CHIMÉNE-05

取りだしたがくぽのものにぷちゃりと音を立てて口づけると、カイトはそのまま咽喉奥まで飲みこんだ。えづきかけながらも歯を立てないよう、注意とともに舌を絡めて引き上げる。

すでに顎が痛いほどのそれを小さな口から抜きだすと、唾液をたっぷりと乗せた舌で、先端をでろりと舐めた。

「んっ、ぁふ、ぁ………っんへっ」

「堪えの利かぬ子だ、カイト。清らかで愛らしい面をしながら、一皮むけばこうも淫らではしたない」

ぺちゃぴちゃと、派手に水音を立てながら奉仕するカイトへ、がくぽは笑いながらつぶやく。

咥えられているのはがくぽで、頭を撫でてやってはいても、カイトに対して愛撫らしい愛撫をしてやっているわけではない。

しかし咥えるカイトのくちびるからは唾液とともに嬌声がこぼれ、直接の感覚とともに耳からも刺激される。

なにより、見下ろすカイトの様子だ。昼間でもあり、特に採光のいい執務室でもある。

明るい中に隠れることもなく、夢中になってがくぽの雄を咥え、悦びに染まって歪む顔のすべてが、つぶさに観察できる。乱れた服から、先に弄り回されしゃぶられて、常より赤さを増した粒もちらちら覗き――

「………堪らんな」

「ん、んふ……んちゅっ。……んん、………んちゅっ………」

がくぽの感想も知らずに奉仕に尽くしていたカイトだが、わずかに動きが鈍った。ことりと首を傾げると、漲るものの先端を確かめるようにちろちろ舐め、音を立てて吸う。

ぴたりと動きを止めてから、そうでなくとも蕩け崩れていた表情が、さらにとろりと綻んだ。

「ぁは……がくぽ、さま………でて、きた……んちゅっ。………んへ、おしる、………んんっ、んふっ………」

「………やれやれ」

うれしそうにくふくふと笑いながら、カイトは滲み出した先走りをちゅぷちゅぷと吸う。がくぽは嘆息し、またたびを嗅がせたねこのようになっているカイトの頭をやわらかに撫でた。

嗅がせたのはまたたびではなく、雄の欲だ。好き嫌いは分かれる。特に、本来的なカイトほどの年頃ともなれば――

生まれて一年も経てば、ねこは仔を産めるようになる。

どう見えたところで、人間ではなく木の実から生まれた『なにか』であるカイトは、そう考えたならすでに立派な大人と言い張ることも可能なのかもしれない。

「………詭弁で保身だ。卑怯にして、自分本位な。――だから小姑どもが、毎回怒鳴りこんで来る」

嘯き、がくぽはカイトの頭を撫でていた手を耳の後ろからうなじへと伝わせた。

「ぁ、んっ、んんっ」

ぶるりと震えたカイトは、束の間がくぽから口を離し、過ぎるほどに体を痙攣させる。服の下で震える背を眺め、がくぽはくちびるを舐めた。

今すぐ脱がせて華奢な体のすべてをあらわにし、乱暴なほどに突き上げて喘ぎ啼かせたい。白い肌に口づけて所有の痣を刻んでいき、気持ち良過ぎておかしくなると、壊れてしまうと悶え狂わせたい。

