キストキメキトキス

「ん……っ、んんん、や…………ふ、ぅ…ゃだ、や……がく……っんくっ」

「ふ………っ」

暗い室内に、濡れたカイトの声が上がる。

どこか泣いているのにも似た、切なく喘ぐ声。

爪を立てるほどに縋りつかれて、がくぽの表情は恍惚とした中に笑みを刷く。

そのがくぽに半ば押し倒されてキス責めにされながら、カイトは縋りついたまま、薄く瞼を開いた。

ぶら下がる提灯。

墨の垂れる、古ぼけた看板。

意味ありげな、井戸――

「ん、ね………ゃ、やだ…………っ、がくぽ、ここ…ぉ、んんっ、ふ……いゃ……っ」

ぶるっと震え、カイトはきゅっと瞳を閉じて、がくぽに縋りつく。

文化祭の終わった、教室。

明日にはきれいに片付けられて、非日常から日常へと戻る。

夜になってもところどころにざわめきが残っている校内だが、さすがにここ――お化け屋敷には、生徒の姿はない。

そこに、がくぽは嫌がるカイトを連れ込んだ。

お化け嫌いで怖いもの嫌いのカイトに、『怖くなくなる方法を教えてやる』と、吹き込んで――

それでも嫌がったカイトをがくぽは力の差に物言わせて強引に引きずり込み、震えて固まった体を好都合とばかりに押し倒した。

キスの初めからもう、カイトは涙声だ。

「ゃ………っ、がくぽ…………ん、ゃあ…………」

懸命に嘆願してもキスは深くなるばかりで、一向に止まない。

カイトはぐすりと洟を啜り、これ以上なくがくぽに擦りついた。

腹がきゅうきゅうとしているのが、怖いせいなのか、しつこく酩酊するキスのせいなのか、わからない。

「ん…………ぅ、………ね、もぉ…………っ。こんな、とこで………こんな、とろかされちゃって…………っ」

くちびるに吸いつき続けるがくぽの頬をつねり、カイトは暗闇にも潤んだ瞳で睨み上げる。

「今度から……っおばけみるたびに、がくぽのこと、ほしくって、………からだっ、うずうずしちゃったら、どーすんのっ…………っ」

舌足らずに詰られて、がくぽは頬をつねられたまま笑った。

簡単に手を振り払うと、再びカイトに沈み込む。

「思うつぼだ」

「ぁ…………っんん………っっ」

触れる直前にささやかれた言葉に、抗議しようとしてもカイトのくちびるは塞がれて、ひたすらに蕩かされた。