弟に姫抱っこされたうえで自分の部屋まで連れて行かれたカイトは、そのままベッドへと横たえられた。

うちのおとーとは、ちょっとヘンです→

「ちょ、あの、がくぽ………っ、おにぃちゃん、今、仕事で疲れて………んぅ」

慌てて起き上がろうとしたところに伸し掛かられ、くちびるを塞がれる。ちゅく、と音を立てて吸われて、遠慮するということを知らない舌が、開いた口の中を舐めた。

「んん……ぅ」

「兄様………」

わずかにくちびるが離れた瞬間につぶやくがくぽの声は、熱っぽく掠れている。コートの上からもどかしげにカイトの体を撫で回し、懸命に口の中を漁った。

「ぁ………は、ふぁ、がくぽ………っ」

「兄様………寂しかったです……」

「ぅ………」

ようやくくちびるが離れたところで、もう一度手加減を訴えようとしたカイトだが、それより先に寂しさを告げられて、口を噤んだ。

キスをくり返しながら、がくぽはカイトのマフラーを取り去る。

「いい子に留守番しましたけど、寂しかったです、すごく。兄様がいなくて、すっごくすっごく、寂しかったです………」

「ぁ……ふぁ……」

マフラーを取り去った手は、コートの前も開く。中のシャツをまくり上げ、仄かに染まりつつある肌を直接に撫でた。

「ぁ、がくぽ………」

「寂しかった分、いっぱい甘えさせてください、兄様」

「んぅ……っ」

淀みない指が、すでに固くしこっていた乳首をつまむ。こりこりと弄ばれて、走る感覚に、カイトは腰を浮かせた。

どうして『弟が甘える』といって、体を開かれるのか、カイトにはよくわからない。

カイトが女で、姉妹だったというならまだ、こういうことをしたい気持ちもわからないではないが、れっきとした男だ。

どうして膨らみもない胸を執拗に弄びたいのか、その気持ちがわからない。そして、弟に弄ばれて膨らんでしまう場所を、どうして――

「ぁ、がくぽ………っ」

指が離れたと思ったら、ちゅく、と音を立てて吸いつかれて、カイトはびくびくと震えた。初めはそうでもなかった場所も、がくぽに執拗に攻められるうちに、ひどく敏感な場所になった。

