「ん………もぉ……っ」
下半身から離れないがくぽの頭を掴み、カイトは震える。
大江戸夢噺-08-
すでに二度は精を吐いた。それでも、がくぽはしつこくそこを責める。
立て続けに精を吐いたそこは、休む間もなく責められて、すでに痛いようだ。
「がくぽ、さま………っ」
哀願するカイトの声は掠れて力なく、ささやきに似ている。
唾液の糸を引いて口を離し、がくぽは身を起こした。
濡れる口元を軽く拭い、力なく震えるカイトを眺める。
ひくひくと引きつる太ももの際に咲く花弁を撫で、その奥へと指を滑らせた。
垂れた唾液と精液で濡れそぼる秘所を押す。連日しつこく馴らし続けたために、すでにやわらかく解けているそこに指を呑みこませた。
「ひぅ………っ」
先までとは違う刺激に、カイトは足を突っ張らせて震える。痛みはないが、異物感はある。
「がく、ぽ………さまっ」
「痛みはないだろう」
「ぁ……っ」
しらりと言いながら、がくぽは中を探る指を増やす。
「………そろそろ、いいか」
「ふぁっ」
ぐり、と一際強く粘膜を押されて、カイトが仰け反る。
指を抜き、がくぽは着物をくつろげた。
「ぁ………」
屹立したものが見えて、カイトは震える。がくぽが考えていることは明らかだ。
震えたカイトの腰を撫で、がくぽはちろりとくちびるを舐めた。
「カイト」
「だ、め…………っがくぽ、さま………それ、は………」
「……カイト」
「ぉねが………っふ………がく、ぽ…さま………ぉねが………っ」
苦い顔をしたがくぽへ、カイトは震える手を伸ばす。ぐす、と洟を啜った。
「ぉねが……っ」
がくぽは伸ばされた手を見つめ、その先に続く体へと辿る。
しっとり濡れる体は、あちこちに艶やかな花弁が咲いている。咲き散らしたのはがくぽだ。
「そなたはすでに、俺の虜だ。望むことは出来ても、拒むことなど出来ぬ」
苦い声で、しかしきっぱりと宣告するがくぽに、カイトの爪先がぴくりと引きつる。
哀願を弾かれたのに、胸に去来するのは、潰されそうなほどの歓びだ。
「…くぽ、さま………」
「これから生涯を虜として過ごすのだ。今日、拒んだところで意味はない。受け入れてしまえ」
「……っふ」
声が甘くやさしく、この居丈高な男が哀願しているようにすら聞こえるから、そうでなくても蕩けた頭がさらに蕩けて、物を考えられなくなる。
屈んで来たがくぽの体に、伸ばした手が縋りつくように回った。
こぼれる涙を吸い取り、がくぽは舌で辿った首に歯を立てる。
「馴らしてはいても、初めてゆえな。やさしうしてやる。そなたがいいように、ゆっくりと馴染ませてやろう」
「………ん………っ」
「俺ほどやさしい男はおらぬぞ。そなたは幸運だ」
続いてささやかれた言葉に、カイトは少しだけ笑った。
その、やさしい、と言うがくぽが、さっきからずっとカイトを苛んでいる。
その責めは甘いが、ひどく苦しい。苦し過ぎて、涙が止まらないのに。
笑ったカイトに、がくぽは瞳を細めた。
「そなたは、そうやって笑っているのがいい」
「…」
「笑え。生涯、俺の傍らで」
「…」
カイトの指に力がこもって、がくぽの背中に爪が食いこむ。
わずかに顔をしかめたものの緩めさせることはなく、がくぽはカイトの下半身を探った。
奥が解けているのを確認すると、屹立した自分のものを掴む。
「がくぽ………さま………」
「緊張するなとは言わぬ。しても良いが、痛いのは己だ」
「……がくぽさま」
無茶苦茶な言いように、カイトはわずかに呆れた。
やさしくしてやると言っておいて、舌の根も乾かぬうちにこの言いよう。
呆れたために一瞬気が緩んだ隙をついて、がくぽは腰を進めた。
指とはまったく違う感覚にびくりと引きつるカイトの体を、やわらかに撫でる。
「………信じろ。そなたにだけは、やさしうしてやる。他の誰を苛んでも、そなただけは」
「………ぁく………っ」
吹きこむ言葉とともに舌を伸ばし、がくぽはカイトの耳を舐め、歯を立てた。カイトはがくぽの背中に爪を立てて、首を振る。
「信じろ。そなただけは、決して………」
吹きこまれる言葉は、睦言にしか聞こえない。
惑乱する頭に、カイトは涙をこぼした。
首を振り、がくぽにしがみつく。
中に入って来るものは、指とは比べものにならない質量だ。
それでも、驚くほどの痛みはない。
がくぽが、それこそしつこくしつこく馴らし続けた、その証だ。
「カイト…」
「…っくぽ、さま………っ」
腹を満たされる感触に、カイトは涙に霞む視界を懸命に凝らした。
がくぽの表情はよく見えない。けれど、どこか悲痛にも見えた。
くちびるが空転し、カイトは震えた。
「…………すき…………」
小さく、こぼす。
「だいすき……………がくぽさま…………っひぁっ」
「…」
言葉とともに腹の中の質量がさらに増して、カイトは仰け反った。
腹の中でさらに膨れ上がるものが、ゆっくりと抜き差しされる。
最初に言ったとおり、緩やかな責めだ。
それがどういうことかカイトにはよくわからなかったが、ひたすらにがくぽにしがみついて震える。
「……くぽさま………がく、ぽさま………っ」
足の間に挟んだ体を締めつけて、カイトは首を振る。
涙に霞む視界で懸命にがくぽを見上げると、なにかを堪えているような顔だった。
ぐす、と洟を啜り、カイトはがくぽの体をさらにきつく足で挟む。
堪えている顔など、がくぽらしくもないと思う。
堪えることなく、放埓に愉しんでいるのが、いい。
カイトは瞬間的にくちびるを噛み、それから強張る手を懸命に動かして、がくぽの首へと回した。
引き寄せて、間近で見つめる。
「がくぽさま」
「ああ」
「すきにして」
「…」
ささやきに、がくぽの動きが止まる。
凝然と見つめられて、カイトは瞳を瞬かせて涙を払った。
「あなたの虜なんだから…………俺のこと、好きにして」
「カイト…」
苦しげなつぶやきが落ちて、がくぽの頭が束の間、カイトの肩に懐いた。
「なにを言うか、この未通娘が………っ」
怒られているような気もしたが、カイトは懐いたがくぽの髪を引っ張った。
「がくぽさま…」
「やさしうすると言ったろう」
「…」
吐き出して、がくぽは頭を上げた。その顔が、にんまりと性が悪く笑う。
「だが、そなたが望むなら別だ。俺の好きにする」
「…」
こくん、と唾液を呑みこんだ咽喉の動きを見つめ、がくぽは笑みをやさしくした。
「だから、初めはやさしう責められろ。初めてだというのに、もどかしいと啼いて、悶えるほどに、やさしう…………次は、痛いと、怖いと泣くほどに、激しう責めてやる」
「…っ」
「夜を徹して責めてやる。一度や二度、受け止めただけでは済まぬぞ?俺は堪え性があるが、そなたが赦すというなら、無理に堪える気もない」
答えられないカイトに、がくぽは再び腰を揺らす。
言ったとおりにやさしく穏やかに責められて、――
長い夜に、カイトの記憶は途中で途切れた。
「生涯、俺の傍におれ」
覚えている最後の言葉は、そんな嘆願だった。