案の定でした
くちびるが胸の先端に吸い付いて、カイトはびくりと震えた。
「ぁ、や………もぉっ」
舌先で揉まれるように弄られ、吸われる。小さな水音が立って、がくぽが夢中になってそこをしゃぶっていることがわかる。
「ん、んん………っくぽ、ぁ、ぁん………っ」
ちゅう、と一際強く吸われて、カイトの腰が跳ねた。
涙目になったカイトは手を伸ばし、胸に吸い付くがくぽの髪を引っ張る。
「も………キスだけって、言った………言ったのにぃ………っ」
詰る舌が、覚束ない。言葉通り、さっきまでずっとキスをしていた余韻だ。舌先が痺れて、重い。
キスだけ、と言ったがくぽは、初めは確かにキスだけしていた。何度も何度も、くちびるに吸い付いて、舌先を絡めて。
そのキスが怪しくなってきたのは、ほどなくだ。
カイトが腰をもぞつかせると、がくぽは自分の熱くなった部分を押しつけてきた。
布越しに熱が触れ合う感触に煽られたカイトが切なく啼くと、素早い動きでファスナーが下ろされ、ズボンと下着が半ばまで引き抜かれた。
そうやって露わにされたカイトの男性器を、がくぽは躊躇いもなく掴んだ。キスを続けながらも、器用な手がカイトの熱を煽って、扱き上げる。
「ん、がくぽ………がくぽ、もっ」
「ああ」
彷徨ったカイトの手が、未だに仕舞われたままのがくぽの股間を撫で、もどかしく強請る。
がくぽは一度、カイトから手を離すと、自分のものを取り出し、カイトのものと共に掴んだ。
ふたつともに扱き上げる手に、カイトの手が添えられる。
器用に、あるいは不器用に、リズムも狂って扱かれる、お互いの手。
「ぁ、ゃ……んっ、ぁ、っくぽ、でちゃぅ………っ」
「カイト……」
震えて強張るカイトに、がくぽは甘い声を吹きこんだ。耳朶をくすぐられて、堪えることを知らない体が素直に跳ね、精を吐き出す。
腹が濡れる感触に、カイトはぶるりと震えた。わずかに遅れて、がくぽも精を吐き出す。
「ぁ………」
「濡れたな」
「ぅん………ぬれちゃった………んくっ」
答えたカイトのくちびるが塞がれる。再びキスに戻って来て――がくぽは、今度は濡れた上着を肌蹴た。
そうやって露わにされた胸に、くちびるから肌を辿って吸い付いて。
「ぁ、も…………俺、おっぱいでない………っミルクでないよ………っ」
音を立てて吸われて、カイトは甘い悲鳴を上げる。
唾液の糸を引いて離れたがくぽは、そんなカイトを見下ろして、濡れたくちびるを舐めた。
「がくぽぉ………っ」
「『ミルク』の出るほうに、吸い付いたほうが良いか?」
「へ……?」
問いの意味がわからず、カイトはきょとんとしてがくぽを見る。
もう一度くちびるを舐めたがくぽは、再び体を沈めた。今度は、さっき精を吐き出したばかりの下半身に。
吐き出したばかりでも、そこは胸への刺激で力を取り戻している。
濡れたままのところを躊躇いもなく口に含まれて、カイトは大きく震えた。手とは違う、ひどく熱いものに包まれる感触は未知で、刺激が強い。
それ以上に、口に含まれたそこは。
「ゃ、っくぽぉ……………ぁ、ぁん………っぁ、だめ……ぇ、それ、ふぁ………っ」
「ん……」
カイトはびくびく震えながら、自分の男性器に吸い付いて離れないがくぽの髪を引っ張る。
引き離したいのか、押しつけたいのかわからない。痙攣する太ももが閉じて、頭を挟みこむように動いてしまう。
「ぁん、ぁんんっ、がくぽ………っ……ゃ、でちゃぅ………また、でちゃぅよぉ……っ」
甘く痺れた腰が、びくびくと跳ねる。がくぽは咽喉奥まで咥えこむと、一際強く吸い上げた。
