「じゃ、次、にーに!」
「ん?」
がくぽの口から抜き取ったスプーンを、カイトはぐいっと突き出す。
うちのおとーとは、とっても凝り性です→裏
首を傾げた兄に、殊更に瞳を眇めてスプーンの柄を揺らした。
「サイコーのおやつは、サイコーの場所で、サイコーの食べ方するの!だから、はいっ!」
「………」
つまり、食わせろと。
最高の最高の最高を重ねた結果が、兄の膝の上で、兄にあーんして食べさせてもらう。
弟の落ち着きどころがわからない。
わからないままにスプーンを受け取ったがくぽは、向かいに座るマスターをちらりと見た。
「うん。カイトは凝り性だな」
「とーぜん!せっかくにーにが買って来てくれたものなんだから、ケイイってもんを払わなきゃ!」
「………」
この二人に会話をさせておいて、まともな方向に転がると思った自分が愚かだったのだ。
そうだ――なんたる時間の無駄。
無闇な自棄を起こして結論し、がくぽは諦めてプリンにスプーンを差しこんだ。掬い上げて、カイトの口に運ぶ。
「ん、んんーっ………ほわ、おぃひぃ………っ!!」
「………そうか」
しあわせさに笑うというより、あまりのおいしさにびっくり目になったカイトに、がくぽは素直に微笑んだ。
もうひと匙掬って、カイトの口に運ぶ。
「んんっ……ふぁ、ぅぁあ………んんっ………ぁあぅ……っ」
「……………………」
ひと口、口に入れるたびに上げるカイトの声が、――嬌声だ。
もはやおいしさに、言葉にもならないというのはわかる。わかるが――
「ん………っんんん、にーにぃ………っ」
「……………………」
甘く舌足らずに先を強請られて、がくぽはちらりとマスターを窺った。
うっかり瞳が合ってしまったマスターは、スプーンを咥えて力強く頷く。
「おいしいぞ、がくぽ………!確かに最高のシチュエーションで食べると、味がさらに格別だ………!」
「マスター………」
最高のシチュエーションというのはもしかして、いや、もしかしなくても、がくぽの膝の上で悶え、嬌声を上げながらプリンを食べさせてもらう、カイトのことも含めてか。
常々意見が合わせづらい、うら若き女性であるマスターだが、カイトがかわいいという点でだけは、がくぽと相違がない。
相違ないが、――わかっている。
彼女がうら若き女性であるというところに、夢を見てはいけない。
「にーにぃ………もっとぉ………」
「…………………」
無心むしんむしんむしんむしん。
がくぽは心の中で懸命に唱えながら、プリンにスプーンを差し入れ、カイトの口に運んだ。
救いがあるとすれば、それほど大きなカップではないということだ。専門店らしく、大きさは上品そのもの。
多少の我慢で、カップはすぐに空になる。
「………」
「………」
最後の一口を差し入れたところで、マスターがわずかに身を乗りだして来た。いやなところに視線を当てられた気配があり、がくぽは殊更に顔を逸らす。
「ふむ」
「ん………ぁ、にーに…………」
頷くマスターにさらにいやな予感を昂らせたところで、すっかりとろんと蕩けた瞳のカイトが、尻をもぞつかせた。
「なんか、…………ごりごりしたのが………っんふっ」
スプーンとカップをテーブルに放り出し、がくぽはカイトの口を塞いだ。
「………カイト」
「ん、らって……んーろに、かいろのおひりに………」
「カイト!」
押さえこまれて不自由な口で、それでもカイトは言う。
悲鳴を上げてから、がくぽはおそるおそると対面に座るマスターを窺った。
真面目な顔をしたマスターは、こっくりと頷く。
「カイトはかわいいからな………特に今のカイトは、それだけでラーメン三杯イケるレベルで、かわいかった」
「………」
どういう比較なのか、わからない。
固まって冷や汗を垂らすがくぽに、マスターは軽く眉をひそめた。
「とはいえ、弟におやつを食べさせながら勃起してしまうとはな…………がくぽ」
「マスター!」
「さすがにちょっと、我慢が足らないな!」
「ぅううっ」
ご指摘ごもっとも。
反論の言葉もないがくぽの上で、カイトは身をよじらせた。相変わらず口を塞がれたまま、殊更に尻を擦り付けるように動く。
「まひゅらー、あにょれ……にーにの、もっろおーきぅ……」
「カイト!頼むから、少しおとなしく!」
「そうだぞ、カイト。大人しく、にーににおやつの『お礼』しなさい。マスターはおんもに出るから」
