REC LECH RECK-03-
どうしてこの状態で、さらに撮影を続けようとするのか、がくぽの理性の置き所がわからない。確かに、経験の豊かさからある程度、興奮を制御するすべに長けてはいたが――
けれど、カイトを前にしたときは、割と理性と手を切っていたことが多かったはずだ。
初めてカイトを押し倒し、体を繋げたときも、どうしてこんなにがっつくのかわからない、と自分で自分に困惑していた。
その後も、体を繋げても繋げても、がくぽの興奮が収まる様子は見えなかった。それどころか、さらに夢中に、溺れて。
ぐにぐにと足裏でがくぽの熱を揉みしだきながら、カイトの瞳は陶然と蕩けていった。カメラがあることももう、気にならない。
「もう、こんなになってる……………俺のこと、見てるだけなのに…………みてるだけで、………こんなに………」
「カイト……っ」
顔を歪め、がくぽはわずかに身を引く。その息が堪えようもなく荒くなっているのがわかって、カイトはとろりと笑った。
逃げた体を追うことはなく足を引いて、膝を軽く曲げる。体を捻ることであからさまな部分を微妙に隠すと、仄かな色に染まる自分の肌を、やわらかに撫でてみせた。
「でも、みてるだけで、いーの………?さわれるとこにいるのに、舐めて上げることだって、できるのに………」
言いながら、カイトはちろりと舌を覗かせる。体を撫でていた手を口元にやると、くちりと音を立てて咥えた。
手袋越しで妙な味と感触だが、気にしない。
殊更にがくぽに見せつけるように、舌を閃かせて指をしゃぶった。
「『旦那様』に、してもらうの、待ってるのに………」
「………っ」
ぐびりと、がくぽが唾液を飲みこむ音が、一際大きく響いたような気がした。
呆然と見つめるがくぽに微笑みかけ、カイトはやわらかに体をうねらせる。
「ね………?おれのからだ、どこもかしこも、がくぽのこと、待ってるんだよ………?ここも…………んっ」
言って、カイトは誘うように自分の胸を撫でる。つぷんと勃ち上がった突起をつまんで示し、そのまま手を下へと辿らせた。
「ここも………」
肌の色をさらに鮮やかに咲かせながら、カイトは形を変えて反り返り、誤魔化しようもなく快楽を見せつける場所を軽く扱く。
「ぁ、ん………っは、そ、れから…………ここ、も………」
「………っ」
がくぽの瞳が、さらに見開かれる。
カイトは体をうねらせて微妙にはっきりとは見えないようにしながら、ローターを咥えこんだままの窄まりに指を潜らせた。
堪えきれずに体を跳ねさせながら、抜けかけのローターを完全に出してしまい、指を奥深くまで差しこむ。
「んん………ぅ………っ…………は、ぁ………ね………?」
がくぽの瞳が、カメラの画面ではなく、完全に自分に見入っていることを確認し、カイトはしていることと一致しない、無邪気な笑みを浮かべた。
「がくぽぉ………」
「………淫乱な新妻だな………」
ぽつりとこぼれた言葉に、カイトはくちゅんと音を立てて後孔を広げた。とはいえうまく体を捻っているので、がくぽには見えない。
その状態でくちゅくちゅと殊更に音を立てて弄りつつ、カイトは陶然と瞳を細めてがくぽを見つめた。
「そぉだよ…………インランなんだよ、俺………がくぽのこと、ほしくてほしくて、インランになっちゃうの………がくぽのこと、悦ばせたくて、はずかしーこと、なんでもしちゃうの………」
快楽に掠れる声で告げながら、カイトは体を反した。
隠すことなく全身を晒し、がくぽを見つめて、微笑む。
「でも、おれのこと、インランにしたの、がくぽなんだからね………?どんなにインランで、スキモノでも、おれ、がくぽ以外なんか、しらないんだから……。がくぽにしか、こんなこと、してあげない………がくぽだけの、インランなおよめさんなんだから……」
「………っ」