「んんゃぁあ…………っ」
「…っ」
手で扱いたときより余程甘い声を上げて、カイトは達する。
咽喉奥に叩きつけられた飛沫を飲み干して、さらに残滓を吸い上げ、がくぽは舌なめずりしながら体を起こした。
「ん………んくぅ………ひぅう………っ」
立て続けに達したことで、不慣れな体が痛むような快感に染まっている。
小さく悲鳴を上げ続けるカイトを見下ろし、がくぽは粘つく口元へ指を運んだ。
顔を歪めて震え、過ぎる快感に耐えるカイトを眺めながら、爪の先まで整った指を口に含む。たっぷりと濡らすと、開かれたままのカイトの下半身へと手をやった。
「………ぁ?!」
「しー……」
「……っふ、ぅっ」
奥の窄まりを探られる気配に、カイトの口から悲鳴が上がりかける。がくぽは空いている手の人差し指を立て、カイトの口にそっと当てた。
静かに、と促されて、カイトは自分の手で口を塞ぎ、体の上のがくぽを見つめた。
「いい子にしていろ…」
「んく…………っ」
見つめるがくぽの表情が、うっすらと欲を刷いて染まっているのに、カイトはぶるりと震える。
見たこともない顔で、怖いと思うの半分、背筋を駆け上がるなにかしらの感覚半分。
「ふきゅ…っ」
窄まりを辿っていた指が、滑らかに潜りこんで来る。体の中に比べると冷たく硬い指の感触に、カイトは足を閉じて震えた。
がくぽはちろりとくちびるを舐め、引きつるカイトを見つめる。
「入れてもいいのだろう?」
「んく…?」
「ここに…」
「ひぁっ」
言いながら、がくぽの指が内部を探る。痛みはないものの、感じたことのない違和感に悲鳴を上げたカイトは、縋るものを求めてがくぽへと手を伸ばした。
おとなしく身を倒して縋られながら、がくぽはゆっくりと指を抜き差しし、馴染ませる。
「ここに、俺のものを入れても、赦すのだろう…?」
「ふぁあ…っんひぁっ」
ささやきながら、がくぽはカイトの内部を探る。
縋られて不自由な体のまま、それでも二本目を差し入れ、襞を広げるように指を開いた。
「んゃ………っ」
「入れたい、カイト………」
熱っぽくささやき、がくぽは二本の指でカイトの中を乱す。
一度は果てたものの、再び力を取り戻している自分を、カイトの太ももに擦りつけた。
「ぁん………ぁっつい……っ」
「カイトの中に入りたい…………」
指はカイトの中を探りながら、くちびるは真っ赤に染まった耳朶を食む。ぴちゃりと水音を立てながら耳朶を食まれて、カイトは瞳を閉じて首を振った。
「ぁ、ぁん…………っも、だめ、ぇ………っ」
しつこいほどに窄まりを掻き回され、拡げられ、解され、そのうえに耳で遊ばれる。
太ももを引きつらせるカイトの腰が、ふらりと揺れ出した。
「ぁ、が、くぽ………っがくぽ、ぉ…………っ」
「ん……」
何度も何度も切なく呼ばれて、ようやくがくぽは耳朶から離れた。わずかに身を起こすと、泣き濡れるカイトを見下ろす。
「カイト……」
呼んで、首を傾げた。カイトの中から指を引き抜くと、まだ纏わりついていたズボンと下着を完全に抜き去る。
勃ち上がった自分を掴み、さらに何度か扱いて硬さを増すと、足の間に体を割り入れた。
誘うようにひくつく入口に、自身を宛がう。
「入れるぞ?」
「ん………ん………っ」
問うようにつぶやくと、カイトはこくこくと頷いた。解放された足ががくぽの腰に絡みつき、手が伸びて背中に縋りつく。
泣き濡れて真っ赤になった目で、カイトはがくぽを見つめた。
「きて………」
「ん」