「は、……ぁ、さび、し、かった………の…………?」

それでも切れ切れに訊いたカイトに、がくぽは乳首に吸いついたまま、目線だけ上げた。

「はぃ」

「ゃうっ」

咥えたまましゃべられて、カイトは思わずがくぽの頭を抱く。

がくぽのやることは、納得がいかない。

自分は兄で、がくぽは弟で、兄弟だ。

そう思うが、寂しかったと訴える弟が甘えているなら、すべて受け入れてやろうと思うのもまた、カイトだった。

「ぁ…………ごめん、ね………?」

水音を立てて乳首をしゃぶられながら、カイトはがくぽの髪を梳く。

「さびしく、して………ごめん、ね………」

「………いいです、兄様」

がくぽは顔を上げ、笑った。手を伸ばすと、完全に固くなっているカイトのものを、スラックスの上から撫でる。

「ゃあ………っ」

「………寂しかった分、兄様が甘やかしてくれたら、それで、いいです」

「ん………」

カイトは涙の滲む瞳を閉じ、布団に押しつける。

がくぽが望んでいることは、すでにわかりきっている。わからないとしたら、どうして兄の自分にそんなことをしたいかだ。

「ぁ…」

「甘やかしてくれるでしょう、兄様?」

どろどろに蕩けた甘ったれ声が耳に吹きこまれて、カイトは閉じた瞼にぎゅ、と力を入れた。

伸びたがくぽの手がずっと、熱くなるカイトのものを撫でている。けれどそれはスラックスの上からだ。

直に嬲られる悦びを知っていると、もどかしくて苦しい。

「にいさまぁ…」

カイトの一言を待つがくぽが、甘い声で啼く。

ぶるりと震えてから観念して、カイトは瞳を開き、期待に輝くがくぽを見つめた。

「甘えて………ぃい、よ…………いっぱい、甘やかして…………あげる………」

「兄様!」

あからさまに喜色を含んだ声を上げ、がくぽはカイトのくちびるに音を立ててキスを落とす。その手が素早く動き、カイトの下半身からスラックスと下着を取り去った。

「ぅ………ふぁあ……っ」

「兄様の……こんなあっつくなって………」

「ゃあ、がくぽ……っ」

譫言のようにつぶやきながら、がくぽは曝け出されたカイトの男性器を撫でる。

ご馳走でも前にしているかのようにちろりとくちびるを舐めると、躊躇いもなく身を屈めた。

「ひぁ……っ」

口の中に含まれて、カイトはびくりと身を竦ませる。何度やられても、慣れることがない。慣れるどころか、だんだん悪くなる気がする。

急速に痺れの走る腰も、切なさが疼く腹も。

「ゃ、ぁ………っ、ぁぅあ……っぁ……っ」

音を立ててカイトのものを舐め啜りながら、がくぽの指が後ろへと入っていく。すでにひくつき出している場所を、楽しそうに撫で回した。

「がくぽ………っ」

「まずはがくぽの口に、出してくださいね、兄様。そしたら今度はがくぽが、兄様のお尻に出してあげます」

「ぅ………っ」

強請られる内容に、カイトはほろりと涙をこぼした。

恥ずかしい。

弟の口になんて、出したくない。出したくないけれど、がくぽの口淫は巧みで、カイトは耐えられない。

甘えたいと取り縋る弟を拒むことも思いつかないし、だからといってすべてを受け入れられもしない。

それでも限界が来て、カイトは望まれるまま、がくぽの口の中に精を吐き出した。

「ぅ………ひっく」

「にぃさまの味………」

気持ちよさと惑乱する感情に翻弄されてしゃくり上げるカイトに構わず、がくぽはうっとりと口の中のものを味わう。

粘つく舌で満足げにくちびるを舐めると、がくぽは笑った。

「やっぱり兄様の味、大好きです」

「ぅ………」

「もっともっと、いーっぱい、食べたい………」

「ひ………っ」

夢見心地でつぶやくがくぽに吐き出したばかりのものを撫でられ、カイトは竦み上がった。

そういう弟を好きにさせた結果、痛いと泣くほどまで絞り取られた記憶は生々しい。

「が………がくぽっ」

カイトは慌てて手を伸ばし、がくぽの頭を抱き寄せる。残滓がまとわりつくくちびるにくちびるを重ねて、丁寧に舐め取ってやった。

自分では、まったくおいしいと思わないのだが。

きれいに舐め取ってやってから、カイトは弟へと、蠱惑的に微笑みかける。

「ね、がくぽ………それよりおにぃちゃん、もう、がくぽの……欲しい……よがくぽの、おなかの中にいれて、いっぱい掻き回して欲しいな………」

「兄様………!」

