反射神経に優れた弟は、餌儀が投げたクッションをしっかりと受け止めた。

甘ったれでしょうがないが、こういうところはきちんとしている。

うちのおとーとは、ちょっと甘えん坊です→

掴んだクッションを軽く放り投げると、がくぽはにっこり笑って兄を見た。

「そうですよね、兄様。心置きなくいっぱい甘えるんだったら、やっぱり部屋に行かないと!」

「ふ、わわ、ぅやっ」

コートは半ば落ち、シャツは胸元までまくり上げられていたカイトは、意味のあることも言えずに、がくぽの腕に抱え上げられる。

ちなみにカイトは、リビングにマスターと餌儀がいることをすっかり忘れていた。それ以上に、弟に夢中だったのだ。

しっかり者で甘やかしたがりのカイトだが、弟に耽溺してしまうと周囲が目に入らなくなるところが、がくぽとまた違う。

がくぽは兄にべったり甘えていても、なにかと周囲に気を配っている。

兄と自分を引き離すものがいないか、自分以上に兄に接触しようとするものがいないか。

主にそんなレーダーで。

「ぁ、がくぽ……っ」

軽々と姫抱っこで運ばれたのが、カイトの部屋だった。

がくぽにぽすんとベッドに下ろされても、カイトは首に回した腕を解かなかった。

「ん、ね………」

「兄様ぁ…」

くちびるを寄せられて、がくぽは笑み崩れる。ベッドに座り、スイッチの入った兄へと顔を寄せた。

「ん………んん………ふゃ」

音を立ててキスを交わし、伸ばした舌を吸い合う。首に回されたカイトの腕は強く、がくぽはしがみつかせたまま、自分より華奢な体をベッドへと押し倒した。

「兄様、ね、兄様…………がくぽ、絶対、一所懸命に練習するって約束します。一所懸命に練習して、すっごく上手になるって。だから、『約束する』ご褒美ください……」

「んく……っ」

シャツをまくり上げられ、肌を直接に撫で回されながら強請られて、カイトは首を傾げた。

熱っぽく潤む瞳で、無邪気な弟を見つめる。

「………じゃあ、……ちゃんとほんとに練習して、じょーずになったときの、ごほーびは……?」

「また兄様をくれたら、いいです」

迷いもなく即答するがくぽに、カイトは瞳を瞬かせる。

がくぽの首に回した腕に力を込めると、素直に近づいたくちびるをちろりと舐めた。

「にい…」

「じゃあ、ね。俺が、してあげる」

「……にーさま」

カイトが吐き出した言葉に、がくぽはきょとんとする。

無垢ですらあるその表情にわずかに躊躇い、けれどカイトはべろりと舌を出した。

「ご褒美………俺が、がくぽの………舐めて、あげる。いっぱい、何度でも、口の中、出していいよおにぃちゃんのこと、おなかいっぱいにして、いいから」

「にぃさま……っ」

カイトは微笑み、表情を輝かせるがくぽの頬にキスを贈った。

「それで、そのあと………後ろからでも、上に乗るのでも、がくぽの好きなやり方で、させてあげる………」

「兄様っ」

「ぁうっ」

がばっと力いっぱいに抱きつかれて、カイトは小さく呻いた。

体が大きい分、がくぽの力は強い。いつもはそんな自分を自覚して、それなりに気をつけて行動しているのだが、今はどうも、興奮で箍が外れているらしい。

「ん、がく、ぽ……!」

痛い、と悲鳴を上げるカイトから、がくぽは素早く身を離した。腰を挟むカイトの足を取ると、自分の股間を擦らせる。

「ふ、ぁあっ」

布地越しにも、それが十分に熱くなって硬くなっていることを感じて、カイトは身を竦ませた。

「兄様………兄様が、そんなにいっぱいご褒美くれるなんて…………がくぽは絶対に頑張ります!」

「はは……」

やる気漲るがくぽの声に、カイトは小さく笑った。

こんなことでいいのだろうかと思う反面、それでがくぽがやる気になるならまあいいかとも思う。

うれしさにはなうたでもこぼしそうな感じで、がくぽはカイトの服を脱がせていく。みるみるうちに裸に剥かれて、カイトはわずかに身をくねらせた。

弟と比べると、ずいぶん貧相な体だ。こうやってきれいに晒されてしまうと、恥ずかしい。

「兄様……兄様、きれいです………」

「もぉ…」

譫言のようにつぶやかれてさらに恥ずかしさが増し、カイトは顔を逸らす。

身を屈めたがくぽは晒された首にキスし、浮き上がる鎖骨に咬みついた。そのまま肩へと辿り、二の腕にまた咬みつく。

「ん、も………ぃたい、がくぽ………」

「にぃさまぁ……」

詰られても咬むことを止めず、がくぽは下へと辿って行く。がくぽの牙が立つたびに、カイトは甘く詰りながら体を波打たせた。