浮かぶのは凶暴にして、救いようのない雄の欲だ。これまでにも満ちていた香りが、濃厚さを増してカイトに絡み、抵抗を知らない体を縛り上げる。

「ぁ、ふぁん………っ」

「ふ………」

蕩けた声をこぼし、カイトは正気が飛んでぶれた瞳でがくぽを見た。堪え切れない欲に、かえって笑みが酷薄となったがくぽとしばし見合い、へにゃんと無邪気に笑い崩れる。

「カイト」

「んへ。がくぽさま………」

瞳を見張ったがくぽに、カイトは笑み崩れたまま、手を己の下半身に向かわせた。

「ぁ、んっ………ん………っ」

「………」

未だ寛いでいなかった下履きの中に入りこんだ自分の手にすら、カイトは甘く鼻声をこぼす。見張った瞳を細め、がくぽは夫を前にして自慰に耽るカイトの様子を眺めた。

「んっ」

それも長くはなく、カイトは抜き出した手で覚束なく、下履きを解き始めた。そうそう難しい造りの服ではないし、いかにカイトもそこまで不器用でもない。

しかし興奮や諸々相俟って手はうまく動かず、永遠にも思えるようなもどかしい間を挟んで、カイトはどうにか自分ひとりで下履きを脱ぎ去った。

隠すもののなくなったところから、興奮を兆した男性器が覗く。

本来的に興奮した男のものなど見ても愉しいことはないが、カイトだ。年のせいだけでもなく愛らしい色かたちのそれに、がくぽのくちびるは堪えようもなく緩んだ。

淫蕩な笑みとともに確かめて、ふらふらと腰を浮かせるカイトと目を合わせる。

「仕様のない子だ、カイト。また、俺の膝に乗りたいのか膝に抱かれて、甘やかされたいと?」

「ふぁ………」

声はわざとらしく軽く、言葉には隠し切れずにいたぶる色が含まれ、中腰となったカイトはふるりと背筋を震わせた。

覗き込むがくぽを見返すと、手を伸ばして首にかける。

「がくぽさまぁ」

「ふ……っ」

甘えて強請る声に、がくぽは堪え切れずに笑った。これ以上いたぶる言葉を考えることもなく、強請られるままにカイトの腰に手を回してやる。

「おいで、愛らしい子――そなたが強請るものを強請るだけ、たっぷりと呉れてやろう」

「ふゃ、がくぽさまぁ………」

望みどおりに引き上げられ、カイトはがくぽの膝に向かい合わせで座る。間近に来たくちびるを、がくぽは宥めるようについばんだ。

「いい子だ。もう少し、腰を浮かせて………腕に力を入れていい。そなたに多少締められたところで、俺の首はどうこうならん」

「んん………」

力が抜けてうまく動けないカイトは、言われるままにがくぽの首にしがみついて、懸命に腰を浮かせる。

言いはしたものの微妙に顔をしかめたがくぽだが、苦しいと、緩めろと言葉を翻すこともなく、カイトの腰をさらに自分へと招いた。

ちょうどよく来た秘所へ、がくぽは痛いほどに兆してカイトを求める雄をそっと宛がう。

「ふゃ……っ」

「カイト、わかるだろう俺だ。そなたの愛しい夫だ。そなたの健気で愛らしい肉に埋まりたいと、淫らに貪られたいと、望むものだ」

「ふぁん、がくぽさまの………っ」

宛がった瞬間にびくりと竦んだカイトだが、耳元に吹き込まれるやわらかな声と言われることに、体から力が抜けた。しがみついていた首から顔を浮かせると、辛抱強く待って笑うがくぽのくちびるにちゅっと吸いつく。

「ください……ぇへ。ちょぉだい、……です」

「この期に及んで、………仕様のない」

「ふぁあん……っっ」

たどたどしい言葉遣いにさらに煽られ、がくぽはいっそ嘆息する心持ちになった。

どうのこうのと言いはしても、未だ発展途上の体だ。出来る限りやさしく愛してやりたいと思うのに、理性を超えて雄の本能を突き上げられては、堪えるのも一苦労だ。

「結婚は男の忍耐力を鍛えると言うが、まさにこういうことだな。結婚してからのほうが、俺は確実に我慢強くなっている」

「ぁんん……っんん、がくぽさま、のぉ……っふとぃ………っ、ぁぅう………っ」

――ここにいるのはつまり、がくぽとカイトの二人きりだった。そのうちの、忍耐を鍛えてくれるという新妻のほうは、きつく狭い秘所へと夫の雄を捻じ込まれ中で、他ごとに回す余裕がない。

あったところで、夫の明後日にも過ぎる発言を訂正できるような性質でもないのだが。

家宰がいればそれとなく、意外に世間知らずなところのある領主の思い違いを正してくれただろうが――彼は彼で、未だに避難中だった。

罷り間違うことがないよう、たまに様子窺いはしていた家宰だが、破られた扉から遮るものもなく漏れ出す声だ。

災厄たる五魔女の帰還は、成ったかもしれない。

が、だからといってうかうか戻った瞬間に、さらなる災厄を招く可能性がこれ以上なく示唆されていた。

執務中だったはずだとか、そういったことはさて置く。置いたところですぐにはどうこうならないと、諦めの悪い家宰がきっぱり避難できるのも、がくぽが常日頃から真面目に執務をこなしていればこそだ。

なにより、他領にも響くほどの有能さと優秀さを誇るのが、家宰の主だ。多少の遅れ程度、すぐに取り返せる。

そういった意味においてがくぽは、間違いなく『良き領主』だった。時として唖然とするようなことを言いのけ、やらかそうとも。

「ん、ん………はぃ、った………がくぽさま、の………っ」

「ああ。うまく呑みこんだ………いい子だな、カイト」

「んへ………っ」

頭を撫でてやさしく褒められ、カイトは快楽に歪みながらも得意げに笑った。気遣いながら微笑むがくぽのくちびるに、うれしそうに吸いつく。

「んっ」

「カイト………」

「んっ、んーっ……っ」

ちゅっと、軽く触れただけで離れようとしたカイトだが、寸前でがくぽが後頭部を掴んで縫い止めた。濡れるくちびるを舐め、こぼれるものを啜って、やわらかな舌を絡めて吸い上げ、咬みつく。

がくぽの牙が舌に咬みつくたび、絡まる舌が粘膜を探って擦るたびに、過ぎる嵩の雄を受け入れたカイトの薄い腹が、びくびくと波打つ。奥の奥まで受け入れたと思った雄が、蠢き締め上げて緩む襞の動きに合わせてさらに押しこまれ、最奥を穿った。

