「兄様はどうなんですか?がくぽのお嫁さんになってもいいくらい、がくぽのことが好きですか?」
「え……っと、あ………」
再三再四言うが、兄弟だ。
自分は兄。男。
お嫁さんはない。
うちのおとーとは、ちょっとヘンです→りたーん→裏
ない、と思いながら、カイトの頬はほわわわ、と赤く染まっていった。瞳が熱っぽく潤み、弟を見つめる視線が甘くなる。
「がくぽ…………ほんとに?」
訊かれて、がくぽはいっそ心外そうに頷いた。
「どうして疑うんですか?うそなんか言いません。がくぽは兄様のこと、お嫁さんにしたいくらい好きです。お嫁さんにして、毎日まいにち、こうやって……」
「ぁ……っ」
言いながら、がくぽの手がカイトの下半身を撫でる。コートを開き、シャツの中へと手を差しこんだ。
「兄様のこと、とろとろに気持ちよくして上げたいです………」
「ふぁ……っ」
カイトはさらにほわわ、と赤くなり、がくぽを熱っぽく見つめた。その手が伸びて、がくぽの首に回る。
「…………おにぃちゃんは…………がくぽだったら、お嫁さんになっても、いい………ううん、がくぽだったら、お嫁さんになりたい………」
「兄様………!」
ようやく、がくぽの顔が喜色に輝いた。
きらきらと喜びをスパークさせる顔が近づき、カイトのくちびるを塞ぐ。ぬるりと舌が潜りこみ、カイトは陶然となってがくぽに縋りついた。
その体を、がくぽの手がさらに這い回り――
「っと」
飛んできたクッションを、素早く受け止めた。
カイトの理性はすでにない。弟一色で、周りがまったく目に入っていないのだ。
そこにマスターすらいるのだが、カイトにはがくぽしか見えない。
ここまで思われるのも、なかなかだ。
がくぽは笑って、蕩けた兄を抱き上げた。
「じゃあ兄様、お部屋でゆっくり、新婚初夜にしましょうね。いっぱい、かわいがってあげますからね、お嫁さん」
「んん、がくぽ……っ」
いたずらな呼びかけに、カイトはわずかに責めるように呼び、けれど逆らうことなく、がくぽに抱えられた。
そのまま、姫抱っこで運ばれたのが、カイトの部屋のベッドだ。
恭しく横たえられて、カイトはうっとりと弟を見上げる。
「『初夜』ですからね、兄様。すっごくやさしく、とろとろにしてあげます」
「がくぽ………」
微笑むがくぽに、カイトは恥ずかしげに身をくねらせ、瞳を伏せる。
初夜、というが、体を重ねるのは決して初めてではないし、それどころか、慣れきった行為ですらあるのに。
「兄様…」
「ん……」
降って来たキスは、言うとおりにひどく甘ったるくやさしいものだった。何度か軽く触れたあとに、ぬるりと舌で舐められる。
口の中をやわらかに舐め辿られ、差し出した舌を甘噛みされる。
「ぁ…………ふぁあ………っ」
激しく感覚を追い上げるようなキスに慣れている身としては、もどかしい。もどかしいけれど、ひどく熱が募っていく。
「愛してます、兄様……」
「ゃ、ぁあ………っ」
ささやかれた声と言葉にひどく感じて、カイトは瞳をぎゅっと閉じて震えた。
初めての行為ではない体は火が灯って苦しいくらいなのに、同じくらい、初めての行為をするような、恐れと期待がある。
まくり上げられたシャツの下から覗いた胸に、がくぽはくちびるを落とした。音を立てて、たくさんのキスを落とす。
けれど肝心の、じんじんと疼く場所には触れない。そこはもう、期待だけで鋭く尖っているというのに、周辺にキスを落とすだけ。
「ぁ………がくぽ………っ」
カイトは焦れて、胸に埋まる弟の髪を軽く引っ張る。強請るように撫でて、結局、堪えきれない手が、自分で乳首をつまんだ。
「ん………さわって……っ」
じんじん痺れる場所をこねくり回しながら、強請る。
がくぽは笑って、カイトの手に手を重ねた。
「『初めて』なのに、兄様ったら…………自分でこんなふうにおねだりしちゃうなんて、いやらしいお嫁さんですね」
「ゃあ………っ」
「まだちっとも触ってないのに、こんなに尖らせてるし………ほんと、いやらしくてかわいいお嫁さんですね、兄様………」
「ふぁ…っ」
言葉とともに、がくぽは胸に沈みこむ。
カイトの手を退かすと、尖って痺れる場所を咥えた。ぬるりと舐めてから、潰すようにこねくり回し、吸い上げる。
「ゃ、んん………っぁあ、あ……っ」
待ち望んだ刺激に、カイトは仰け反って震える。
がくぽの手が伸び、もう片方の乳首をつまんだ。痛いくらいにつままれて、伸ばされ、押し潰される。
爪を立てるようにされて、口に咥えたほうには牙を立てられ、カイトは大きく引きつった。
「ゃ…………っあ…………っっ」
「…………兄様」
びくびくと痙攣をくり返す体の意味を、がくぽが読み違えることはない。
うれしそうに笑うと、顔を上げ、カイトの下半身へと手を伸ばした。
スラックスの上から軽く撫でてから、前を開く。下着をずらすと、ぐっしょりと濡れた感触に、再び笑った。
「イっちゃったんですね、兄様。はしたない体ですね…………乳首だけで、イっちゃうなんて。がくぽはまだ、ここ、触ってないでしょう?」
「ぅ……っふぇ、ぐす………っ」
からかわれて、カイトは洟を啜る。
