でぃおにそしぁ・あめしすてぃ-02-
「ぁ………っあ、ふ」
顔を沈め、首筋に舌を這わせた。カイトは震えて、がくぽに手を伸ばす。寝間着を掴んだが、その手が制止に動くことはない。
がくぽはそのまま舐め辿って、平らな胸へと舌を運ぶ。
否応なく馴らされた行為の期待にか、わずかに勃ち上がりつつある尖りにくちびるを吸いつかせると、カイトは一際激しく体を跳ねさせた。
「ぁ、あ……っは、ゃあ……っ」
甘い声で啼きながら膝を立ち上げ、間に割りこむがくぽの体をきつく挟む。
「ぁ、も………っそこ、は………っぁあっ」
「………」
少し下品なほどに音を立てて吸うと、カイトはがくぽの頭を抱いて掻き乱した。無意識に擦りつけられる下半身が、熱を持ち出している。
声の甘さと震える体に煽られながら、がくぽはもう片方の胸に手を這わせた。つぷりと勃ち上がっていた場所をつまみ、潰すようにこねくり回す。
「ゃ、ぃた………っん、ぁ、あ………っめ、だめ………っ。ぁう、ぃた………っんんっ」
束の間痛みに震えたカイトだが、すぐにその感覚が快楽へと繋がり、切ない声を上げて身悶えた。
頭を抱かれて掻き乱され、時に宥めるように梳かれながら、がくぽはカイトの胸を愛撫し続ける。
「ぁあ、も………もぉ、がくぽ、さま………っ」
「………」
無意識に擦りつけていた腰を、意識的に擦りつけてくるようになったところで、がくぽはようやく胸から顔を上げた。
体を起こすと、胸への愛撫だけで蕩け崩れているカイトを眺め下ろす。
どう堪えても息が荒くなり、がくぽは眉をひそめると一度、膳へと手を伸ばした。徳利を掴んで盃に注ぐと、一息で空ける。
酔いを増し、興奮を高めるはずのそれだが、咽喉を通る冷たさに、がくぽはかえって呼吸を落ち着けた。
「がくぽさま……」
横たわったままのカイトに呼ばれ、がくぽは濡れたくちびるを舐める。
曝け出されたカイトの男性器は、しぐさも言いようも幼くとも、もうこの体が大人になっていることを主張している。
そう、出会った当初は、稚児にすることすら躊躇われるような年だった。
けれど、こうして成長し、美しさも損なわれることがなく――
「……………急いて、斯様なところで及ぶこともあるまい」
「ぁ……っ」
カイトにというより、どうしても気が逸りがちになる自分へと言い聞かせるように、つぶやく。
酩酊も感じさせることなく立ち上がると、がくぽは続きの間への襖を開けた。続きの間には、心得ているめのとが、きちんと布団を敷いている。
「……がく、ぁ…っ」
追って起き上がったカイトが、開かれた寝間着を掻き合わせる。
こちらは酒を飲んでもいないのにふらつく体で立ち上がろうとしたところで、がくぽが戻った。
重さを感じさせない所作でカイトを抱き上げると、布団へと運ぶ。丁寧なしぐさで布団に下ろすと、自分もまた向かいに座った。
整えられていた自分の寝間着をわずかに開くと、袷を掻き合わせたままで瞳を揺らがせるカイトに顎をしゃくる。
「………舐めろ」
低く命じると、暗闇ですら、カイトが羞恥に頬を染めただろうことがわかった。歪む顔を目を凝らして見つめながら、明かりが欲しいと思う。
最中のカイトの顔なら、嫌悪であろうと憎悪であろうと、すべてをつぶさに眺めていたかった。
きっとひどく胸が痛んで――それですら、止められない。
そんな自分に、嘲笑いが浮かぶだろう。
「………」
羞恥に歪んでも、カイトが抵抗を口にすることはない。
掻き合わせていた寝間着から手を離すと、素直にがくぽの足元に身を屈めた。わずかに開かれただけの寝間着をさらに肌蹴て、興奮の兆しを見せ始めているものを取り出す。
「ん………っ」
「………っ」
小さな鼻声とともに舌先が触れ、すぐに口の中へと含まれる。
触れた肌はまだ、熱を持ち切らずに冷たかった。けれど、体の中は――
「………っ」
「ん………んん………ふ、ちゅ………んちゅ………ぷふ」
きつくくちびるを噛んで湧き上がった情動を抑えたがくぽを知ることはなく、カイトは懸命に舌を使い、手で扱き上げる。
共寝のたびに『男』への対応を教えて、もう三年だ。カイトの口淫は巧みというには及ばないが、それなりに様にはなった。
なにより、健気で、一途な姿勢だ。
そう尽くされて嫌な気持ちのする男もいるわけがないから、どの男に当たらせようとも、きっと。
「………っ」
きり、と奥歯が軋んで、がくぽは下半身に埋まるカイトの頭を掴んだ。
「ん………っ」
