撫でるだけに止まらず、がくぽの指はカイトの服を寛げていく。もともとそう、厳重に着こんでいるわけではない。上着一枚捲れば、すぐにも素肌が覗く。
CHIMÉNE-04
「って、ちょ!まだいるのに!」
「ひとがいるのに、ヤる気満々とか!!」
表情は引きながらも身を乗り出すという、複雑な心境を如実に表した複雑な格好で叫んだ双子に、がくぽはちらりと視線を投げた。
「いたのか」
「いるわ、暴虐無人君が!!」
「オイトマノアイサツもしないのに帰るか!!」
「ぁの、がくぽさま………っぁ、んっ」
ぎゃんぎゃんと叫ぶ双子の魔女にも構わず、がくぽは曝け出したカイトの胸をやわらかに撫で続ける。
戸惑う声を上げるカイトの肌は羞恥にうっすらと染まり、興奮を表してしっとり潤んで心地よい。そしてなにより、未だ服を開いたのみだというのに、すでにぷっくりと尖って誘う、問題の――
「で?『いた』のはともかく、『いる』のか?」
「んぁあああっ、暴君の生き見本の教科書的質問っっ!!」
「きちゃないヨゴレたオトナの良見本過ぎるわ、貴様っ!!」
「ぁ、がくぽさま………っ、ぁ、んっ、んーーーーーっ」
ぷくんと尖っていた問題の場所をつまんで引っ張られ、カイトはびくりと背を仰け反らせる。迸りかけた嬌声は、寸でのところで観客の存在を思い出して咬み殺した。
それでも、打って変わった空気というものがあり、溢れ出す雰囲気というものがある。
カイトと同じ年頃の幼い魔女の双子は、怒りのせいだけでもなく顔を真っ赤に染めて、罵倒を吐きながら地団駄を踏んだ。
がくぽと言えば、完全に据わりきった目でそんな二人を睨めつける。
「『いる』のか、そなたら?」
「ぅ、う、う………っ!」
「ぁ、ぁぅう、ぁあう………っ!!」
抑えた声で再度訊いたがくぽに、双子の魔女は手を取り合って震え上がった。
がくぽの目は据わって二人を見ているが、その手はカイトの胸を弄り回しこねくり回すことを止めない。
『いる』と答えたならおそらく、――
双子の魔女は握り合った手にぎゅっと力を込めると、諸々の感情が入り混じった複雑な涙目で、きっとがくぽを睨んだ。
「めーこちゃんに、めーこちゃんに言いつけてやるぅう!」
「余裕があったら、覚えておけよぉおお!!」
叫ぶと、ぅわぁああんと泣きながら、破られたまま修復されていない扉を通って執務室を飛び出して行く。しかし廊下を蹴る慌ただしい足音が響くことはなく、すぐさま静寂が戻った。
おそらくは、飛び出した扉から『道』を通じさせたのだろう。自分たちの住み処か、はたまたどこかは知れないが。
「ふん」
見送ったがくぽは、小さく鼻を鳴らした。軽く、眉をひそめる。
「確か、五魔女の一番目の名がメイコだったか……つまり長だな、魔女の」
記憶を探り、がくぽの眉はさらにひそめられた。
「どういうわけか、言いつけられたところでまったく問題ない気がする」
――メイコといえば、オイトマノアイサツをしたカイトに、その夫たるがくぽへ挨拶の定型文を告げておけと命じるような人柄だ。評価は諸々あれ、封じ森の五魔女の中ではもっとも冷静で、常識派だと言える。
言えてしまうのが、つまりは五魔女というものだった。
「覚えておくにしろ、余裕があったらでいいらしいしな………では、忘れよう!これから全力で妻を構う予定で余裕などからきしないうえ、なにより面倒だからな!」
きっぱりと言い切り、がくぽは扉からカイトへ目を戻した。
「ぁ、ぁんっ、がくぽ、さま………っぁ………っ」
なにをしようとしていたのか、当初の目的をすっかり忘れそうな風情となっているカイトだ。
双子を追い出しにかかっている間も、その後の考え中も、がくぽは休むことなく空くことなく、問題のカイトの乳首をつまんでこねくり回してと、ずっと刺激していた。
弱点だ。
耐性のあるところがあるのかと訊いたほうが早いカイトだが、そこはがくぽによって執拗に愛撫を施され、さらに敏感にされた。もっとも弱い場所のひとつなのだ。
「んん………っ」
