「もぉっ、がくぽさままたおいたをなさって!!」

「ふん」

足を踏み鳴らして叫んだカイトに、がくぽは反省の色もなく鼻を鳴らした。

かりがりの衣嵐

「この程度で喚くな。かわいいものだろうが」

「もぉお…………!!」

ふるふると震えたカイトはがくぽの前にへちゃんと座ると、きっと睨みつけた。

「そんなことばっかり言ってらっしゃると、お仕置きしますからねっ!」

きりりと睨みつけての脅しに、がくぽはやはり、鼻を鳴らして笑う。

「仕置きそなたがはっ、面白いな。なにをする気だ」

「っっ」

余裕そのもので笑うがくぽに、カイトはくちびるを噛む。

しばし考えると、その顔にヤケクソじみた色を浮かべ、胸を張った。

「反省なさるまで、俺には指一本、触らせません!!」

「…っ」

刹那、瞳を見張ったがくぽだが、ややしてひどく性悪な笑みを浮かべた。

「面白い。『そなたが』俺に触れられぬで、どれくらい堪えられるものか………」

「ふぇ」

意地悪く言う途中で、カイトが情けない声を上げた。大きな瞳がみるみる潤み、すぐにも大粒の涙となって、ぼろぼろとこぼれる。

「ふぇ………っ、うぇええん…………っ、が、がくぽさまに、さわってもらえな……っ、が、がくぽさまの、おそばに、いけなぃ……………っっ!!」

子供のように泣きじゃくるカイトに、がくぽはきれいな顔を盛大に引きつらせた。

「そ、なたな、自分で、言っておいて」

「ふぁあああああーっんっっ!!」

喘ぎあえぎ言うのを、カイトの泣き声が遮る。

がくぽはがりがりと頭を掻き、それから号泣するカイトへと腕を伸ばして、その体を強引に抱き寄せた。

「さわっちゃ…………ふぇえんっ」

「ええいっ、四の五の言うなこれからは控える大人にしていてやるゆえ、仕置きはなしにしろ!!」

「ぅ、ふえ、ぐすっ………がくぽ、さまぁ………っ」

泣きながら縋りついてくるカイトを抱きしめ、がくぽは苦り切った顔をその頭に埋めた。

「泣いているそなたを慰めることも出来ぬでは、気が狂うわ」