「マスター!」
マスターがうら若き女性であるというところに、もう少し夢を見たい。発想が親父過ぎる。
あと望めるなら、マスターとカイトの会話のたびに、悲鳴を上げなくていい生活も。
言いながら立ち上がったマスターは、二人分のスプーンと空になったプリンカップを持って、本当にリビングから出て行く――せめて、トイレに行けとか、自分たちの部屋に行けとか、最低限それだけでも。
項垂れるがくぽの上で、カイトは身をよじらせた。
「にーに………かいろ、おれーひゅる」
「いや、礼はいいから、カイト」
「んや、したい」
「ん……っ」
がくぽの手を振り切って自由を得たカイトは、そのままちゅっと音を立てて口づける。伸ばされた舌がくちびるを舐めて、がくぽはつい、口を開いてしまった。
ここで応えては、マスターの思うつぼ、いや、うら若い女性の想像の通りということで、いたたまれないこと甚だしい。
そう思ったのだが、反射というものは恐ろしい――そして弟を一口でも味わってしまうと、がくぽに理性などというものは、あってなきが如し。
差しこまれた舌は、プリンの余韻でいつも以上に甘い。
しかも最後に食べたカラメルの香ばしい風味も残って、甘いものが苦手と得意とに関わらず、やたらと食欲がそそられた。
「ん………っふ………っ」
「カイト……」
「ん、にーに………ぁむ」
ぴちゃぴちゃと音を立てて舐めあいながら、がくぽは無防備なカイトの体をまさぐり、コートを開いてシャツをたくし上げ、肌を晒していく。
ほんのりと尖り出していた胸の突起をつまむと、カイトはびくりと震えた。
「ん………っ」
「………プリンのようだな」
「ぁ……ぅ、あ………にー………」
くにくにとつまんで転がしていると、そこはぷくんと突き出してくる。
色の愛らしさがあるから、正統的なプリンとは言えない。しかし春先になると出てくる、いちごプリンになら似ているかもしれない。
丸みを帯びた形、先端に色を刷いて、下に続く白くやわらかな生地。舌に乗せると、とろりと蕩けて――
「にーにでもこのプリンだったら、いくらでも食べられるな………」
「ぁ、ぅ………っはぅう、にーに………っんっ」
つぶやきながら、がくぽは尖ったカイトの胸の先端に吸いついた。ちゅく、と吸ってから、味わうように舌で転がす。
「ぁふ………ん、ゃあぅ………っ、ぁん、にーに………っころころ……そんな、ぁうっ、たべても、カイト、あまくないし………やわくないし………っおっぱいだって、でないんだからぁ………っ」
舐められて吸われ、時に軽くかじりつかれて、カイトはがくぽの膝の上で暴れる。喘ぎながらがくぽの頭を抱いて、長い髪を切なく梳いた。
「ん、ね、………にーにぃ………っ」
「そうは言うがな、カイト…」
強請るカイトの、触れて欲しい場所はわかっている。
そこはスラックスの下で、痛いほどに張りつめているのが、もう見える。
しかしがくぽはファスナーを開いて外に出してやっただけで、また胸への愛撫へと戻った。
「せっかく、にーにでも食べられるプリンが見つかったんだぞ?ちゃんと食べさせなさい」
「んんぅ………っカイト、カイトのおっぱいは、プリンじゃないもんん………っあまくないし、ぺっちゃんこだし、………っひぁあっ」
一際きつく吸われ、わずかに痛みを感じるほどに牙を立てられて、カイトはびくりと震える。
スラックスから抜き出されたその場所が、同じように脈打って反り返り、雫を垂らした。
がくぽは胸に吸いついたまま横目にそのさまを確認し、片手をカイトのもう片方の胸へと這わせる。
確かに、真っ平だ――当然だ、男なのだから。
それでも愛撫してやれば、応えて突起がつぷりと尖り、雄が漲っていく。
「カイト、そうやって駄々ばかり捏ねるなら……」
「ん、ゃ、ぁぅうっ」
「ここだけで、イってみるか」
「ふぁ?!」
会話の繋がりがすとんと見えなくなったがくぽに、カイトは瞳を見開く。慌てて兄を見ると、愉しそうに笑っていた。
そのまま、がくぽは咥えたカイトの胸をぬろりと舐める。痙攣するにも似たがくぽの舌の動きに、カイトの腰が併せて痙攣した。
「ゃ、ぁ……っあ、にー……っひ、ゃ……っにーにぃ………っ」
切なく呼びながら、カイトは触れてもらえない自分へと手を伸ばす。しかしその手が届く前に、がくぽの手によって押しとどめられた。
「にーに?!」