「カイト。もう、声を殺さぬでも良い。………しかしそう、喘ぎ悦がって、どうする?俺はこれから、この乳を吸うのだぞ?単に吸うだけだというのに………堪えられるのか、そなた。別のところから、別のものまでこぼしそうではないか?」
「ぁあん、ゃあ………っ」
からかうように訊きながら、がくぽはつまんだ指に仄かな力を込めて尖端を引っ張る。カイトはびくりと背筋を震わせて、仰け反った。
浮き上がった腰、未だ解かないカイトの下履きの一部が、不自然に膨らみ始めている。
「ふ………」
認めたがくぽは、ちろりとくちびるを舐めた。
出るというなら、胸から滲み出すものも飲んでみたい。しかし、女性ではない以前に人間ですらないカイトの、幼さに因らず愛らしい性器から吹き出すものも、しゃぶって啜り上げ、飲み干したい。
「ひとを貪欲にしてくれるものだ、そなたは」
「ぁ、ぁあんっ、がくぽ、さまぁっ………っ」
嘯くと、がくぽはぷっくり尖った乳首にくちびるを寄せ、貪るようにしゃぶりついた。
連日愛撫してやっても、形を変えてぷくりと膨らむのは先端のみで、あとは平らかなままのカイトの胸だ。幼さを表して筋肉で鎧われきっていないそこは、うっすらと骨が浮いている。
尖端を含んでしゃぶるのみならず、がくぽは骨にも沿ってとろりと舌を這わせた。
興奮にしっとりと潤む肌は、手で触れるのも心地いいが、舌で触れても気持ちがいい。このまま全身隈なく、すべて舐めてやりたいとすら思う。カイトはいいように悶え啼き、喘ぎ悦がって、愛らしい男性器を口に含んだ瞬間に暴発させるだろう。
いや、がくぽの口淫が及ぶことすら待てず、触れもしないままにひとり極めてしまうかもしれない。
「ふ………っ」
「ぁ、あんん………っんんっ…………っ」
想像で堪え切れずに笑いをこぼし、がくぽはぷっくり尖る乳首に戻った。片方を口に咥え、片方に指をやってこねくり回す。
すでに十分に膨らんで固くしこった乳首に舌を絡めると引っ張り、強請るように吸い上げた。多少不行儀に啜る音が響いたが、構わない。
腹が減った仔犬か仔猫がやるように、胸の肉をぺたぺたと押し揉みながら、吸った。
「ぁ、あ、がくぽ、さま………っん、っ、がくぽ、さま、ぁ………っ」
「………………」
胸に埋まるがくぽの長い髪を引き、カイトはびくびくと全身を震わせる。
椅子に座って、がくぽの膝に抱え込まれたままだ。なにかで逃げようにも、がっちりとした抱え込み具合に、時として悶え悦がることすら覚束ない。
「がくぽさ………ぁ、あ………」
「……………………出ないぞ」
わずかののち、がくぽはぽつりとつぶやいた。涎を啜った幼い魔女の双子を特殊性癖と罵っておいて、出ないと抗議した声は至極不満げだった。
がくぽは大きくくちびるを離さないまま、ちゅっちゅとくすぐるように先端に口づけて吸い、骨の浮くぺたんと薄い胸の肉をやわやわと揉んでやる。
「女でも、初乳は出が悪いと言うしな………しばらく揉んで啜ってやらんと、厳しいか?肉を解してやって……」
「ぁ、んっ、ん………っぁ、がく、ぽさ………っぁんっんっ………っ」
乳を強請る獣の仔のようなしぐさだったが、重ねて言うがカイトにとっては弱点だ。そして触れているのは、仔ではなく夫だ。
さらに胸を突き出すようにしながら、押さえられた腰が浮き、びくりびくりと全身が痙攣する。
「ぇ、ぇへ、がくぽ、さま………がくぽ、さま………ね?ね………ぉっぱい、のみたぃ、……ですか?そんなに、僕のぉっぱい、のみたい………?」
「……………」
問われて、がくぽは少しばかり安堵した。なにと言って、カイトの問いの中身と、放った声の調子だ。
どうしてこっち方向に頑張ってしまったのかと項垂れたが、カイトもまた、なんの迷いも躊躇いもなく、明後日方向に頑張ったわけではないらしいと、わかった。
不安もあったものの、なにかが引くに引けない状態となって、明後日な方向への頑張りを続けた。
今、こうしてがくぽが夢中になって強請ってくれることで、カイトの中にあった蟠りも解けていっている。