「ぁ、あ………っ、ふか……っぁ、あ………っ、ぉなか、がくぽさまの………っぃっぱいぃ………っ」

「ふ………」

カイトは陶然とした表情で、舌足らずに言葉をこぼす。濃厚な口づけによって痺れる舌だが、言葉の覚束なさはそれだけにも因らない。

身を起こして、わずかにがくぽとの間に距離を取ったカイトは、凶器にも等しい雄が捻じ込まれている腹を愛おしげに見た。ともすると、薄い肉に中のものの形が浮かぶ。

カイトの瞳はますます熱を持って焦点がぶれ、くちびるからは嬌声と区別のつかない吐息がこぼれた。

「ん、ね、がくぽ、さまぁ………」

「ああ、動いてやる。もう良さそうだからな。………まあそなたは、待ってやる必要もなく、蕩けるものだが」

「ふぁん……っ」

ちゅっちゅとくちびるをついばみながらせがまれ、がくぽは笑ってカイトの腰を掴む。単に掴まれただけでも尖った肌は快楽として捉え、カイトはびくりと体を跳ねさせた。のみならず、腹に呑みこむがくぽのこともきつく締め上げる。

そうでなくともきつく狭い場所で締め上げられても、がくぽのものが折れることはない。力強い硬さを持って圧を跳ね返し、襞を割り広げて、カイトにそのものの形をはっきりと教える。

「ぁ、もぉ………きもち、ぃ………がくぽさま、の………どくどく、いって………かたくて、………っぁあ……」

うわ言のようにつぶやきながら、カイトは自分の腹を撫でた。撫でた己の手にすら煽られて嬌声をこぼし、掴まれた腰をわずかに揺らめかせながらがくぽを見る。

快楽と欲に潤んで蕩けているが、どこか窺うような、遠慮にも似た光を宿した上目遣いだ。

「ね、ぁの、がくぽさ、ま………がくぽさま、も………きもち、ぃ……です、かちゃんと、きもち、ぃ……?」

「ふ………」

訊かれて、がくぽは笑いをこぼした。勝手に揺れているカイトの腰を掴み直すと、軽く抜いて素早く押しこみ、突き上げる。

「ひゃぁんっ!」

「いいぞ」

びくりと痙攣したカイトが、一際高い声を上げた。同時に、がくぽの動きを阻もうとするかのように、襞がきつく締まる。

絞り上げられるような感覚に、がくぽはくちびるを歪めた。瞬間的に堪えてから、くちびるは淫蕩な笑みに綻ぶ。

「やわらかく奥まで呑みこんだかと思えば、きつく締め上げて、貪るように吸いついてくる。そなたの口淫は未だ技巧が拙く、しゃぶりつくその熱心さで補っているようなものだが………ここは違うな。男をどう受け入れ煽れば良いか、十全に知り尽くしている。物覚えの良さは、上の口より下の口のほうが勝るな?」

「ふぁ、あ、ぁんっ………っ、ぁあんんっ」

微妙に過ぎる褒め方をしながら、がくぽは掴んだ腰を揺さぶり、カイトに中のものの形を教えた。教えられたカイトは喘ぎ啼きながら、合わせるように襞を蠢かせ、締め上げては緩んでと、貪欲に味わう。

押さえこまれて動きのままならない腰が懸命にくねって、余裕を刷いているように見えるがくぽを健気に煽った。

「ん、ぁあ………っぁ、もぉ………っかたくて、あつぃの………っおしり、とける……とけちゃぅ、おしり………っ」

「もうすでに、溶けているだろうとろとろだぞ。こうまでやわらかく蕩けて男を咥えこむなど、まったくそなたは困った子だ。どうせ次は、早く腹の中で吐き出して、どろどろの精をたっぷり飲ませてくれとでも強請るのだろう?」

「ふぁ………っ」

からかうような、詰るような口調で言われ、カイトはふっと瞳を開いた。束の間きょとんと宙を見てから、がくぽに戻る。

「どうした?」

「ぇへ………っ」

詰っていたのを一転、やわらかに訊いたがくぽに、カイトは無邪気に笑み崩れた。

快楽に芯を失くし、どうしても揺らぐ体を起こして、がくぽとの間にわずかな距離を作る。肉付きの薄い腹は、時折不安なほど歪ツな形に歪んだ。

しかし腹ではなく、胸を撫でてカイトは笑った。見つめるがくぽへ照れながらも誘うように、自分で乳首をつまみ、示す。

先に舐めしゃぶってやって、すでにつぷりと膨らんでいる粒だ。赤く染まり、汗に濡れて淫らに輝いている。

そういえばと、事の発端を思い出し、がくぽは動きを止めた。

そもそもは執務中で、そこに招かざる小姑という名の来客だ。難癖をつけられていただけの話が、魔女一族らしい魔物的な変遷を辿った結果、なぜか男のカイトの胸が――

思い出すことを待っていたかのように、魔女一族から貰い受けたかわいくも人間ではないがくぽの妻は、無邪気に胸を突き出した。

「すって、がくぽさま………ぼくのぉっぱい、のんで………?」