でぃおにそしぁ・あめしすてぃ-03-
がくぽへの奉仕の最中にも萎えることなく、むしろ、興奮を増したかに思えるカイトのものを掴み、巧みに扱いてやる。
「ぁ、ん……っ、は、ぁ………っあ、がくぽ、さ………っ」
強情を張っていた声が、すぐに甘く蕩け崩れた。色事に器用ながくぽの手は、的確にカイトを喘がせる。
いや、性急過ぎて、苦しい。
心地よいというよりも辛い快楽に身悶えて逃れようとするカイトを、がくぽは押さえこんだ。
「ぁあ、ゃ……っ、は、ぁああ………っ」
逃げることも出来ずに快楽の中に封じられて、カイトは首を振る。
やはり明かりが欲しいと思いながら、暗闇に目を凝らして痴態を見つめ、がくぽはカイトを追い上げた。
「ぁ、ぁああっ」
ほどなく、カイトはがくぽの手に精を吐き出した。
心なしか、粘度も高く、量も多い気がする――なんとはいっても、忙しさにかまけて会うことが出来ないまま、一月だ。
以前戯れに訊いたときに、自分ひとりではほとんど慰めないと言った。
――がくぽさまの、お手でないと……
目元を染めて、俯き付け足された言葉の真偽は知らない。
知らなくても、煽られるには十分な媚態だった。
そうまで言うならと言葉を掴み取り、膝に抱え上げて、昼間の軒先で着物を開いた。
結果は推して知るべしだ。
事が終わるとカイトは、こんなところで恥ずかしいと言って泣きじゃくり、がくぽは本宅に戻る時刻を遅らせる羽目に陥った。
自業自得だから、そのことでカイトを責めはしなかったが――
「……」
「……っぁ、ふっ」
濡れた手を奥へと這わせ、窄まりを探った。カイトは一際大きく震え、逃げ場を探して瞳を彷徨わせる。
「が、くぽ、さま………っ、そこ、は………っ」
「大人にしろ」
怯える声を吐き出すカイトに、がくぽは殊更に声を低めて命じる。
「ふ、ぅ………っ」
息とともに言葉を呑みこんだカイトの瞳が、暗闇にも涙に濡れているように見えた。
止めることも出来ないが、先へ進むことも躊躇われる。
がくぽは一瞬だけくちびるを噛み、カイトの体を転がした。横向きにすると、背後に回る。
「ぁ……っ」
「力を抜け」
「……っくぽ、さま……っ」
がくぽは武将として日々鍛え、カイトは『姫』として、たおやかに淑やかに育てられた。
後ろ抱きにしてしまうと、華奢なカイトの体はがくぽの体にすっぽりと収まってしまう。力弱い体は、さらに身動きが取れなくなってしまうのだ。
身じろいでも押さえこむのも簡単で、そしてなにより、瞳を合わせることがない。
その表情をつぶさに眺めていたくても、瞳が涙に潤むさまを見ると凶暴な気持ちが湧き上がり、さらに酷い扱いに及びそうな自分がいる。
酷く扱いたくない――箱庭から出せずに自由を与えられずとも、せめてやさしさと甘さだけ、与えてやりたい。
少なくとも、歪つさはあっても、数年前まで、それは成功していたはずだった。
危うく、切れそうな綱を渡っているのと、変わらない平穏であっても――
「………」
結局、綱が切れたからこその今の状態なのだろう。
歪つは歪つで正となることはなく、愛しみたい相手を苛む羽目に陥っている。
「ぁ、あ………っは、ぁあ………っ」
抱え直した体に再び指を這わせ、奥の窄まりを探る。腕の中で跳ねる体が、掠れて潤む声を上げた。
カイトの舌の記憶も生々しいがくぽの雄が、その声に力を思い出して脈打つ。
抱えて密着した体から、興奮と熱によって体臭が香り立つのもなおのこと、治めきれない欲情を煽った。
欲のままに息を荒げれば、その雄の強さにカイトはさらに怯え竦むだろう。
そう思えば、煽りたてられる呼吸を殊更に抑えこみ、脈打って再びカイトを求めようとする自身も懸命に堪えるが、年々月々――日々、困難な作業となりつつある。
愛おしさも求める心も募るばかりで、枯れることも果てることもないのだ。
「カイト………」
「ぁあっ、ひっ、ぁあぅっ」
抑えこみきれず、がくぽはカイトの耳朶に咬みついた。ほんのりと熱を持つそこに牙を立て、なめらかな肌に舌を這わせる。
舌先に感じるのが甘みで、そのあまりに仄かなことに、さらに味わいたいという思いが貪欲に募って止まらない。
「ぁ、っくぽ、さま……っぁ、あっ……っ」
カイトは耳が弱く、わずかに撫でるだけでも体を跳ねさせる。
牙を立てればなおのこと、舌で嬲れば咽喉を仰け反らせ、息も絶え絶えになって快楽に染まった。