誘われて、がくぽは小さく頷く。解しても狭いそこに、ゆっくりと腰を進めていった。
「ぁ、あ、ぁあっ、ひぁあっ」
「ん……っ」
きつく押し包まれる感触に、がくぽは軽くくちびるを噛んだ。動くこともなく、果てそうな危惧すらする。
「カイト………」
「んんぅっ、ひ、んぁっ」
がくぽを受け入れたカイトのほうは、悲鳴を上げながらびくびくと痙攣をくり返す。
がくぽは身を屈めると、閉じられないカイトの口からこぼれる涎を舐め取り、啜った。
「ぁんんっ、ぁ、っがくっ」
「ああ」
悲鳴を上げながらも懸命に縋りついてくるカイトに、がくぽはキスの雨を降らせる。そうしながら、ゆっくりと抜き差し始めた。
やさしく、穏やかに。
焦りそうになる自分に言い聞かせながら、馴染ませるように緩やかに動かす。
しかし、すぐにその決意も崩れた。
カイトの中はあまりに熱く、あまりに気持ちいい。
押しこんだ自分が蕩かされるような錯覚があって、腰の動きが止まらなくなる。
「ぁ、あ、ゃ、だめぇっ、がく、ぁ、はげしっ、よ、ふぁあ、はげし、ぃよぉっ」
「カイト………カイト………っ」
「ぁんん、が、くぽぉっ」
悲鳴を上げるカイトの爪が、背中に食いこむ。責めるように掻かれて、それでもがくぽは動きを止められない。引きつる太ももを開き、激しく腰を打ちこんだ。
「ぁ、ぁ、やぁ、っめ、もぉ、だめぇ……っ」
「っく」
びくびくと激しく痙攣したカイトが、一際きつくがくぽを締め上げる。絞り上げられるような感触に、がくぽは堪えきれず、カイトの腹の中に精を放った。
「ひっ、ぁ、ぁあ……っ」
「………っカイト………」
仰け反ったカイトの瞳が、極限まで見開かれる。口が酸素を求める金魚のように開閉し、爪が背中を掻いて落ちていった。
「…………っぁ………」
「カイト……」
びくびくと数度の痙攣ののち、カイトの瞼が落ちる。処理限界を超えて、一時的に回路が落ちたらしい。
力を失った体に、がくぽは軽く体重を乗せる。
回路が落ちるほどではないが、がくぽにとっても負担の重い感覚だ。怠い。
そのまま寝たいような心地に陥りながら、がくぽは意識を失ったカイトの肌に顔を擦りつけた。互いが放った精のにおいと、それにも負けない甘い体臭。
「ん……」
重い瞼のまま、がくぽは舌を伸ばした。濡れるカイトの肌に舌を這わせ、軽く吸う。
自分がサカったのがソファだということが、少し悔やまれた。
成人男子ふたりが並んで眠るには、いくらなんでも狭い。だからといってこのままカイトの上に伸し掛かっていては、意識を取り戻した彼が黙っていないだろう。
体勢を変えて、カイトを抱え上げればいいのだろうが、変えるために身を離すのが億劫だ。
「ぅ……」
小さく唸り、がくぽはカイトを抱きしめた。
怠い眠い舐めたい。
並列にある欲求に、解放の余韻で眩む頭が惑乱する。
「んにゅ…………ぉも………っ」
「んー……」
意識を取り戻したカイトが、案の定つぶやく。
がくぽは顔を上げ、怠い体をわずかに起こした。
その体に腕が回され、引き戻される。
「カイト?ん……」
問う前に、くちびるを塞がれた。舌が伸びて、くちびるを舐める。
応えてやりながら、がくぽは体勢を変えた。
狭いソファだが、なんとか落ちることもなく、カイトを上に乗せることに成功する。
「………ぁ」
「カイト」
「んく………」
カイトは束の間腰をもぞつかせたが、再びがくぽのくちびるにくちびるを合わせた。
「キス…………いっぱい、んっ」
「ああ」
ささやきに、がくぽは上に乗ったカイトの背を辿り、腰を撫でた。
「キスだけ、な………」