咬まれることが不快でない証に、カイトの性器は反り返って震えている。がくぽは愛しげに瞳を細め、先端に軽くキスを落とした。

「ん、ぅくっ」

「兄様が、こうやって………がくぽの、舐めてくれるんですよね………」

「ぁ、ふぁあ、はぅっ」

「小さなお口いっぱいに、がくぽの頬張って…………」

愉しそうにさえずりながら、がくぽはカイトのものを舐める。滴るほどに唾液をまぶし、濡れた指をさらに奥へとやった。

何度も覚えさせられたせいで、すでにひくつく場所を撫でる。

「が、くぽ………」

「こっちのお口も、小さいですよね、兄様…………それなのに、一所懸命にがくぽの食べてくれるんですよね……」

「ぁあっ」

辿ったくちびるが、窄まりに口づけ、舌を伸ばす。襞を伸ばすように舐められ、軽く舌を押しこまれ、カイトは身を竦めた。

「が、くぽ…………っ、そんな、とこ、舐めちゃ、だめ………っ!」

切れ切れに訴えると、がくぽはさらに口を押しつけた。わざとらしいまでに水音を立てて窄まりを吸い上げ、笑う。

「どうしてだめなんですか、兄様こんなにもおいしいのに………がくぽ、兄様のお尻舐めるの、大好きです」

「がくぽ………っっ」

口をつけたまま無邪気な声音で告げられて、カイトはぐすりと洟を啜る。誰に舐められてもうれしくない場所ではあるが、それが弟だとなると、なおさらだ。

そんなところ舐めないでも、する方法ならいくらでもあるのに、がくぽはすぐに舐めたがる。

「がくぽ………っ、ね、もぉ………いい子だから、言うこときいて………がくぽの、おにぃちゃんのおなかに入れて………おにぃちゃん、おなかきゅうきゅうして、苦しい………っ」

「でも兄様………ご褒美なんだから、がくぽの好きにさせてくれないと、いやです」

拗ねたように駄々を捏ねるがくぽは頑固に顔を上げず、カイトは今にも涙のこぼれそうな瞳を向けた。

「いーこに言うこと聞いたら、ご褒美あげるから………!」

「……ごほうび…?」

がくぽはようやく顔を上げ、訝しげに兄を見下ろす。

今がそもそも、ご褒美のはずなのに。

カイトはぐすりと洟を啜り、がくぽへと手を伸ばした。

「…………今度のお休み、いちんちじゅう、がくぽのこと、甘やかしてあげる………ずっとずっと、がくぽの入れたまんまでもいいから………」

「………っ」

兄の提案に、がくぽは瞳を見張ると、ごくりと唾液を飲みこんだ。カイトの口と、今まで自分が丹念に解していたために、物欲しげにひくつく場所とを見比べる。

ややして微笑むと、着物をくつろげて、天を目指す自分のものを取り出した。

ほっとしたように見てから、カイトはすぐに仰け反った。

がくぽ曰くの小さなお口に、大きなものが押し入ってくる。何度もくり返した行為でも、最初はどうしても違和感と、わずかな恐怖がこみ上げる。

仰け反るカイトに身を倒して近づき、がくぽは引きつる頬を撫でた。

「約束ですよ、兄様…………いちんち、付き合ってもらいますからね………兄様が言うんだから、がくぽは遠慮なく甘えます……絶対に離れませんからね」

「ん……っ」

潤む瞳で見つめ返しながら、カイトは少しだけ考えた。

この弟が、甘えるのを遠慮したことがあっただろうか。

しかしそうは言わず、カイトは手を伸ばしてがくぽの肩を撫でた。軽く爪を立て、責めるように、煽るように、掻く。

「兄様…っ」

「いーよ。口でもお尻でも、好きなだけさせてあげる…………いちんちじゅう、がくぽだけのおにぃちゃんでいてあげるから……」

ささやきながら、カイトはがくぽの背を掻いた。

「ね………動いて………おにぃちゃんのおなか、掻き混ぜて………」

「兄様………っ」

「ぁあ…っ」

堪えきれずに腰を使いだしたがくぽに、カイトは仰け反った。きつく締まる場所を力づくで開かれ、擦り上げられる。

足を抱え上げられて、ふくらはぎに咬みつかれた。

「ゃっ、がくっ」

「兄様、咬むとすっごく締まるんです……っ」

「そ、な……っ」

うれしそうに告げたがくぽは腰を使いながら、カイトの体のそこかしこに咬みつく。

「ぁ、ぁあっ、ぃううっ」

「兄様、そんなに、締めたら………もう………イきます………っ」

「ぁ、がく、ぽ……っ」

名を呼んだところで、腹の中に熱がぶちまけられるのを感じた。侵される熱の感覚に、カイトは引きつって耐える。

そのカイトのものに、がくぽは手を絡めた。

「がく……っぁああっ」

張りつめていたものはそれで限界を迎えて、精を吹き出した。

がくぽは濡れた手を満足げに見つめ、舌を伸ばして舐めた。

「………ぁあ、次のお休みが楽しみです、兄様………」