がくぽの理性の崩壊する音が、聞こえたような気がした。
瞳こそ画面越しではない生身のカイトに釘づけだったが、まだしつこく構えられたままでいたカメラが、徐々に下がっていく。
カイトはつぷりと勃ち上がった胸と、期待感だけで反り返ってしまったものをがくぽへと突き出すようにした。
そのうえで、とっておきに甘えるときの声で呼ぶ。
「『だんなさま』ぁ…………きて?」
「っっ」
カメラが放り出され、がくぽが伸し掛かって来る。抵抗する気もないカイトをそれでも押さえこむと、貪るようにくちびるに吸い付いてきた。
「ん………っん、ぁ、ぁふ……っぅ、ぁ………っ」
乱暴ですらあるキスに、カイトは懸命に呼吸を継ぎながら、がくぽの背中に手を回す。
ようやく得られた重みを逃すまいとするかのように、きゅうっとしがみついた。
「ん、ぁ………がくぽ、がくぽ………っちょーだい………もぉ、ちょーだい………っ、おれ今日、すっごいいっぱい待った………がくぽのことほしかったのに、いっぱい、じらされた………っ」
「あまりに可愛いことをするからだろう」
しがみつかれて不自由なまま、がくぽはカイトの肌を辿る。つぷんと勃ち上がった胸の突起をつまみ、きゅっと捻り上げて、すぐに潰す。
「ゃ、んんんっ」
「カイト………カイト、かわいい………こんなに淫乱なのに、どこもかしこもピンクで」
「ぁあんんっ」
「俺のことしか、知らない体で」
「んっんんんっ」
「俺だけの、カイト…………かわいい、かわいい、俺だけの………」
荒い息の下でつぶやくがくぽに、カイトは喘ぎながら、責めるように爪を立てた。
「んっ、おばかっ…………かわいーって、いわれる、年じゃ……………ないんだからっ……………きれーって、いえっ、ゃあぁんっ」
下半身に辿りついた手の替わりに、くちびるが胸を舐めしゃぶる。咥えられて吸い付かれ、カイトはびくりと体を跳ねさせた。
がくぽの指は淀みもなく、反り返ったカイトのものを掴んで弄る。胸と同時に責められて、カイトは強過ぎる快楽に堪えきれずに体を痙攣させ、がくぽの下に押さえこまれたまま暴れた。
「ゃ、いっちゃう………っがくぽ、がくぽぉ………っいっちゃうよぉ………っ」
「何度でもイけ。何度でもイかせてやる」
「ゃぁああっ」
訴えたカイトをさらに責めたてて、がくぽは頂点へと追いこんだ。
痙攣しながら濡れたカイトに、がくぽはわずかに体を起こす。
ところどころだけを、わずかな布で覆った姿だ。すべてを曝け出したほうが恥ずかしいはずなのに、部分部分が隠れているほうが、より淫猥に見える。
「………っ」
このまますぐにも押しこんで激しく掻き回したい欲求に駆られながら、がくぽは殊更に呼吸を意識して、自分を押さえこんだ。
欲望のままに多少乱暴にしても、カイトは受け入れてくれる。
けれど、乱暴にしたくなかった――やさしく、気持ち良さだけで蕩かしてやりたい。
なによりも、がくぽの手しか知らずに、がくぽのためならなんでもすると言ってくれる相手であればこそ、尚更に。
切れそうで赤く染まる視界とともに荒がる呼吸を無理やりに抑え、がくぽは濡れた手をさらに奥へと辿らせる。
ローターとカイト自身の手とで十分に解れた場所に、それでもやわらかく解すための指を潜らせた。
「ぁ、っん…………っんんっ」
放出の余韻で脱力していた体が、ぴくりと跳ねて、きゅううっとがくぽの指を締めつける。
「ぁ、がく………んっ、がくぽ………っ」
「とろとろだな。すぐにイける」
押さえても押さえても上がる息で、がくぽは表情を苦しげに歪める。
探られて腰を跳ねさせながら、カイトは手を伸ばした。伸し掛かるがくぽの体を辿り、痛いほどに漲るものをやわらかに掴む。
「……カイト…っ」
「い、いっかい、………ヌイとこ?ね?おれが、くちでしてあげる…………」
「………」
