白い肌があらわになる。
吸い過ぎて赤く熟れたくちびるが、笑みを形作ってささやいた。
――いれて、がくぽ………
「……」
ぱち、と瞳を開いたがくぽは、しばらく布団の中でじっとして、動かなかった。
しかし現実は変わらない。
「…………幾つのガキだ、俺は………!」
夢の後先
カイトが、きょとりと首を傾げる。
最近のお気に入りである、屋上でお昼ご飯の最中だ。
基本的に屋上は出入り禁止で、一般生徒は鍵を使えない。しかし生徒会長は勝手に鍵を持ち出し、屋上を私物化している。
微妙な感想はあれ、がくぽは特になにも言わない。
カイトと二人きりになれることのほうが、重要だからだ。
「思ってたんだけどさ………なんか今日、がくぽ、朝から疲れてない?」
「……………放っておいてくれ」
げっそりと答えつつ、がくぽは購買で買った総菜パンの袋を開ける。自棄な気分で、大きくかぶりついた。
傍らに座るカイトは不思議そうな顔のまま、こちらも購買で買ったおにぎりにかぶりつく。
横目でそのくちびるの動きを逐一追ってしまい、がくぽは内心、頭を抱えた。
夢にカイトが出てきた。
起きたら下着が以下略。
もちろん、ただ『出てきた』からの惨状ではない――
実際に手を出したわけではないが、カイトを汚したような後悔と後ろめたさと腹立たしさと以下略。
もろもろの感情で、朝からどっぷりと疲れた。
「そーいえば、朝から疲れると言えばさ」
おにぎりをもぐつきながら、カイトがのほほんとした声を上げる。
「今日、夢の中にがくぽが出て来てさ。起きたら、夢精してた。すっごい久しぶりだよ、夢精とか」
「っごほほっっ」
パンを咽喉に詰まらせて、がくぽは盛大にむせた。
カイトは明るく笑っている。
「もーね。朝からパンツ洗ってアレしてコレして、疲れたつかれた」
「げっほ、っご、ごほほっ」
がくぽは懸命に咳を治め、笑っているカイトを涙目で見た。
「な、いったい、どういう…っ夢を、見てっ」
つっかえつっかえ訊いたがくぽを、カイトは意味深に瞳を細めて見た。
「聞きたいの?聞いたらもれなく、俺におんなじことしてくれなくちゃいけなくなるけど………」
「……」
瞳が宿す艶やかな色に束の間見惚れてから、がくぽはわずかに項垂れた。
指を伸ばすと、カイトのくちびるを引っ掻く。
「ん?」
「海苔がついているぞ……」
敗北感とともに、指先についた海苔を閃かせると、カイトは軽く天を仰いだ。
「失敗☆」
悪びれる様子もなく言うと、がくぽの指先に咬みついた。