下半身に顔を埋めて舐めしゃぶるがくを眺めてから、カイトは己を背後から抱えるがくぽを見上げた。
瞳が宿す熱と甘ったれな色に、がくぽは笑ってくちびるを寄せる。
「ん………」
Knights & Pudding-後編-
貪るというより、宥めるようなやさしいキスだった。快楽に蕩けて覚束ないカイトの舌は、あくまでもやわらかに食まれるだけだ。
「んんぅ………っ」
かえってカイトのほうがもどかしくなり、わずかに体を反してがくぽに縋りついた。
「……よしよし、嫁よ。少しぅ、手を貸せ」
「ぁ、がくぽ………?」
そのカイトを引き離し、がくぽは手を背後に回させる。蕩けながらも不思議そうな色を宿していたカイトの瞳は、すぐに見開かれた。
「がくぽ………っ」
「……好きであろう?したが、そなたの腹にやるには、まだ少しぅ、弄ってやる必要があるゆえな……」
「………っ」
握らされたのは、袴から取り出されたがくぽの雄だ。すでに漲って、硬い。
抱えられている間、ずっと背中に当たっていて、それがまた微妙にカイトの熱を煽っていたのだが――
カイトの手には、がくぽの手が重なっている。それが導くようにして、すでに十分漲っていると思われる雄を扱かせる。
ふるりと震えたカイトは、握らされた指を開いた。
「ゃだ」
一言告げると、空いている手でがくぽの胸を押す。拒絶の態度にもがくぽは笑って、カイトの手を解放してやった。
「よしよし………カイト?」
「手、ゃだ………」
素直に解放してやったのに、さらに胸を押されて、がくぽは軽く首を傾げた。
元々の力の差に加えて、今のカイトは快楽に蕩けてさらに力無い。下半身にはがくが吸いついて、もっとも弱いところを嬲っているからなおのこと、力が入らない。
その状態で、カイトはとんとんとがくぽの胸を押す。
「がぁくぽ………」
甘ったれる瞳が揺れて見上げてきて、がくぽは体を引いた。抱えていたカイトの体を丁寧に床に転がし、膝枕のような状態になる。
カイトはわずかに上半身を捻ると、目の前に来たがくぽのものを掴み、とろりと舌を這わせた。
「ん………っ」
「………やれやれ。仕方のない嫁だ」
「そこが嫁のいいところだ、兄者」
ぴちゃぴちゃと、ねこが水でも飲むような音を立ててカイトはがくぽの雄を舐める。
その髪を梳いてやりつつ、愉しそうに慨嘆したがくぽに、顔を上げたがくも笑って言った。
がくはそのまま体を起こすと、唾液で十分に濡れた場所に、爪の先まで丁寧に造作の整えられた優美な指を押しこむ。
「っぁ、ふっ………っ」
がくぽを咥えていたカイトが、軽く仰け反る。構うことなく指を押し進め、がくは蠢くカイトの中を探った。
「手ではなく、口に咥えたいなど……未だ慣れもよらぬのに、健気で愛らしい心栄え……」
「ひぁぅっ」
がくが言いかける途中で、カイトのくちびるから一際かん高い声が迸った。腰が逃げるように動く。
きゅっと瞳を細めたがくは、カイトが悲鳴を上げた場所を殊更にきつく押した。
「ぁ、あ、ゃあ………っぁ、そこぉ………っ、め、だめ、がく……っ、がく………そんな、つよくしたら、め………っ……っぐりぐり、ぃやぁ…………っ」
「………駄目なことはなかろう、カイト?」
「厭というはずもないな、カイト」
がくぽのものを咥えていることもできず、カイトは痙攣しながら腰を逃がす。
もちろん逃がすがくではなく、がくぽでもない。
がくは上擦って逃げようとする腰を掴んで引き戻し、がくぽは一度は下ろしたカイトの体を抱き上げて逃げ場を封じる。そのうえで、顔中に誑かしのキスを降らせた。
「ん、や、め……っ、め、なの………っ、そこ、………そこ、ヘンなるから、だめぇ………っ」
がくぽはあやすキスを降らせるが、がくの指は容赦なく弱い場所を抉ってくる。
涙目でがくぽに縋りついたカイトは、笑っているがくにふるふると首を横に振った。
「がくぅ………っ、も、い………からぁ………っ」
「だそうだ、兄者」
がくはカイトに直接答えず、笑ったまま兄を見た。がくぽも笑って、弟に頷く。
