「やっほ、がくぽっ☆」
ぱん、と肩を叩いて元気よく走り過ぎようとした『女子生徒』の腕を、がくぽは咄嗟に掴んだ。
廊下は走ってはいけません、以前に。
「待てこら、なにをふっつーに通りすがろうとしているっ!」
リボンとレースとフリル
「え?っわっわ!」
掴んだ腕を強引に引き、がくぽはショートカットにミニスカの『女子生徒』――に扮したカイトを、空き教室に連れ込んだ。
「なにをしている、カイト!この恰好はなんだ?!」
「ん?これからやる女装コンテストの司会用の衣装」
悲鳴のようながくぽの問いに、カイトはあっさり答えた。
「生徒会役員の男子は、もれなく女装です☆あ、そーいえば、がくぽもある意味……」
「断固断る」
「かわいーと思うのに………………」
しらっと言うカイトに、がくぽは眉間を押さえた。
カイトは誰から借りたのか、女子生徒の制服だ。
しかも風紀のトップに立つべき生徒会長でありながら、ご丁寧にウエストを折って、きちんとスカート丈を短くしている。
ニーソックスで足の大部分は隠れているが、そこよりもっと隠すべき際どい部分が、ちょっと動くだけでひらひらと、見えそうな見えなさそうな。
短い髪も花飾りのついたかわいらしいピンで留めたカイトは、悪びれる様子も恥じ入る様子もなく、むしろ威風堂々――
「……」
がくぽはきりきりと眉をひそめると、さっと手を伸ばした。
「んわっ!!」
「っっ!!」
まくり上げたスカートは、すぐさまカイトの手によって下ろされる。露わにされたのは、一瞬のこと。
しかし、しっかり見えた。
「な、なんなの、がくぽのその手の淀みのなさとか馴れっぷりとか……!スカートめくりの達人とか、ぜんっぜん自慢になんない……」
「カイト」
真っ赤な顔でスカートを押さえつつ下がるカイトの腰を掴み、がくぽは強引に抱き寄せた。
ぎりり、と奥歯が軋る。
「やり過ぎだ、おまえ……!!」
「ひっ?!んわっ、や、ちょ、がくぽっっ!!」
呻いてスカートの中に手を突っこんで来たがくぽに、カイトはかん高い悲鳴を上げた。