確かに一度放出すれば、ある程度落ち着く。
離れたくない、今すぐに押しこみたいと喚く体をなんとか起こし、がくぽは一度カイトから指を抜くと、頭の傍に座った。
「………頼む」
「ん………」
微妙に情けない声で告げたがくぽに、体を反したカイトはとろりと笑いかけた。服の下から、痛みを感じているだろうほどに張りつめたものを、手袋をしたまま取り出す。
「………っ」
視覚の暴力だ、とがくぽは眩暈を覚えて目を閉じた。
よく使われた色の自分のものと、清純と純潔を表す白い手袋の対比は、かえって興奮を煽る。しかも、頭には花嫁のヴェールをつけたままだ。
汚したくはないけれど、時として滅茶苦茶に汚して、自分の色とにおいに埋めたくなる相手だ。あなた色に染まります、と主張する白をこれ見よがしに閃かせられると、欲望が果てもなく募っていく。
「ん………んちゅ………」
「………っ」
ちろりと舌を出したカイトが、今にも暴発しそうながくぽのものを舐める。試すように先をちろちろとくすぐると、大きく口を開き、ぱくんと咥えこんだ。
「んー………っんふ、んん………っ」
「………っ」
一度放出すれば、募り過ぎた熱も逃がせる。
しかし放出するより先に、暴走しそうだ。それくらい、興奮している。
がくぽは息を詰めてカイトの口淫に耐え、気を逸らすために、なだらかな線を描く背中を辿り、ガーターベルトを越えて、その先に指を潜らせた。
花嫁衣裳一式だからと、用意されたガーターももれなく白かった。
特に大きなサイズを選ぶ必要もなく、『外国の女性』というサイズだけで、カイトは普通に着こなせてしまう。
日本でなら一般的だったカイトの体型は、外国に来ると華奢過ぎて、どちらかというと着られる男物がないくらいだ。
日本では微妙に規格外だったがくぽですら、縦幅はともかく、横幅の違いで悩む。
「ん………んく、ふ………っんんー………っ」
求められたわけでなくても、カイトは咽喉の奥までがくぽを咥えこむ。苦しそうにえづきながらも、凶器としかいいようのない卑猥なものを何度も何度も、口の中に出し入れをくり返した。
「は、ん………っぁ、がくぽ………」
「出る………カイト」
「ん、………のんで、い?」
「ばか………っ」
なにを訊かれるかということを訊かれて、がくぽは懸命に堪えていた激情を吐き出した。
口をつけたカイトが、吹き出すものをさらに啜り上げて、言ったままにこくりと飲みこむ。
「…………やっぱり、たまってた……………すっごい、こいあじ………」
ねとつくものを数回に分けて飲みこみ、わずかに顔を上げたカイトは、荒い息をつくがくぽへと瞳を眇めて見せる。
「こんなでカメラ回すんだから、も、ほんっとばか………」
「可愛すぎるおまえが悪い」
「ぇへへっ」
荒い息のまま吐き出したがくぽに、カイトはこのうえなく可愛らしく笑った。
放出したばかりのものが、それがなんだとばかりに力を取り戻すに十分だ。
「カイト……」
「んっ」
再びベッドに転がし、その上に伸し掛かったがくぽは、カイトの目尻にやわらかにキスを落とす。
ほやや、と目元を染めたカイトは、がくぽの背に腕を回すと、膝を立てて腰も挟みこんだ。
「………言ってるでしょ?カワイイって年じゃ、ないんだからね。きれいって、言え」
「綺麗だ」
「っっ」
求められるまま素直に言葉を落としたら、カイトは瞳を見開き、これ以上ないほどに赤くなった。
つぶさに眺めていたがくぽは、小さくため息をつく。
ぴしん、と固まった体に力を取り戻した己を宛がうと、見開かれている瞳に舌を伸ばした。
反射で瞼が落ち、がくぽの舌は粘膜ではなく、皮膚を舐める。それでも十分に心地よく、がくぽのくちびるは笑みを刷いた。
「やはり、かわいいでいい」
「ぁ、んっっ」
カイトが反論を紡ぐより先に、がくぽは蕩ける場所に押し入った。