スクールバスを待っていたマスターは、きょろきょろと辺りを見回して人がいないのを確認すると、真剣な顔で俺を手招いた。
朝起きさんのヨーグルトムース→加糖版
「どうした」
「あげるわ、がくぽ。がんばるのよ!」
「……」
口早に言うと、マスターは小さな手のひらに握りしめていた、包装入りのひと口サイズの煎餅を俺の手に握らせた。
おそらくこれは、『口直し』だ。
朝の起き抜けに、カイトに少しばかり、悪戯し過ぎた。その『お仕置き』として、俺は朝飯のデザートに、カイト特製のヨーグルトムースを食べる羽目に陥った。
小さな子供であるマスターは大好物の、カイト特製ヨーグルトムースは、俺には甘過ぎて受け付けない。そもそもが、甘いものが苦手な俺だ。滅多なことでは口にしない。
わかっているカイトだが、悪戯が余程、腹に据えかねたのだろう。
――まさか、俺が作ったもの、食べられないとか言う?
それはそれはもう、鳥肌もののかわいらしい笑顔で迫られて、やむなく。
俺の手を握りしめて真剣に見つめるマスターに、ふと笑いがこぼれた。
日頃はカイト大好きで、どちらかというとカイトの味方であるマスターだが、こうして俺のことを気遣うことも忘れない。
なんとも愛らしく、なんとも愛し甲斐があり、なんとも愛おしんでくれるマスターだ。
「ああ、ありがとう………マスターはいい女だな」
屈むと、俺はマスターの頬にキスを落とした。マスターは背伸びして、俺の頬にお返しのキスをくれる。
「カイトとがくぽが育ててくれてるんだから、あたりまえよ!」
きらきらに輝く笑顔で言い放って、マスターはスクールバスに乗り、学校へと行った。
見送ってから、俺はバス停を後にし、家へと帰る。煎餅は手の中だ。すぐにも食べてもいいが、なんとなしに勿体ない。
「ただいま」
玄関を入ると、ブーツを脱ぐために、とりあえず煎餅を靴箱の上に置く。
すぐそこまで、の外出には少し面倒なブーツを脱いだところで、キッチンからカイトが出てきた。
「おかえり、がくぽ。マスターのお見送りありがと…………ぁっんっ」
無防備に近づいてきた体を捕まえると、足を払って廊下に押し倒した。抵抗される前に伸し掛かり、怒りの言葉を封じるように、くちびるをくちびるで塞ぐ。
「ん………んんふ…………ぁ……っん………っ」
舌を差しこんで、思うさまカイトの口を味わう。カイトはひくつきながら、懸命に応えた。
しばらくそうしてキスを楽しんで、カイトの体からぐったりと力が抜けたところで、くちびるを離す。
「………なんで、いきなり、キスなの……しかも、押し倒して…………」
「口直しだ」
舌足らずに訊かれて、俺は肩を竦めて答えた。
「甘いものなんか食ったせいで、舌が痺れて痛い。おまえの味で上書きしなけりゃ、気が触れそうだ」
「も、がくぽ……!」
潤むカイトの瞳が、わずかに尖る。それ以上の文句が連ねられる前に、再びくちびるを落とした。
「………おまえの作ったものに、ケチはつけたくないがな………甘いものは勘弁しろ。美味いとは思うが、ひと口二口が限度だ。おまえ以外の甘いものは、受け付けない」
「…………なに言って………」
キスでほんのりと染まっていたカイトの頬が、真っ赤になった。
おろおろと視線を逸らすのに、笑いがこぼれる。実に可愛らしい。
俺はエプロンの中に手を突っ込み、コートのファスナーを下ろした。シャツをたくし上げると、首にキスを落とす――ちなみにカイトは、家事の最中は危険だからと、マフラーを外している。
「ん……っ」
「おまえの肌が甘くても、いくらでも食えるんだがな」
「ばか………」
エプロンを避けながら素肌に舌を辿らせると、カイトはか細い声で罵って来た。
ばかはどちらかと思う。
あまりに愛らしい詰り方に、こちらは簡単に煽られてしまうというのに。
