「ふやっ、つかれた………っ」
一通りの家事が終わって、カイトは和室に伸びた。
マスターと二人だけのときにも結構やることがあったが、一気に二人も面倒を見るのが増えた。いやだとも面倒だとも思わないが、やはりそれなりに疲れる。
Short Break
「カイト?」
「ん、がくぽ………?ちょっとだけ……」
覗きこんで来た顔に、カイトは力なく笑って目を閉じる。
ほんの十分でも休めれば、いい。
そう思って伸びるカイトをがくぽはしばらくじっと見ていたが、ややしてそっと、その頭を持ち上げた。
「がくぽ……?」
「よしよし」
「ん……?」
宥める声を上げながら、がくぽはカイトの頭の下に自分の膝を差し入れた。
「カイト、ほれ」
「がく……」
きょとんと瞳を開いたカイトの体に、がくは押し入れから引っ張り出してきた毛布を掛ける。
「いいよ、がく……これじゃ、本格的に寝ちゃうみたい……」
「よしよし」
「ん…っ」
戸惑う声を上げるカイトの頬に、屈みこんだがくが軽いキスを落とす。そのまま、小さい子ででもあるかのように頭を撫でられて、ぽんぽんと腹を叩かれた。
「おやつの時間になったら、起こしてやるゆえ。そなたは少々休め」
「我らがずっと傍についておるゆえ、安んじて眠れ」
「がく……がくぽ………」
カイトはきょときょとと、やさしく笑う二つの顔を見る。
宥められてあやされて、これではまるで、自分のほうが子供のようだ。
起動したてで『子供』なのは、二人のほうなのに。
それこそ本当に、手が掛かって仕様がないのに――
「ん……、と」
カイトは躊躇いがちに、毛布の中から両手を出した。
「ああ」
窺う瞳で差し出される手を、がくぽが取る。もう片手は、がくが。
きゅ、と握られて、あやすように揺さぶられて、カイトは笑った。
がくぽにしろがくにしろ、ひとのことを子供扱いするなんて、百億光年早い。
早いけれど。
「ちょっとだけ、ね」
つぶやいて、カイトは瞳を閉じた。握った手に、落とされるくちびるの感触。
「ゆるりと眠れ、カイト」
「我らがずっと、傍におる」
ささやかれて、心がどうしようもなく緩んだ。
ひどく心地よく、落ちていく眠り。
「「♪」」
閉じる寸前の聴覚に、がくぽとがくが小さくハミングする、子守唄が聴こえた。