「がぁくぅぽ、っんぐっ?!」
廊下の果てから、にんまりと笑うカイトが近づいてくることに気がついた瞬間に、がくぽは持ち歩いていたチョコレートの包装を剥いた。
そして目の前に来たカイトが皆まで言うより先に、その口の中へチョコレートを突っ込む。
パンプキン・ダーリン
基本的に、がくぽは甘いものが苦手だ。だから普段は、菓子など持ち歩かない。
しかし今日は、持っていなければ確実に身の危険に繋がる。
――と、確信があったので、わざわざ昨日のうちに、チョコレートを買っておいたのだ。
「むぐ……」
「食ったな。食ったよな?!これでもう、悪戯はなしだ、カイト!」
「ぬー………」
戦々恐々と叫ぶがくぽに、口をもごつかせるカイトは、不満そうに唸る。
ややしてチョコレートを食べ終わったカイトは、ちろりとくちびるを舐めた。
身を引き気味にして、いつでも逃げられるようにしているがくぽを、呆れたように見上げる。
「………あのさ、コイビトだよね、俺たち?」
「だからなんだ」
「つったら、イタズラの方向性とか、もう少し色気持って考えられない?」
どこかしら、嗜めるように言われる。
がくぽは鼻を鳴らした。
「色気か?」
「そ。『オトナのイタズラ』って、あるでしょ?」
まさか、わかんないとか言わないよね?と念を押され、がくぽは引きつりながら笑った。
「…………ならば訊くが、その、背後に隠し持っているものはなんだ?」
「ん、これ?」
訊かれて、カイトは満面の笑みとなった。
背後に持っていたものを、びろんと広げて、がくぽへ見せる。
「女子の制服:バージョンがくぽサイズ~☆バレー部の女の子から借りて来ましたぁ♪」
悪びれもしない。
がくぽはぶるぶると震え、拳を固めると叫んだ。
「おまえの色気の解釈は間違っているぞ、カイト!!!」