気を逸らすためのおねだりに、がくぽは素直に乗った。瞳を見開き、鮮やかな花色をさらに輝かせる。

こんなときだが、カイトは素直にかわいいと思った。

「兄様……兄様」

「ん………んん………」

うれしげに呼ばれながら降って来たくちびるを受け止め、カイトは足をもぞつかせてがくぽの腰を挟む。強請るように膝で腰を擦ると、がくぽはすぐにくちびるを離した。

「兄様、すぐ上げます。がくぽので、おなかいっぱいにしてあげます」

「…」

得意満面に言われ、カイトはわずかに目線を逸らした。

そういえば、夕食も食べさせてもらっていない。だから、仕事帰りだというのに。

餌儀がエプロンをしておたまを持っていたのだから、きっときちんとした夕食を作っていてくれたはずなのに。

「兄様」

「んゃっ」

濡れた指が奥にぬぷりと入りこみ、掻き回す。逸れていた思考も戻って、カイトは身を竦ませてシーツを掴んだ。

「あっつくって、ねとねとで、それですっごくぱくぱくしてます。欲しいほしいって言ってるみたい。ね、兄様、兄様もがくぽと離れて寂しかったですか?」

うれしそうに訊かれて、カイトはわずかに笑った。手を伸ばすと、がくぽの髪を軽く引っ張る。

「心配…………だった、よ」

裏返りそうになる声を抑えて、カイトはがくぽを見つめる。甘え全開で擦りついてくる弟を。

青い瞳が愛おしげに細まり、掴んだがくぽの髪をくちびるに運ぶと、そっと口づけた。

「泣いてないか…………なにか、困ってないか…………すっごく、心配だった…………」

「兄様……!」

がくぽがうれしそうに笑み崩れる。そのがくぽに笑い返し、カイトは髪から手を離して、下半身へと伸ばした。

「ね、だから………はやく、入れて…………がくぽで、いっぱいになりたい……がくぽのこと、甘やかしたい……」

「ん………っ」

着物の上からもどかしく撫でられて、がくぽは顔を歪めた。ちろりと舌が覗き、堪えきれない欲望に、くちびるを舐める。

「兄様……今、あげますからね…」

「ふぁ……っ」

甘ったれから一転、ずいぶんと男臭い顔になったがくぽに、カイトは胸が震えて仰け反る。

追い込む間際のがくぽは、いつもの甘ったれて緩んだ顔が、欲に引きつって年相応の男らしくなる。

それでも共通するのは、どこまでも美々しく麗々しいという形容で、慣れることもなく、カイトはときめいてしまう。

「ぁ……」

「兄様……」

「ふぁあ……っ」

宛がわれたものがすぐに押しこんできて、切なく疼いていたカイトの腹を満たす。少し痛いくらいに張りつめるものが、熱と硬さとなにかを伝えている。

「兄様………」

「ゃあ……っ、ぁ、は………っ、が、くぽ………いっぱい、こすって…………おにぃちゃんに、いっぱい、あまえて………」

馴染むまでは動くことを控えるがくぽを、カイトは促す。自分から腰を揺らめかせ、がくぽの髪を引いた。

「ね……がくぽ…………おにぃちゃんのこと、いっぱい、いっぱい………」

「はい、兄様」

うれしそうに頷き、がくぽはゆっくりと腰を使い始める。

「兄様のお尻、がくぽのを、すっごく締めつけて………寂しかったって、欲しかったって、言ってます。兄様の愛情を、いっぱいいっぱい感じます」

「ふ、ぁあ、ぁああっ」

だんだん動きが速くなり、カイトはシーツを握りしめて悶えた。攻め立てるがくぽのほうは、ずっとうれしそうに笑っている。

男にしては細い兄の足を肩に抱え上げて、大きく広げたそこを満足げに眺めた。

「兄様に愛されて、がくぽはしあわせです」

満足げにつぶやくと、がくぽは一際強く腰を押しこんだ。

「ひ、ぁあっ、ぁああっ」

奥に吹き出すものの感触に、カイトは仰け反る。体がびくびくと震え、二度目の頂点へと追いやられた。

「………兄様」

「………ぅん、がくぽ……」

怠そうに、けれど甘く応えるカイトに、がくぽは屈みこんだ。軽くキスを落とし、抱えた足を撫でる。

「兄様はお仕事してきたから、おなか空きましたよね。だからがくぽはこれで我慢して、ごはんにします」

「…」

見つめるカイトに、がくぽは笑う。再びキスを落とし、くちびるを舐めた。

「ごはんを食べたらまた、甘えさせてください」

なにを『我慢』したのかわからないおねだりに、しかし、カイトは微笑んだ。弟の髪をやさしく梳く。

「………がくぽが満足するまで、何度でも、甘えさせてあげる」

吐き出された言葉に、がくぽはうれしげに腰を押しこんだ。