クリスマスプディングインチョコレィト、焼きマシュマロとブラウニー添え
クリスマス用品売り場をわくわくと見渡したかいちょは、フェルトで作られたトナカイの角を真っ先に取った。
「かいちょ?」
サンタの服はこちらだと、軽く瞳を見張ったがくぽに構わず、かいちょは熱心に売り場を探索する。
「あとね、あとね、………あかい、おはな!!」
「あかい、はな?」
クリスマスローズのことかと、一瞬思ってからがくぽは首を振った。
かいちょが手にしているのは、トナカイの角だ。ということは。
「かいちょ、サンタさんではないのか?」
一応訊いたがくぽを、かいちょはきらきらに輝く笑顔で見上げた。
「かいちょ、とらかいなの!!」
「しかし、かいちょ……」
クリスマスの主役は、サンタクロースだ。小さい子供ならば、トナカイよりはサンタクロースになりたがるはず。
戸惑うがくぽに、かいちょはぽぽっと頬を染めた。
おねだりのとき特有の上目遣いで、がくぽを見上げる。
「そえれね、そえれね………ぁくぽが、しゃんたしゃんなの。かいちょ、ぁくぽのとらかいなの………」
「かいちょ……」
かわいいが、どうして照れているのかがわからない。
戸惑いが深まるばかりのがくぽはとりあえず、かいちょを抱き上げた。
「こんなに小さくて愛らしいトナカイに、重いソリを引かせるなど、出来ないぞ?」
「でも、かいちょはぁくぽのとらかいなの!」
頑固に言い張り、かいちょはがくぽの首に腕を回した。すりりと、擦りつく。
「あかいおはながいやれね、ひとりぼっちでないてゆかいちょをね、ぁくぽがむかえにくゆの。そえれね、かいちょのこと、ぁくぽのとってもたいせゆなとらかいだよっていうの………」
「…………」
がくぽはわずかに考えこんだ。
どうやら、かの有名な『赤鼻のトナカイ』は、かいちょの中ではサンタの嫁取り話に変換されているらしい。
誤解を解くべきかどうか悩みつつも、がくぽのくちびるは笑みを刷いた。
凭れるかいちょの鼻にくちびるを寄せ、軽く咬みつく。
「かいちょなら、赤い鼻でもとっておきに愛らしいトナカイだろう。必ず、がくぽが貰い受けるゆえな」
「んふっ」
満足げに笑って、かいちょはがくぽの腕の中で伸び上がった。
「まってゆかやね!」
言うと、かいちょはがぶりとがくぽの鼻に咬みついた。