「そうだな。そろそろ我らも、堪えの限度――それにしても、こうも嫁が愛らしいと、堪え性ばかり鍛えられるな。困ったものだ」
「しかも鍛えても鍛えても、堪えきれぬ嫁の愛らしさだ」
「そう、それがいちばん悩ましい」
しらしらと会話しながら、快楽に崩れて自由にならないカイトの体が反される。がくのほうを向いて床に四つん這いとなると、がくぽへと腰を掲げる形にされた。
「がくぽ………」
「今、呉れてやるゆえな、カイト………」
「ぁ、………っ」
ほどかれずともできるのが、ロイドの体だ。しかしほどかれてさらにぐずぐずに蕩けても、がくぽの質量を受け止めるのは容易ではない。
宛がわれて押しこまれるがくぽの雄に、カイトはびくりと背を仰け反らせる。
そのカイトの髪を梳き、顔を抱いて、今度はがくがキスの雨を降らせた。
そうやってがくに宥められてあやされ、カイトはようやくがくぽを飲みこみきる。
「ふ………ぁ………っ」
「見たままの愛らしさを損なわぬ腹具合だ、カイト………。我ら兄弟でああも愛してやっているというのに、未だに初めは、食い千切られそうな感がある」
「ひゃぁう………っ」
飲みこみきったもので軽く奥を突かれ、カイトの背がびくりと跳ねる。勢いに堪えきれず、体を支える腕が崩れてがくの膝に頭が落ちた。
「ぁ、がく………」
「ん?どうした、カイト」
「…………」
作為でもなく、心底から首を傾げるがくに、カイトは多少呆れて眉尻を下げた。
目の前に来たものは未だ服地の下にあるが、いい張り具合だ。腹に押しこまれたがくぽと、負けず劣らずだろう。
これでしらっとした顔をしてみせるから、弟のほうはたまにわからない。
未だ締まってきつい場所を緩やかに突き上げられながら、カイトは懸命に腕を立てると、不思議そうながくに向かって口を開いてみせた。
「がく……………ぁー………ん。………して、あげる…………から」
「………」
瞳を瞬かせたがくが、ややして笑み崩れる。
カイトの顔を痛いほどに張りつめる己のものへと導くと、目の前で取り出して、口元に寄せる。
「無理はするな?」
「ん………っ」
やわらかに髪を梳かれながら、カイトはがくのものを口に含む。
見ていたがくぽは、腰の動きをわずかに変えた。
このまま単純に突き上げていると、衝撃でカイトががくのものに歯を立てる。激しく打ちつけるというより、中を掻き混ぜるように腰を回す動きになった。
「んん……っん、はっ、ゃぁあ………っ」
ねっとりした腰の動きに、カイトはかえって煽られたらしい。びくりと跳ねると、慌ててがくを口から抜いた。
わずかに恨みがましそうにがくぽを見てから、もう一度がくのものにくちびるを寄せる。
「ん……ん、ちゅ………はふっ、ん………ふく………っ」
「兄者」
「応、そうだな」
懸命にがくを咥えるカイトを瞳を細めて見ていた兄弟は、頷き合う。
与えられる快楽に震え、今にも崩れそうなカイトの体をくるりと反した。
「んゃんっ」
がくは口から抜けたものの、がくぽは入ったままだ。
入れたまま体を反されたカイトは、その刺激にきゅううっとがくぽを締め上げた。がくぽは微笑んで体を倒し、カイトの頬に宥めるキスを落とす。
がくは相変わらず髪を梳いてやりつつ、ころんと仰向けになったカイトのくちびるに、再び己を寄せた。
「カイト。……このほうが、咥えやすかろう」
「………っ」
ぱっと瞳を見開いたカイトは、すぐにぷくんと膨れた。羞恥に目元を歪めて、下から己を貫くがくぽと、漲る雄をくちびるに添えるがくを交互に睨む。
どちらも、カイトへの愛おしさに溢れた幸福な顔で、甘く笑っている。
「も………」
そうでなくても、パンチ力のある美貌だ。敵うわけもない。
卑怯なおばかどもめと内心罵りながら、カイトは顔を横に向けた。
「がぁく…………ぱっくん………」
「ああ」
甘い声で強請ると、カイトの口にがくのものが押しこまれた。
「ん………っふ、んん………っ」
口の様子を窺いつつ、がくぽもまた、突き上げを再開した。がくも単に押しこむだけでなく、兄とカイトの様子とを窺い、抜いて舐めさせたり、己で扱いたりとして昂らせる。
