「行ってきます」
声を掛けて、玄関から出る。扉を閉めて、道路へと――
「あ、れ?………がくぽ?」
あなたとスキップ
「…」
門の脇に、誰と見紛おう、がくぽが立っていて、カイトは一度、瞳を瞬かせた。
けれどとりあえずは疑問を飲みこみ、がくぽの傍らに立つ。
「おはよ、がくぽ」
「ああ」
顔を覗きこんで挨拶すると、面倒そうに頷かれた。
カイトはにっこり笑って手を伸ばし、がくぽの頬をつねり上げる。
「『おはよう』、神威がくぽくん?」
「………………………………………おはよう…………」
迫力ある笑顔のカイトに、軽く視線だけで天を仰いでから、項垂れたがくぽは、ぼそりとつぶやく。
「ん、おはよっ」
頬をつねったのと同じ手で、カイトはがくぽの頭を『いーこ』と撫でてやる。
がくぽはさらに肩を落としたが、その手を振り払いはしなかった。
「……」
いろいろな疑問が募り、カイトは不思議そうにがくぽを見つめる。
「行くぞ。生徒会長が遅刻では、シャレにならないだろう」
「あー………うん」
ようやくカイトの手を振り払い、がくぽはさっさと歩き出した。
後を追って歩き出して、カイトはふと、思い至る。
もしかして――
「迎えに来てくれたの、がくぽ?」
「ついでだ」
問いに返るのは、素っ気ない声。
カイトは笑い崩れて、がくぽの隣に並んだ。
頭を上げて、まっすぐと。
前を見て歩くがくぽの手を、軽く叩いた。
「どーせなら、手ぇつなぐ?」
「………」
閃かせる手を呆れたように見られて、カイトは再び笑い崩れた。