お姫さまからハニーズ・キス
「王子さまがキスすると、眠り姫は目を覚ましました。…………そして二人はいつまでもいつまでも仲良く暮らしましたとさ」
絵本をぱたんととじると、カイトはにっこりと笑いました。
「おしまい」
夜、ねる前には、ベッドのなかで、カイトが一冊だけ絵本を読んでくれます。
今日はヒメハナがえらんだ絵本で、『ねむりひめ』でした。
「はい、マスター。横になって、もう寝ま………マスター?」
「………」
『ねむりひめ』に『しらゆきひめ』――……
ヒメハナは、ヒメハナの左側で、ベッドにねそべってほおづえをついているがくぽを見ました。
「………ん?どうした、マスター?」
「………」
ヒメハナは、反対側できちんとベッドにすわっているカイトを見ました。
「マスター?」
カイトは男のひとです。『男声型』っていうんだそうです。
ヒメハナは、首をかしげました。
「カイトは、おひめさまなの?」
「え?」
きいたヒメハナに、カイトは目をまんまるくします。
ヒメハナは首をかしげたまま、つづけました。
「だって毎朝、がくぽにキスされて起きるでしょう?ねむりひめも、しらゆきひめも、おひめさまはみんな、キスされて起きるもの。カイトも、がくぽにキスされないと起きないんだから、おひめさまなの?」
「……っっ!!」
カイトは顔をまっかにして、口をぱくぱくさせます。
ベッドにねそべっていたがくぽは、おなかをかかえて大笑いしました。
「そうすると、俺は王子か?!王子さまか、俺が?!!」
笑いすぎてひっくりかえった声で、いいます。
ヒメハナはちょっと、眉をひそめました。
「…………………………そんな、おなかをかかえて大笑いする王子さまはイヤだわ………」
「そんなことないです!!」
とってもイヤそうにいったヒメハナに、カイトがあわてて身をのりだしました。
「がくぽはやさしいし強いしかっこいいし、すっごく素敵な王子さまです!!っわっ!!」
大笑いしていたがくぽがはね起きて、いっしょけんめいいうカイトに飛びつきました。
ぎゅうっと抱きしめると、ちゅぅううっとキスします。
ヒメハナは、なっとくしてうなずきました。
「じゃあやっぱり、カイトはおひめさまなのね………」