「ぁ、あ………んんっ」
平らな胸に舌を這わせ、やわらかな乳首をくちびるにつまむ。
舌で嬲り、転がしてやると、それは硬くしこって勃ち上がった。音を立てて吸い上げると、カイトはびくりと腰を跳ねさせる。
初めは苦手そうにしていた乳首への愛撫だが、何度も愛してやった結果、今ではカイトのもっとも好む性感帯のひとつとなっている。
「ゃ………ん……ぁ、そんな、すわないで………ぁ、ころころしちゃ、いや…………」
「咬みついてやろうか?」
「ぁ、だめ………っゃあっ」
言いながら、もう片方の乳首を指でつまみ上げた。少し痛いほどに捻ってやると、カイトは口元を手で覆って戦慄く。
擦りつけられる下半身が、確実に熱を持ってきている。
心地よさの中にほんの少しの痛みを混ぜてやると、カイトは格段に反応が良くなる。そんなことを言えば、ひどく恥じ入って怒り出し、無駄な抵抗に遭うので口にはしないが。
「ぁ………う、がくぽ………」
切ない声で名前を呼びながら、カイトは体をもぞつかせる。遠慮がちに、けれど確実に下半身が擦りつけられ、そこへの愛撫を強請られた。
俺は笑って、エプロンの裾をまくり上げる。晒された肌に丁寧に舌を這わせ、未だスラックスの下に隠された場所へと辿った。
「ぁ、がくぽ……」
間に俺の体を挟んでやったので、カイトはうまく足を擦り合わせられない。結果的に、俺の体に擦りつけるようになっている。
「はしたないな、そんなに擦りつけて」
「ん……っ」
笑ってからかうと、カイトは盛大に瞳を潤ませた。今にも泣きそうな恥じ入った顔で、俺のことを見つめる。
「いじわる………」
「………」
どう考えても、俺は悪くない――なんだこの可愛い生き物。
ぼそりと吐かれた罵倒に、危うく理性が切れかけた。
寸でのところで乱暴になるのを堪えて、カイトのスラックスに手をかける。ボタンを外してファスナーを下ろし、下着ごと足から抜き去った。
ぷるんと震えて、天を目指して反り返るものが露わになる。形こそ間違いなく大人だが、色のきれいさは子供のようだ。
煽られて反り返ったものを手に掴み、唾液をたっぷり乗せた舌を先端に突き刺す。カイトの腰が素直に跳ねた。
「ぁ、ん………っ」
裏返った声を上げてから、カイトはまくり上げられたエプロンを掴み、口元を押さえた。
「ん……んんん………っ」
エプロンを噛んで、懸命に声を殺す。
かわいらしい声なのだし、恥ずかしがらずに存分に啼けばいいのに。
咥えこんだり、舐め回してやったりしてカイトを育てつつ、俺はふと気がついた。
――そういえば、今日は、抵抗が少ない。
普段はこの時間に手を出すと、「掃除と洗濯が終わってないでしょ!」などと生活感たっぷりのことを言って、猛烈に暴れるカイトだ。
有無を言わせず雪崩れこもうとしても、カイトはそこのところが意外にも頑固で、しっかりしている。きっぱり撥ねつけられる。
それが今日は。
「ゃ、ぁあ……っ」
ぷくりと浮かんだ先走りを啜り、俺はわずかに体を起こした。ぎゅっと握りしめたエプロンの裾を噛むカイトを、計るように見る。
「………どうした?今日は素直だな?」
「……」
直球で訊くと、カイトはさらにエプロンをまくり上げ、顔を隠した。潤んでこぼれそうな瞳だけわずかに覗かせて、ぶるりと震える。
「………………だって、きょぉは…………がくぽに、いじわるしちゃったから………」
「……」
思わず、咽喉を鳴らして唾液を飲みこんだ。
そもそもカイトが『意地悪』をしたのは、俺が幼いマスターの前で、カイトに対して不埒な行為に及んだからだ。もちろんこちらとしても、マスターの情操を考えて手は抜いているが、それでも腹に据えかねればこそ、カイトは俺に対して『意地悪』に及んだはずだ。
だというのに、そんなふうに。
