ストロベリーマーブルバニラハニードロップ添え
「あにさまーっ、見てくれ、かわゆいのじゃーーっ!」
「止まれ、グミ!!とま…………」
車は急には止まれない。
がくぽの妹のグミもまた、急には止まれない、――否、止まる気がない少女だった。
道路の反対側から、んっきゃーーーーーvvvと駆け寄ってきて、その勢いままに、大好きな兄に飛びつく。
がくぽの腕には、かいちょが抱かれていた。最大限に庇ったが、
「んきゅぅっ!」
――腕の中で、ツブれるかわいい声がした。
「グミ、お主な……もう少し、落ち着きというものを」
「見てくれ、あにさま!!かいちょの服じゃ!!かわゆいのじゃ~~~~っっwww」
「…………」
まあ大体わかっていたが、聞いてもらえない。
ぎゅうっと飛びついてかいちょをツブし、すぐに離れたグミは、渋面の兄に向かって、振り回していた小さな服を突き出した。
うさ耳フードの、トレーナだ。
「かいちょはねこ、いや――ああ、まあ、可愛いが………」
「着せてくれ!」
きらんきらんに輝く表情をしているときの妹と、会話を試みるのは果てしなく徒労だ。
悲しい学習をしているがくぽは、腕の中で興味津々とうさ耳トレーナへ身を乗り出すかいちょを見た。
聞くまでもない気がする。
「着てみるか、かいちょ?」
「うんっ!!きゆーーっ」
やれやれと思いつつ、がくぽはかいちょを地面に下ろした。
着せていた上着を脱がし、グミから受け取ったうさ耳トレーナを着せる。
裾をきちんと伸ばして整えてやってからフードを被せると、うさぎかいちょが完成した。
「ぁくぽ!かわい?かいちょ、かわい?」
「………ああ。かわいいぞ」
長いうさ耳は、へちゃんと頭に寝てしまっている。
ねこ耳フードならばもう少し耳が立っていて、そちらのほうが断然かわいい。
そう思いつつも口には出さず、がくぽは微笑んで、再びかいちょを抱くべく手を伸ばした。
しかしがくぽが抱くより先に、グミがかいちょの肩に手をかける。
「あにさまっ、違うのじゃっ!この服の真価は、正面ではないっ!」
「なに?」
「んきゃっ?!」
手をかけたグミは、そのまま強引にかいちょをターンさせる。
「…………っっ」
よろめきながらも後ろを向いたかいちょのお尻を見て、がくぽは絶句した。
トレーナの裾に、まんまるしっぽがついている。それがちょうど、かいちょの小さなお尻のところに。
かいちょのお尻に、まんまるしっぽ。
「どうじゃ、あにさま!!」
「んえ、なに、なにー?ぁくぽ、ぁくぽ、なにー?ぅみちゃん、なぁにー?!」
グミに肩を押さえられているかいちょは、うまく自分のお尻を見られない。
じたじたもがくかいちょのお尻、いや、しっぽを、がくぽはがしっと掴んだ。
得意満面のグミをしっかと見据えると、こっくり頷く。
「グミ。良き仕事をした!」