人の目を見て話しなさい、とは、よく言われることだろう。
けれど、カイトの場合。
――ひとのことを、じっと見るんじゃない。おまえに見られると、落ち着かない…………
顔を逸らされるのは、しょっちゅう。体ごと逃げられることも。
自分のなにが、そうも人の心をざわつかせるのか、わからない。
わからない、けれど。
ゆらゆらとふるへ
「んー」
がくぽといっしょに屋上に出て、お昼を食べて。
なんとなく、陽だまりに二人、寄り添いながら体を伸ばした。
ぽかぽかのお日さま。
そよそよやさしい風。
気持ちよさに、自然と顔が綻んで、カイトは傍らのがくぽに視線をやった。
同じように、気持ちよさそうにしている――いつもは険しくなりがちな、その顔が晒す無防備。
思わず、じっと見入った。
じっと、じーっと。
ふと、視線に気がついたのか、がくぽが見返してきた。
カイトは、じっと見つめる。
――人のことを、そうやって見ないで。責めないで!あなたは………
がくぽは一度首を傾げると、カイトへと顔を寄せた。
「んっ」
ちゅ、と音を立てて、くちびるにキスされる。
驚いて瞬間的に引いた体を、がくぽは腕を伸ばして抱き寄せた。
「……………がくぽ?」
「寂しそうだった」
大人しく胸に埋まりつつも、訝しい声を上げたカイトに、がくぽはぼそりと言った。
「泣くのかと」
「…」
低く、小さく、やさしく――
ささやく言葉に、カイトは笑い崩れ、がくぽの胸に縋りついた。