じっと、見つめられる。
これは、癖なのだろうか、カイトの。
てんぷてーしょん
瞳を離せないままに、がくぽもカイトを見返す。
吸い込まれそうだと、思う。なにもかも見透かされて、吸い込まれて――
その瞳が、ふと、細められる。
「……がくぽ」
吐息が名前をささやき、カイトは体を伸ばした。見下ろすがくぽのくちびるに、触れるだけのキスをする。
固まったまま応えないがくぽを、カイトはごく至近距離で見つめた。
生徒会役員は、癖の強い生徒が集まっている。
俗称で『スペシャルクラス』と呼ばれる特待生クラスの、中でも特に成績優秀なものが集まっているのだが、そういったものというのは、えてして個性も際立っている。
その、個性的と言えば聞こえのいい、アクの強い役員を見事に治めきっている、生徒会長が、カイト――
――逆らえねえんだよ。
書記の鏡音レンが、ぼやいていたことがある。
――あの目で、じーっと見つめられるだろ?体が固まるんだよな。動けなくなって、ああ、言うこと聞かなきゃって気になっちまう。
他の役員にしても、役員以外の生徒にしても、同じらしい。
カイトがじっと見つめると、激しい内省に駆られた挙句、逆らえなくなってしまうのだ。
とはいえ普段、その意味不明なチャームを、悪用することはないカイトだ。
「…………して」
「…」
見つめられたまま、吐息のようにささやかれる。
生徒会資料室の、奥まった棚の影だ。そうそう人目には晒されないが、隣の生徒会室には、役員が揃っている。
がくぽはごくりと唾液を飲みこむと、相対して立つカイトへ手を伸ばした。抱きしめ、くちびるを寄せる。
「ん……っ」
開いたくちびるに舌を差しこんだ。丹念に、口の中を味わう。
「ぁ………んぅ………」
「……カイト………」
「ん………」
濃厚なキスにかっくりと力の抜けた体を抱きしめて、がくぽはカイトの顔を覗きこむ。とろりと蕩けた表情で見返されて、素直に下半身が疼いた。
カイトが、意味不明なチャームを悪用することはない。
悪用することはない、はず――
「…………なぜ」
訊くと、カイトはそっと瞳を伏せた。赤い顔で、がくぽの胸に擦りつく。
「………………だって、好きなんだもん…………がくぽのこと」
舌足らずに吐き出された言葉に、がくぽはカイトを抱きしめる腕に力をこめた。