本編第78話のラストシーン手前でも述べたが、かれらは放っておくと延々と永遠にネタの宝庫なのである。

そういうわけで、実は話は本編第78話のラストシーンより→小ネタ集2023年12月11日分に引き続いた挙句→さらに当話へと引き続いていたりしたりしているのである。

よりく、-日記版

ラスボスを斃すと現れる感じの

「そもそもあんたは節操がないんだよ。誰でも彼でもかわいいかわいい言っておけばとりあえず済むと思っているでしょうじゃないんだよあんたがかわいいかわいい言ってなんか済ましておけばいいのは、僕だけなの!」

明夜星がくぽ、ふんすと胸を張っての主張である。ふんすと胸を――張って――

の、主張がこれなわけである。

確かに意味不明を成型して服を着せたものが明夜星がくぽではあるわけだが、こうまで堂々と自分をこそ適当にあしらえと言われると、逆に対応に苦慮するものである。

わずかに考える間を挟み(ちょっと呆然としていたところからの回復時間も含む)、名無星カイトはゆっくり、口を開いた。

「『かっこいい』は?」

「それはここぞというところに取っておいて!」

明夜星がくぽはやはり、ふんすと胸を張って言いきった。

こうまで突き抜けるとなにかこう、いっそもう、あれだ。アレだ。

「おまえほんと、かっこいいな………」

「あんた、ほんとKAITOだね今、なにがどう『ここぞ』だったの?!」

疲れきったような名無星カイトのつぶやきに、明夜星がくぽは本心から驚愕したように叫んだ。

なにがどうと問われたところで、答えるにやさしいことと難しいことというのはある。なにより説明が面倒だ。少なくとも『ここぞ』で言ったわけではないが、ではなにがという。

名無星カイトはかりりと頭を掻き、なんの気もないふうを装って、明夜星がくぽから顔を逸らした。顔のみならず話も逸らすためのよすがを探し、素早く周囲を見渡す。

心当たりといえば、このあまえんぼうのわがまま王子を育てた親だ。親だが兄な、保護者だ。

しかして名無星カイトはこれもすぐ、諦めた。

なぜなら傍らにいた明夜星カイト、意味不明を成型して服を着せた、あまえんぼうのわがまま王子を育てた責任者たる相手はである、なぜか恋人と両手を組み合って押し相撲に励んでいた。

なにかを強請ろうとしているらしい明夜星カイトの顔が、力を入れている証拠に赤いのはまあ当然としても、珍しくも名無星がくぽもうまくいなせていないようだ。結構めに頬を染め、歯を食いしばって恋人からの押し相撲に応えている。

しかし押し相撲だ。いちゃつく方法ならもっとほかにいくらでもあろうに、なぜか顔を真っ赤に染めるほどの力を持って、押し相撲だ。

頻繁に謎なやりとりを始める恋人同士である(名無星カイトの主観である)

とにもかくにも迂闊に巻きこまれれば面倒しかないことは確かなので、名無星カイトはいったいなにをしているのかと思っても、訊くことはなかった。

代わりに、手を伸ばす。ふんすと胸を張る相手の首にかけると、抵抗を知らない相手を引き寄せた。ちゅっと、軽く音を立ててくちびるを合わせ、笑う。

練習だ。『ここぞ』のときに急にやろうとすると、うまくいかなくて、噛むかもしれないだろ」

「ああ、練習」

あっさり納得して頷き、明夜星がくぽは名無星カイトの腰へ手を回した。抱えこみ、囲いこんで、おいそれとは逃げ出せないようにして、名無星カイトの額にこつりと額を当てる。

「………仕様がないから、付き合って上げるよから、はい、どうぞ………気が済むまで言ってあんたの僕に、『かっこいい』って」