顔を上げさせると、カイトはちろりと舌を覗かせ、咥えていたものとの間に引いた唾液の糸を舐め取りながら、がくぽを見た。
灯もなく、月明かりも障子に遮られて朧だ。
それでも、瞳が輝いているように見えた。
「………がくぽ、さま……?」
頭を掴み上げられたまま見つめられて、カイトは戸惑いながら呼ぶ。
がくぽはカイトへと顔を寄せ、感情を窺わせない瞳で、あどけない瞳を見つめた。
「………口の中に出されるのと、顔に吹きかけられるの、どちらが良い。選べ」
「……っ」
問われて、カイトは瞳を見開く。
無慈悲な問いだと思いつつ、がくぽは感情の揺らめきを表すこともなく、カイトを見つめていた。
「………く……ち、の………なか、に………」
ややしてカイトは、つっかえつっかえ吐き出した。
「………カイト」
「っんっ」
頭を掴む手にわずかに力が込められて、カイトは瞬間的に瞳を閉じる。
瞳を開くと、上目遣いになって、がくぽを見つめた。
「カイト、の、口の中に、がくぽさま、の、子種、……くださいませ………」
「………」
微妙につっかえ気味ではあったが、先よりは余程はっきりと吐き出す。
なにを言わせているのかと自分で自分に腹を立てつつ、そうとはいってもあからさまに煽られもしながら、がくぽはカイトの頭から手を離した。
「すべてきちんと飲めよ」
「…………はい」
言うと、カイトは素直に頷いた。再びがくぽのものを手に取ると、口を付ける。
姫として育てたことが正解だったとしか思えないほどに、小さく上品で、愛らしい口だ。心身から武将であるがくぽのものは、育ち切ると収め難い。
「ん………んんふ………ふく………ぅ………っ」
苦しい息を漏らしながら、それでもカイトは懸命にがくぽを飲みこみ、扱いた。
「………っ出す、ぞ」
「んん………っ」
ややして呻きながら告げたがくぽに、カイトはびくりと震える。次の瞬間には堪えようもない情動がカイトの口の中に迸り、汚した。
「ん………っふ、んん………っく、んく……っんく……っ」
間歇的に吹き出したものを、咽喉を鳴らして懸命に飲みこんだカイトだが、すべてを飲みきることは出来ない。
ようやく吹き出すものが止まって顔を上げたカイトは、口の端に垂れたものを指で掬い、舐めた。
そうやって口の周りをきれいにすると、もう一度がくぽの下半身に顔を埋め、濡れるものの先端をちゅう、と吸う。
残滓まできれいに啜り上げて飲みこんで、カイトはようやくきちんと体を起こした。
「……ありがとうございます」
「………」
瞳を伏せてつぶやくカイトから、がくぽは束の間瞳を逸らした。
そんなことは教えていない――おそらく、めのとにでも教えられたのだろう。男の精を貰ったなら、礼を言えと。
普通の『姫』ではない。カイトを『囲う』ことは道楽にしかならず、つまるところは玩具だ。
玩具には玩具の礼儀があるとでも、あのめのとなら、言う気がした。
強いている行為で礼など言われたくはないが、言うなと言うことも出来ない。めのとはカイトを案じているだけだし、カイトとて、自分の立場を弁えようとしているだけだ。
そして、弁えろと常々言い聞かせているのが、なにより誰より、がくぽだ。
屈辱でしかない扱いも懸命に忍び続けるカイトに、これ以上無体を言うことも憚られる。
がくぽはただ、枕元に用意されている水差しを取った。共に用意されていた茶碗に水を注ぐと、瞳を伏せたままのカイトへ差し出す。
「………漱げ」
短く命じると、カイトはぴくりと揺れた。そろそろと口元に手をやり、濡れるそこを撫でる。
ややすると身を固くして、がくぽから殊更に顔を逸らした。
「………嫌です」
強情な声音で、吐き出す。
滅多なことでは、がくぽに逆らうことを言わないカイトだ。
瞳を見張るがくぽに、カイトはやはり顔を背けたままだった。
「カイト」
「お困りになることなど、ないでしょう………口吸いをするわけでもないのですから。味にも慣れました。漱がずとも、吐いたりなどいたしませんから」
「………」
恨みがましく聞こえる言葉に、がくぽは眉をひそめた。
もちろん、恨みがましいだろう。男へ奉仕することを強要されるなど、本物の姫であっても、屈辱的だ。
ましてやカイトは本来、男なのだから――
「っぁっ」
顔を背けていたカイトへ手を伸ばし、がくぽは力任せに組み敷いた。あっさりと布団に転がされた体は、束の間反射の抵抗を示す。
それも力で押さえこんで、がくぽは怯える瞳を向けるカイトの下半身を探った。