「おっぱいだけで、イくと言っただろう?カイトのこの手は、ないないだ」
「や、そんな………ぁんんっ」
抵抗しようとした瞬間に、吸いついたがくぽの舌の動きでカイトは言葉を途切れさせる。
後ろ手に腕を拘束され、がくぽに胸をしつこく吸われて揉まれ、かじりつかれて、カイトは震えながら極みへと持って行かれた。
「ぁ………っふ…………っふ………っ」
「…………ほらな。イケたろう?」
「………にーに…」
しらっと言うがくぽに、カイトは恨みがましくつぶやく。恨み言はあっさり聞き流して、がくぽはカイトを膝から下ろした。
床にころんと転がすと、腹に散った精液を舐め辿って、そこにつく。
しんなりと項垂れるものに口をつけると、残るものを啜り上げた。
こくんと飲みこんでから、弟を求めてずっと張りつめて痛かったものを取り出す。
「ん、にーに……」
「カイト、お礼だったな?自分で足を広げて、にーにに『頂戴』って、おねだりしてご覧?」
「ん………」
カイトは素直に膝を立てると、両手を自分の下半身へと伸ばした。
ひくつく場所を突き出すように腰を浮かせながら、手でも開いてがくぽへと見せる。
「………にーに、ちょぉだい………おやつたべてるカイトで、おっきくなっちゃったにーにの……ちゃんとカイトが、ぱっくんしてあげる………」
「………」
がくぽはわずかに天を仰いだ。
反論もなく事実その通りだが、指摘されたくないことというものもある。
とはいえこれ以上焦らしても自分が辛いだけなので、がくぽは諦めてカイトの腹の中へと漲るものを押しこんだ。
カイトの中は熱くうねってがくぽを迎え入れ、やわやわと揉みしだいた。
「ふ……っ」
気持ち良さに瞳を細め、受け入れられている感触をしばらく楽しんでから、がくぽは馴染んで来た場所に腰を打ちつけだした。
「ぁ、ん………っ、ふ、ぁああ、ぁ……っ、ん、にーに………っにーにぃ………っ」
「ああ……」
呼ばれて、がくぽは笑みの形にくちびるを歪めた。
さっき、さんざんにしゃぶってよがらせた場所が、いつも以上に赤く染まってつぷんと立ち上がり、存在を主張している。
やはりプリンのように、愛らしい。
腰を打ちつけながらしばらく眺めていたが、堪えきれずにがくぽは屈みこみ、胸の尖りにくちびるを吸いつけた。
「ゃぁあ、ふたつ、いっしょ……っめぇ………っ」
「んぅ……っ」
締め上げるカイトの力が強くなり、がくぽはわずかに眉をひそめる。腰を掴む手に力を入れると、激しく突き上げた。
「ぁあ、っん、っんんんっ!ひ、ゃあ、ぁ………っにー………にぃに……っぃ………っ」
「く………っ」
仰け反ったカイトのものから、再び白濁した体液が噴き出す。がくぽもわずかに遅れてカイトの腹の中に吐き出し、しばし心地よさに耽って震えた。
「…………カイト……」
「ん…」
余韻でびくんびくんと震えるカイトの肌を撫で、こめかみに口づけを落とし、がくぽは腰を引いた。
立て続けにしたい気持ちはあれ、ここはリビングで、遠慮して――おそらく、遠慮して――出て行ったマスターの手前もある。
おやつの時間でもあるし、そうそう何度もカイトを味わうわけにもいかない。
そう思ったのだが。
「………カイト」
「め、………だもん」
「………」
足に力を入れて体を挟んで止められ、がくぽは瞳を見張る。
と、リビングの扉がすらりと開いた。まるで、計ったかのような。
「あのなー、カイト。私の分もがくぽに『お礼』、よろしくなー」
「っっま、すたー?!!」
がばっとがくぽが顔を上げたときには、もう扉は締まっている。
カイトはさらにがくぽの体に足を絡ませ、伸ばした手で肌を引っ掻いた。
「………だって、にーに」
「いや、カイト………」
「カイト、マスターの分もちゃんと、にーにに『お礼』する………」
「いや、カイト!」
悲鳴を上げるがくぽを、カイトの襞がきゅうっと締め上げる。
達したばかりでまだ怠いだろう体を、カイトはそれでも蠢かせた。
擦り上げられて、がくぽの理性と切り離された素直な場所が、再び硬さを持つ。
「ね、にーに………こんど、こっちのおっぱいプリン……たべて…………?」
「………」
さっきさんざんにプリンだと言って舐めしゃぶったのとは、反対の乳首を示して強請られる。
とろりと蕩けたカイトの瞳は、潤んで熱っぽく、甘い。
がくぽはいろいろ諦めると、舌を伸ばし、強請られる場所にむしゃぶりついた。