「んにゅ」

ふっと目を覚ましたカイトは、すぐに瞼を下ろした。

間近にある、起き抜けから見るにはパンチ力があり過ぎる美貌。

夢喰ヒ

「………」

そろそろと目を開いて、カイトのくちびるは無意識に綻んだ。

ぐっすりと、寝ている。

枕が変わると眠れないとか、他人の家では眠れないとか――

そういうこともなく。

狭いシングルベッドの中、カイトを抱きしめて、深い眠りを貪るひと。

家では、よく眠れないと言っていた。

カイトの傍なら、よく眠れると。

いつもはだから、学校で休み時間や放課後に、寄り添って昼寝をさせてやるのだが――

『どうせだったら、うちに来ない週末にちょっと泊まるくらいなら、母親だって目くじら立てないし』

ずっと傍にいてやるわけにはいかない週末が心配で、そう提案した。

いつもは図々しい振る舞いのくせに、おかしなところで遠慮する相手だから、すんなり頷くとは思っていなかったけれど――

「………がぁくぽ」

カイトは自分を縋るように抱きしめて、熟睡に沈むひとの名を呼ぶ。

学校のそこかしこで昼寝しているときより、さらに穏やかに寝解ける体。

比べれば小柄でも、カイトもきちんと高校生男子だ。それなりに体の大きさがあり、シングルベッドに二人で収まるのはなかなか大変だ。

それでも、隣に布団を敷いて並んで寝るのは嫌だと言った。

カイトもまた、別々の布団で並んで寝るためにわざわざ、泊まりに来させたわけではない。

「………むぼーびな顔しちゃってさー………」

悪戯っぽくつぶやきつつもちょっかいを出すわけではなく、カイトははみ出していたがくぽの肩に布団を掛けて、きっちりくるんでやった。

眠っていながらも縋るようにカイトを求める体に自ら擦り寄り、きゅっと腕を抱く。

「………あーあ、も。なんだろ………俺のとなりで、こんなによく眠れるって言うなら………」

つぶやき、カイトの瞼が再び落ちる。

「………いっそ、いっしょに暮らしたいね、がくぽ………」

静かな寝息と穏やかな鼓動に、鼻腔をくすぐる相手の体臭と、分け合うぬくもり。

離したくないと希う意識ままに擦りつき、カイトは心地よい二度寝に落ちた。