「…………がくぽ?……っぁっ」
「掃除と洗濯は、俺がする」
軽く舐めた指でカイトの秘所を探りつつ、俺は口早に言った。ロイドの体だ、本来は前戯などなくても、簡単に受け入れる。
それでも奥に指を潜りこませ、軽く馴らした。
「が、くぽ………」
「あとなにが残っている?すべて俺がしてやるから」
「ぁあ、ゃぁ………っん、ふぁあ………」
入れてしまうと、さすがにすぐにはカイトも動けなくなる。だからこそ、家事が残っているときにはだめだと抵抗されるのだ。
だが、これだけ可愛らしく煽られて、我慢するなどとても無理だ。
「カイト………」
「ぅ………ん………………いー………よ」
耳に強請り声を吹きこむと、カイトは遠慮がちに頷いた。膝を立てて俺の腰を挟み、招くように動かす。
どこでこういう所作を覚えて来るのか。
カイトのことだ。おそらくは無意識の産物だろうが、一瞬、胸が焼ける。
焼けた胸のままに深く口づけながら、カイトの媚態に煽られて育ったものを取り出す。軽く扱いて十分な硬さを持たせると、ひくつく場所に飲みこませた。
「ぁ………ふぁ………っは、ん………っ」
仰け反って震え、カイトは俺を飲みこむ。本来は男を飲みこむ場所ではない。そこは狭くきつく男を締めつけ、そして熱くぬめって気持ちがいい。
俺のくちびるから堪えきれず、小さな呻きがこぼれた。
「がくぽ………」
「気持ちいい」
「ひぁ………っ」
素直に吐露した途端、カイトはそうでなくても締めつけている場所を、さらにきゅうっと締めた。その結果、俺の形をさらにはっきり感じることになり、何度も何度も痙攣する。
「動くぞ」
「ぁ………あ………っん、んん……っは、ゃあ………っ」
締めつける場所を、ゆっくりと掻き回す。エプロンを掴んだまま震えていたカイトは、その可愛らしい声を堪えることも出来ず、涙をこぼしながら合わせて腰を振った。
擦り上げれば擦り上げるほど、中はぬかるんで滑りがよくなる。同時に、こちらを切なく締め上げる。
「ぁ、は、がくぽ………っぁあっ、ふぁあ……っ、がくぽぉ………っ」
そしてなにより、俺の名を呼ぶ声の甘さ。
それだけで下半身が痺れるような心地を味わいながら、夢中になって腰を打ちつけた。もちろん、カイトのいいところを刺激してやることも忘れない。
俺一人が愉しんだところで、意味はないからだ。
「ぁ、あ……っいく、いっちゃうぅ………いっちゃう、がくぽ……っ」
一際きゅうきゅうと締めつけながら叫んだカイトに、俺はさらに激しく腰を打ちこんだ。
「ゃ、ぁあ………ぁああ………っ」
「っく」
ほどなく欲望を弾けさせたカイトは、中に入っている俺のことをきつく締め上げた。緩急をつけて絶妙の加減で揉んで来る内襞に、俺も堪えられない。
スキンをしていないのだから外に出すべきところを、カイトの腹の中に欲望をぶちまけてしまった。
「…………悪い。中に出した」
「ん……っ」
とりあえずカイトの中から抜き出して、謝る。
自分が達しただけでなく、俺の熱を腹に感じて震えるカイトは、エプロンをまくり上げて半ば顔を隠したまま、そっと横を向いた。
「いー………よ。……………がくぽのもの、って感じで……、うれしー………から」
「……………」
咽喉が大きく鳴る音が、自分で聞こえた。
なにを言っているんだ、こいつは。そういうことを言われて俺が、「そうだな、おまえは俺のだからな」の一言を投げて終われるとでも。
今放出したばかりのものが、あっという間に力を取り戻したことがわかった。
俺はカイトの体を掴むと、反転させてうつぶせにした。
「がくぽ?!」
「掃除と洗濯と買い物と、マスターのおやつ作りもしてやる。だから…」
「ぁっ、ぁあっ、んっ」
抜いたばかりの場所に力を取り戻したものを押しこみ、俺は反論の言葉を封じるように腰を使った。