今日の体はおかしい。
敏感に尖り過ぎて、がくぽの愛撫のひとつひとつが痛いくらいに気持ちいい。
気持ちよすぎて、我慢が出来ない。
瞳を潤ませる兄に、がくぽは微笑んだ。
濡れそぼる性器に音を立てて口づけ、拭うように、煽るように舐める。
「ゃ、あ………だめ、がくぽ………っ」
イったばかりで、性器はまだ、痺れるような感覚を残している。刺激されれば、すぐに復活してしまう。
太ももを引きつらせて、なんとか快感を堪えようとするカイトを、がくぽは構うことなく攻めた。
「ゃ、あ、また………っイっちゃ…………ぁああっ」
「ん…っ」
大して時間を掛けたわけでもなく、カイトはすぐさま二度目の精を放った。
がくぽは口の中に受け止め、こくこくと音を立てて飲みこむ。
しつこくしつこく吸い上げて、残滓まで絞り取った。
「ぁ、もぉ…………ど、して………きょぉ………っ」
「兄様…」
もともと堪えの利く性質ではないが、それにしても、今日はあまりに我慢が利かない。
ぼろりと涙をこぼすカイトの頬を、がくぽはやさしく撫でた。浮かぶ笑みは、いつもと違ってやたら大人っぽく、男臭い。
泣きながらも陶然と見惚れるカイトの目尻に、がくぽはくちびるを落とした。涙を啜り、軽く頬をつまむ。
「………兄様、うれしいんですよ。がくぽのお嫁さんになれるって、体が悦んでるんです。うれし過ぎて、敏感になっちゃってるんです」
「…………」
ささやかれて、カイトは瞳を瞬かせる。
首を傾げ、間近で微笑む弟の、あまりにきれいな顔を見つめた。
「………あ……」
「うれしくないですか、兄様?がくぽのお嫁さんです。兄様が、がくぽの、たったひとりの、お嫁さんなんです」
口を開いたところで畳み掛けるように訊かれ、カイトはくちびるを空転させた。
その瞳が恥ずかしさに歪み、手ががくぽの首に回る。
「………うれしい………」
兄弟なのに、兄なのに、とまだどこかで思うが、それを凌駕するうれしさがある。
こみ上げる思いのままに、カイトは膝を立てて、がくぽの腰を挟んだ。下半身を擦りつけるようにして、がくぽにしがみつく。
「…………ね、がくぽ…………がくぽの、おにぃちゃんのおなかに、入れて………?おにぃちゃんのこと、がくぽのお嫁さんにして…………」
「はい、兄様」
おねだりにうれしそうに応え、がくぽは一度、体を離した。
カイトの下半身からスラックスと下着を抜き去ると、自分の前を寛げる。
それでもすぐには押しこまない。馴らすまでもなく、いつもの行為に期待し、ひくつく場所に指をやって、軽く解した。
「ゃ、がくぽ………っ焦らしたら、ぃや………っ」
「やさしくするって言いましたよ」
やわらかに告げるがくぽに、カイトは苦しげに首を振る。
「んん、ゃ、欲しいの………っ、がくぽので、おなかいっぱいになりたい………っ今すぐ、がくぽのお嫁さんになりたい………っ」
「もう、兄様……」
二度も精を吐き出したのに、すでに反り返って雫をこぼすものを見つめ、がくぽは舌なめずりする。
自分の屹立するものを掴むと、言葉以上に物欲しげな場所に宛がった。
「ぁ、んん……っ」
「………兄様……」
ゆっくりと、押しこむ。狭い場所は、ひくつきながらがくぽのものを飲みこんだ。
貪欲にうねって味わおうとする粘膜に、がくぽは軽く歯を食いしばる。
兄の反応から予測はしていたが、いつも以上だ。気を抜くと、持って行かれる。
「んん……っぁ……っ」
「………ほんと、敏感になってますね、兄様……」
押しこまれただけで軽く絶頂を迎えたカイトに、がくぽは笑う。
激しく収斂する場所を、ゆっくりと掻き回した。
一度目なのに、そこはもう、何度かしたあとのようにぬかるんで、がくぽにまとわりつく。
「ふ……っにぃさま………っ」
堪えきれず、がくぽのくちびるから快楽の呻きがこぼれた。
良過ぎる。
時間を掛けて、さらに兄を蕩かしてやりたかったが、持ちそうにない。
「ん、ぁ、がくぽ………っがくぽ、はげしく……もっと、はげしく………っ」
「はい、兄様……っ」
強請られるままに、がくぽは激しく腰を打ちこみ、カイトの中を掻き回した。
「ぁ、ああ、ぅ、ぁああ、がくぽ………っ」
カイトは陶然となり、嬌声に混ぜて弟の名前をくり返す。
甘く震える声を吐き出すくちびるに、がくぽは咬みつくようにキスを落とした。
「んん……っぁああ、がくぽぉ……っ」
「兄様……」
いつも以上に激しく収斂する場所を擦り上げ、抉り、がくぽは目いっぱいに兄の腹を掻き回す。
そのがくぽに、いつもなら怖いと泣くカイトも、うれしげに応える。
「兄様……」
「ぁ、もぉ……イく………イっちゃう、がくぽ………っ」
「いいですよ………がくぽも、イきます………」
「ぁあう……っ」
一際激しく抉られ、カイトは仰け反って大きく震えた。
性器が吐き出す体液は少なくなっているが、体が覚える快楽はいや増しに増す。
「ぁ……っは………っぁあ………っ」
余韻に震えるカイトに、腹の中に熱をぶちまけたがくぽが伸し掛かる。
ぎゅ、と兄を抱きしめると、赤い耳朶にくちびるを寄せた。
「これで兄様は、がくぽのお嫁さんですからね………」