ほろ苦ハニーキャラメルのピーナツバター和え
「ぁくぽ、ぁくぽっ!ぁいっ、たんじょーび、おめれとっ!」
にっこり満開の笑みとともに、かいちょはがくぽに画用紙を差し出した。
「ああ。ありがとう、かいちょ」
「んっふ!」
微笑んで受け取り、がくぽはかいちょを抱き上げて、頬にちゅっとキスをする。
画用紙に描かれているのは、……………………………………まあ、たぶん、――がくぽだ。
幼児の絵が難解なのとは多少趣が異なり、微妙に前衛芸術が入っている、かいちょの絵だ。肯定的に表現するならば、だが。
かいちょががくぽのためにと、一所懸命に描いてくれたものだからもちろんうれしいが、理解は及ばない。
「かいちょ、ええと………」
それでも、なにを描いたかわからないままでは困る。
かいちょを傷つけないように、それとなく絵の内容を聞き出そうと苦慮するがくぽに、当の幼子はさらに難解なものを差し出してきた。
「あちょね、あちょね…………ぁくぽ、ぁいっ!こぇも、あげゆの!」
「ん?ふたつもか?」
折り目をつけないようにと丁寧に運ばれた画用紙とは違い、今度の紙は畳まれた状態で、かいちょのおしりのポケットから出てきた。
首を傾げつつも受け取ったがくぽに、かいちょはきゅっと抱きつく。
「ケッコンとろけなの!」
「『ケッコン』?…………ああ」
一瞬眉をひそめたがくぽだが、すぐに納得して頷いた。
正確には『結婚届』ではなく、『婚姻届』だ。
しかしまあ、そんなことは些細な違いともいえる。こだわるほどのこともない。
さっさと思いきり、がくぽは完全手作りの『結婚届』に見入った。
「かいちょとぁくぽのなまえかくとね、かいちょとぁくぽ、ちゃんとふーふなの!」
「はは…………」
がくぽは小さく笑った。
結婚にしろ婚姻にしろ、そこまで簡単な話ではないが、かわいい。
笑うがくぽのくちびるに、かいちょはちゅっと、かわいらしくキスをする。
「ぁくぽのたんじょーびにね、かいちょ、あげゆ………」
「……………」
ほわわんと赤く染まって言うかいちょに、がくぽは軽く天を仰いだ。
かわいい。
これ以上なく、愛らしい。
――が、教育方針がちょっぴり、なにか、危機的な可能性が浮上した。