しょちぴるり
第1部-第1話
うた。
こえ。
――……………しんでるの?
訊かれた。
答えられない。
答えられないということは、死んでいるということだろうか。
――…………いたい?
訊かれる。
死んでいたら、痛くないのではないか。
そういえば、痛くない気がする。
だから確かに、死んでいるのかもしれない。
――…………………いきたい?
問いに、初めて考えた。
いきたい?
逝きたい?
行きたい?
生きたい?
そのどれもだと、思う。
与えられる定めを、与えられるままに。
逝けというなら逝く。
行けというなら行く。
生けというなら――
――さわってもいい?
問いとともに、今度は答えを待たず、触れられる気配がした。
冷たい。
冷たいけれど、不快さはない。
心地よい冷たさ。
くちびるを覆う冷気が、ふう、と勢いを増して、口内に、咽喉奥に、体の中に――
吹きこまれる、生命の息吹。
体を冷やしながら、同時に甘く満たす。
冷たく甘い。
なんだと考えて、思いついた。
薄荷水だ。
砂糖をたっぷり入れた、それでいながら爽やかな香味の、薄荷水。
子供のころ、好きだったと思い出す。
甘いものが滅多に食べられなかったから、たまに与えられる薄荷水が、ひどくおいしくて――
――…………もっと?
問われて、頷いた。
と、思う。
くちびるをふたたび冷気が覆って、吹きこまれる、いぶき――