一度は果てたカイトのものがふるりと勃ち上がり、先を濡らす。
確認して、がくぽは表面を揉み解していたカイトの窄まりの中に指を押し入れた。
「ぁ……っあ、ぁあ……っあ…………っ」
カイトの声がさらにかん高くなって、裏返り、きゅう、と指が締めつけられる。
がくぽは躊躇うことなく指を押しこみ、一月前に散々に蕩かしてやったのに、すでに狭くきつく締まる場所を解きほぐした。
昨日今日始めたことでもない。
感触を思い出しさえすれば、カイトの体は快楽に蕩けることを知っている。
「ぁあ……っ、ゃ、がくぽ…さま………っぁあっ」
「カイト…」
「ひぁっ」
募る凶悪な欲望を抑えながら、がくぽは低くひくく、カイトの名を呼ぶ。
その瞬間に触れた場所に、カイトはびくりと背を仰け反らせた。仰け反ったことで垣間見えた瞳が、涙を散らしている。
先までとは違う――それは快楽によって誘われた、涙だ。
「………カイト」
「ゃ、ぁ、…………っぁ、そこ、そこ………っだめ、ぃやあ………っゃあ………っ」
押さえこんでいても、カイトの体は大きく痙攣をくり返し、がくぽの指から逃れようと身悶える。
刺激してやれば間違いなく蕩けるとわかっている場所をしつこく揉んで、がくぽはますます香り立つカイトの体臭を吸いこんだ。
肩に乗せられるほど小さな頃から、カイトの体は甘く香った。
抱きしめて、その香りを嗅ぐのが好きだった。血と争いに凍えて凝り固まった心が、緩やかに蕩け解れる感触は、喩えようもなく心地よかった。
相応に体が発育し、手足が伸びて、がくぽを追い越せないまでも、もはや肩には乗せられない大きさとなっても――カイトの体は、甘く香った。
意味は変わって、劣情を煽られても。
それは、カイトの罪咎ではないと思う。
望みもしない環境によく耐えているし、訪れるがくぽにも、幼い頃と変わらない、翳りのない笑みを浮かべてくれる。
触れたいと――
思う、自分が愚かなのだ。
「ぁ、あ………っ、ぁあっ、やぁっ………っあ、くぽさま……がくぽ、さまぁ………っ」
カイトは悲鳴のような声を上げて、がくぽの名で情けを乞う。
煽られながらも心を閉ざし、がくぽは蕩けた場所にさらにもう一本、指を押しこんだ。広げるように蠢かせると、カイトは手を伸ばし、がくぽの腕を掴む。
爪が立っても、がくぽは構うことなく指を差しこんだまま、やわらかに蕩ける粘膜の中で、わずかに硬くしこる場所を刺激し続けた。
「ぁ、も………もぉ、も………っ」
丸く身を折ったカイトが、堪えきれない衝動に小さな痙攣をくり返す。がくぽは抱く腕にさらに力を込め、カイトの首にくちびるを辿らせた。
逃れようと震えたところで、きつく牙を立てる。
「ゃあぁ………っぁあっ」
びく、と一際大きく震え、カイトは二度目の頂点を極めた。
「ぁ………っは…………ぁ…………が、くぽ……さま…………」
「………」
涙を湛えた瞳で、カイトは背後のがくぽを振り返った。
熱く蕩けきった窄まりは収斂をくり返し、がくぽの指を貪欲に味わっている。
一月ぶりでも、一度でここまで蕩けるようになった。
三年の間、泣いても拒んでも慣らし続けた成果だろう。おそらくもう、血の漲った雄を押しこんだところで、カイトが痛みに意識を飛ばすことはあるまい。
「…………は………ぅ………」
立て続けに苛まれたせいで、カイトの息は荒い。小さなくちびるが半開きとなって、懸命に呼吸を整えようとしている。
先にはそこに自分のものを咥えさせ、噴き出す体液を飲みこませた。
まだ冷えていた体と違って、熱を持っていた口内――やわらかで、うねった粘膜。
絡みついて絞り上げ、がくぽを絶頂へと追い上げた、カイトの――
「………」
「ふ………っぅ………ふぇ………っ」
息を継いでいたくちびるが震え、嗚咽をこぼした。
カイトは再び前を向くと、さらにがくぽから顔を背けて布団に埋まり、静かに静かに泣く。
声を殺しても涙を吸い取らせても、小さな体が小刻みに震えている。
「ふ…………ぅく…………っ」
カイトは男だ。
本来なら、がくぽと同じく武将となり、ひいてはお屋形と呼ばれる身にもなっていたはずだ。
稚児として扱われることも、ましてや女の形をして、女として扱われることも、なかったはずの――
「カイト」
布団に顔を埋めて泣くカイトの耳朶に、がくぽはそっとくちびるを寄せた。
「そなたは『姫』だ。――いいか。そなたは『姫』………女だ。女だ、カイト………」