――だからと、明後日方向な頑張りを推奨する気もないし、気がつかずに頑張らせていた自分の不甲斐なさなり、諸々思うことある。
あるがとりあえずは、安堵した。
未だ互いについて手探りの多い、新婚夫婦だ。今日の失敗は明日の成功に繋げるよう努力するとして、今は。
「………飲みたい。俺のものだろう?俺だけの………どうして飲まずにおれる?」
「ぇへへ………っ」
頬を赤くし、熱に潤みながらカイトが浮かべた笑みは、場合にそぐわず非常に無邪気なものだった。がくぽに望まれることで安堵したカイトは、さらに甘く蕩けようとしている。
「………勿体ない。畜生、どちらだ」
こだわることを止めて、このまま体を開いてしまおうかと、がくぽは真剣に検討した。しかしがくぽのみに飲めるという、限定で貴重なカイトの努力の成果も、非常に惜しい。
がくぽにそういった趣味があったかというと実のところまったくないが、カイトは別だ。その体は隅々まで余すことなく、すべてを味わい尽くしたい。知らないところがあり、味があるなら、是が非にも。
「がくぽさま」
「ん?んっ………?」
とろりと蕩ける蜜のように甘く呼んだカイトは、明後日な選択に悩むがくぽのくちびるにちゅくりと吸いついた。
ちゅっちゅと愛らしく吸って、てろりと舐める。技巧は覚束ないが、熱と欲が殊更に香った。
浮かべた選択肢が選択肢だったこともあるが、結局カイトのこともいいように煽り過ぎたのかと、がくぽは束の間瞳を見張ってされるがままとなる。
そのがくぽの胸を押し、カイトは興奮と羞恥がない交ぜになった淫蕩な顔で、陶然と笑った。
「ね、がくぽさま……………下ろして、………ください?」
「カイト?」
軽く眉をひそめたがくぽの胸を、カイトはやわらかに、しかし厳然と離れる意思を持って押す。表情は情欲に潤んで蕩け、決してがくぽを拒絶しているわけではない。
手を離して膝から下りたところで、逃げ出すわけでもないだろうが――
「がくぽさま、ね………?ぉねがい、………ね?」
「………仕方のない」
重ねて強請られ、がくぽは鼻を鳴らした。表情も渋々と、手を離す。
「んっ、ぁりがと、です」
「ん」
言葉とともに、カイトはお礼とばかり、ちゅくりとがくぽのくちびるを吸う。しかめられていたがくぽの表情が、わずかに綻んだ。
未だ微妙に、敬語を話しつけないカイトだ。せめて二人きりのときには無理をしなくていいと言ってあるが、時と場合を明確に区別できる器用さも、あまりないらしい。
結果として、たまにおかしな言葉遣いが飛び出す。
これもまた、体の大きさと同じく、そのうち聞けなくなるものだ。
思えば愛おしさも募るし、このときを大切にしようという気持ちも高まる。
「ぇへ………っ」
「………なんだ。やはり、仕様がないな、カイト」
がくぽにもそれとなく手伝われて、無事に膝から下りたカイトはそのままぺたんと床に座りこんだ。もじもじと尻を蠢かせてから、すぐにがくぽへと顔を寄せる。カイトの媚態と、押しつけられる尻の感触で形を変えだしていた場所に、ちゅっと口づけた。
そこは未だ、服地の下だ。押し上げていても形がはっきりとするわけでもなく、中が透けて見えるわけでもない。肌の質感もなく、どこまでも服地だ。
しかし伝わる熱があり、膨らむ期待がある。
ちゅっと口づけたカイトは、興奮に急く手でやわやわと揉みながら、愛おしそうに瞳を細めて頬ずりをする。
頬ずりをしてちゅっちゅと口づけ、がくぽが教えたままに扱く。
が、服地越しだ。
「カイト」
「んへ………」
もどかしいと、がくぽはカイトの頭を掴み、短い髪をやわらかに引いた。興奮に染まりきった顔を素直に上げたカイトは、熱に蕩けて正気が飛びかけの瞳でがくぽを見つめ、笑う。
淫蕩さの中に消しきれない幼さが覗き、滴るものが見えるようだ。滴るのは間違いなく毒だが、カイト曰くの、『がくぽさまのお体に合わない』ものではない――
「仕様のない。俺に乳を吸わせる前に、そなたがしゃぶりたくなるなど」
「んっ」
ぼやくように言うがくぽの下履きを寛げ、カイトは膨張するものを取りだすと躊躇いなく口に含んだ。