中で、しかも宿泊部屋の並ぶ廊下で絶叫するのは、いただけない。

子供とはいえ、リンもレンも十四歳――物事の道理がわからない、では通らない年齢だ。

眉をひそめながら体を起こしたところで、大声に相応しくばたばたばたと廊下を駆けてくる荒っぽい足音が響き、座敷の襖がぱあんと勢いよく開かれた。

「おい、リン」

いくらなんでも、好き勝手し過ぎだ。

座敷に座ったまま諌めようとしたレンに、リンは開けたのと同じくらいの勢いで襖を閉めた。ぎろっと、レンをねめつける。

いつになく鬼気迫る様子に、レンはお説教も続けられずに相方を見つめた。

そのレンに、リンは多少乱れ気味に着られていた浴衣の袷を、両手で持ってぱっと開いた。

「のぉーぱんっっ!!!」

「っっ?!!」

叫んだリンはすぐさま手を下ろして袷を軽く整えると、くるりと踵を返し、ぱあんと襖を開けて再び飛び出して行った。

「んな、ちょ、ぁ、り………っっ」

ぱあんと閉められた襖を見つめ、言葉にもならずにわなわなと震えていたレンは、荒っぽい足音が聞こえなくなる寸前に、跳ねるように立ち上がった。

スリッパをつっかけるのもそこそこに座敷から飛び出すと、廊下の端に消えそうなリンの背中を追って、走り出す。

「待てやこらぁああああああ!!いみふだりぃいいいいいいんんんっ!!つかそのカッコでうろつくんじゃねええええええ!!!」