「ん、ぁ………ふゃ、ぁ………っぁ、きちゃ………きちゃぅ………っ、がくぽ、がく………っ、ぼく、……っ」
ややしてカイトは顔を歪め、かん高い声で啼いた。頭を抱えるがくの体に縋って爪を立て、足の間のがくぽの体をきつく挟む。
「きちゃぅう………っ」
「ああ、いいぞ、カイト………イかせてやろう」
「我らも十全に、愉しんだゆえな、カイト……」
「ひゃあぅうっ」
言うと同時に、がくぽの突き上げが激しくなり、伸びた手がカイトの雄を扱き上げた。カイトはあっさりと高みを極め、腹の中のがくぽをきつく絞るように締め上げる。
「カイト……」
「カイト」
「ん……っ、ふゃ………っ」
奥へと向かって飛沫が叩きつけられるのと同時に、カイトの顔にがくから吹き出したものが飛び散った。
「ひぁう………っ」
上と下と、中と外とに同時に浴びせられた欲望に、カイトは再びぶるりと震え、軽い絶頂を味わった。
「ぁ………っ、はふ………っぅ………」
立て続けの悦楽に、カイトは茫洋と震えながら己の顔を撫でる。濡らすがくのものを掬い取ると、幼い子供のようなしぐさで指をしゃぶった。
「ん………ん、んちゅ………っ、ふ………っ」
「………治まりどころがないな」
「そうだな、兄者……なにゆえ嫁はこうも、愛らしいのか……」
カイトはがくのものを掬っては、夢中になってぴちゃぴちゃちゅうちゅうと指をしゃぶるのをくり返す。
そうでなくとも溺愛傾向の旦那どもは、悩ましさを抱えつつ、あまりに愛らしい嫁の様子に見入った。
「ん……?」
まだ顔が拭い切れていないところで、しかしカイトもさすがに視線に気がついた。
未だほんわりと蕩ける瞳を上げると、食い入るように見つめてくるがくぽとがくを交互に見る。ちゅくりと、指を啜った。
カイトがわずかに腰を引くと、がくぽは抵抗することなく己を抜く。
「ん……」
溶け崩れて怠い体に鞭打って、カイトはがくに腰を向け、がくぽの膝にころんと頭を乗せた。
ふんわりと笑いながら、がくぽのものを抜いたばかりのそこに指をやり、きゅっと締まった肉を開いて窄まりを曝け出す。
「いーよ、がく………?がくの、いれて………」
「カイト………」
カイトの瞳は甘く蕩けて、極めたあとも治まりどころを見つけられないがくのものを誘う。
ふんわりとした微笑みのまま、カイトはがくぽも見上げた。
「がくぽのは、ぼくがお口でなめなめして、きれいにしてあげるね………?」
「………ふ」
こちらも治まりどころが見つけられないがくぽは、うっそりと笑った。
ちゃきちゃきした下町っ子が、普段のカイトだ。それも至極愛らしい。
しかしこうして二人に攻められて理性を飛ばし、思う以上に淫らに振る舞うカイトの愛らしさは、突き抜けて――
「我らの嫁は、悩ましい嫁だな」
「まったくだ、兄者……こうも愛らしい嫁など、そういまいぞ」
ぼやきながら、がくはカイトの窄まりに己を押しこむ。先にがくぽが掻き回したせいで、そこはやわらかくほどけてがくを受け入れ、一度目より貪欲に絡みついて奥へと誘う。
ひくりと小さく跳ねるだけでがくを受け入れたカイトは、慨嘆する旦那どもを甘く睨んだ。
「おばかども………よめって、ゆーな………」
いつもの反駁も、舌足らずに蕩けて勢いがない。
奥まで押しこんだがくは、カイトの口元に漲るものを寄せる兄と顔を見合わせ、笑った。
がくぽはカイトの頬を撫で、がくは体を倒して軽くキスを落とす。
「だが、そなたは嫁だ。嫁でなくば、我らが斯様に淫らな振る舞いをするものか」
「我らの嫁であればこそ、兄者も我も雄を漲らせて、そなたを求めるのだ」
「おばかども………」
懲りない答えに、カイトはぷくんと膨れてつぶやく。その瞳は、羞恥と幸福に蕩けて緩み、きつさも険しさもない。
がくの体を膝に挟んで締め上げ、口元に寄せられたがくぽのものの先端をちろりと舐めると、カイトは見入る二人を促すように腰を揺らめかせた。
「………ぼくのこと、よめってゆーなら……………もっと、いっぱい、して」