「んん………っぁ、ぁう………っ」

がくぽのくちびるが、カイトの肌を辿る。そのたびに肌が灼かれる痛みを訴え、同時に、触れられる悦びに満ちて痺れた。

しょちぴるり

第2部-第17話

体を覆っていた薄絹はむしり取られ、がくぽの手がくちびるが、直接にカイトの肌を辿り、撫で回して下りて行く。

「ぁあ………っ、は、ぁ………っん、ぁ、がく………っ」

「カイト殿………」

熱に浮かされたような声で、がくぽはカイトを呼ぶ。緊張と興奮に掠れるその声が、触れられていない耳から思考へと、カイトに蕩ける心地を運んだ。

「ふ、ぁあ…………んっ、ん………っぁ………ふっ」

さらに体に痺れが走って、カイトは腰を浮かせる。がくぽの手が素早く、下の薄絹をほどき、膨れ上がるカイトを直接に手にした。

「ぁあ………っゃ、んっ」

手にされただけでなく、揉まれて擦られ、カイトは悲鳴を上げて腰を捩らせる。

神はいずれ滅びる定めだと、新しい命など哀れなだけだと、どこか諦念の中で生きて来たのだろう。

カイトはこれまで女性ばかりに囲まれていても、子供を作ることを考えたことがなかった。それゆえに、他の神にその場所を弄らせることがなく、自分で弄ることもなかった。

人間とは違う。

定期的に吐き出さなければ病気になるというものでもないから、放置しておくこと、もはや数え切れない時――

雨に濡れて冷やされても、がくぽの手は灼け落ちそうな熱を保ったまま、カイトがなによりも男である証を握って擦り上げる。

「ふぁ、ぁあう………っぁ、ぁあんっ、ぁ、ゃあ………っぁ、がく………っ」

膨れ上がる肉棒だけでなく、袋までも揉まれて刺激される。

経験がない身には、がくぽの手管はあまりにこなれていて、堪えようもない。他人のものに触れたことがなくても、自分のものを扱いたことがあるかないか、その違いだけでも、差は大きかった。

数回小さく痙攣すると、カイトは大して持つこともなく、がくぽの手に精を吐き出した。

「………」

がくぽはカイトの肌から束の間顔を上げ、粘つく手を眺める。

舌が伸び、手についたものをちろりと舐めた。

「………っがくぽ……っ!」

見てしまったカイトは、悲鳴を上げる。

それは、舐めるものなのか。

制止のために手を伸ばしたカイトに笑いかけ、がくぽは粘つく手を下半身に戻した。同時に自分も屈みこみ、吐き出してしなだれたカイトのものを口に含む。

「ゃっ、ひぁあっ?!」

初めての粘膜の感触に、カイトはびくりと腰を跳ねさせ、逃げを打って体を捩らせた。

腰を掴むことで押さえこみ、がくぽはずるりと音を立ててカイトを吸い上げる。

残滓が口の中に啜りこまれ、カイトは手を伸ばすとがくぽの頭を掴んだ。

「んん、だめ………っそんな、とこ………っ」

「啜りたいのです………どうぞ、聞いてください」

「ふぁ………っ」

強請られれば、強請られるだけ聞いてやりたい。

そうは思っても、未知の経験にカイトの応じ方は覚束ない。

がくぽは精を吐き出したばかりのカイトのものを、今度は口で熱心に舐めしゃぶりだした。

手とは比べものにならない熱が、カイトをやわらかく包んで絞り上げる。

粘膜のやわらかさと、そこが持つ堪えきれないほどの熱。

「ひぁ………っぁ、め、だめ………っぇ、がくぽ………っでちゃ………くちのなか、出ちゃうぅ………っ」

灼かれる痛みと痺れと、やわらかさと、――圧倒的な熱。

肌が音を立てて爛れ、ぐずぐずに溶けていくような気がした。

カイトは涙をこぼして腰を揺らし、捩り、がくぽの口から逃れようと試みる。

拙い試みはすべて打ち砕かれて、カイトはあえなくがくぽの口に、二度目の精を放つ羽目に陥った。

「ふ………っん、ぅ………ふ」

「ゃあ………っ」

咽喉を鳴らし、がくぽは放出されたものを呑みこむ。

最後の最後の一滴まで余すことなく啜り上げられ、カイトは両手で顔を覆い隠した。

啜りきったがくぽは名残惜しげに、しなだれるカイトの先端に舌を押しこみ、まだないかと強請るように舐め続ける。

「ゃ………っがくぽ…………っぁ、もぉ………っ」

腰を痙攣させ、カイトはがくぽに容赦を乞う。

立て続けに二回、放出させられた。

快楽に弱い自分が悪いといえば悪いが、あまりに間断なく放出したために、性器は熱のせいだけでもなく痛い。

嘆願する口調に、がくぽは顔を上げた。舌が覗いて、くちびるを舐める。

普段の礼儀正しさが嘘のような獣じみた目つきで眺められ、カイトはきゅうっと、腹が疼くのを感じた。

「ぁ………がく…………んっ」

呼ぼうとしたところで、がくぽの指が下半身を探った。

立て続けに啜り上げられ、痛いほどの快楽に痺れた場所ではない。

その、さらに奥――擬態するためだけにあって、神なる身では、用途もない場所。

「………っぁん………っ」

「………ふ……っ」

ぬるりと体の中へ入りこんだ指に、カイトは堪えきれずにかん高い悲鳴を上げる。

甘い声と埋め込んだ指が伝える感触と、双方が相俟って、がくぽはまさに獣のような荒い息をこぼした。

「………ふ……っ」

それでも懸命に荒がる息を堪え、がくぽは丹念にカイトの中を探った。

どこまで、神の体が人間と同じかわからない。

もしかしたら、まったく違う作りなのかもしれない――けれどこれまでのところ、人間が悦いと感じる場所で、きちんとカイトは嬌声を上げた。

だから、ここも――

「ぁあっ、や、っ…………ぁあんっ?!」

唐突にカイトがびくりと腰を跳ねさせ、一際高い声を上げた。

がくぽはわずかに安堵に緩んで、指が探り出した場所をしつこく抉る。

ほんのわずかにこりっとした感触を伝えるその場所は、カイトに激しい快楽を呼んでいるらしい。開かれた足をきつく閉じ、腰をうねらせて身悶えるカイトに、がくぽは瞳を細めた。

冷たい雨に濡れながらも、カイトの体は仄かに赤く染まっている。

元の肌が白いから、赤が入ると扇情さはいや増しに増した。

その中でつんと尖った胸の飾りも、最初に丹念に愛撫した――常に目のやり場に困らされた場所だ。口に含んだ瞬間の悦びと感激は、言い表すのが難しいほどだった。

今は、丹念な愛撫のせいもあり、赤く染まるカイトの肌の中でも、そこはもっとも赤く染まって天を差している。

再び欲求がもたげて、がくぽは身を屈めると、カイトの胸に吸いついた。

「ゃっ、ひぁあぅっ」

初めは戸惑うようだった胸の愛撫だが、がくぽがしつこく嬲ったせいで、神経が尖った。口に含まれると、カイトの腹はきゅうっと締まる。

がくぽの指をきつく咥えこんで、カイトは首を振った。

「ぁあ、ゃあ…………っそこ、ころころしちゃ、ゃあ…………っ」

「いやです」

「っんんっ」

カイトの要望はすべて聞き入れて、我が儘を言わないのが、がくぽだった。だというのに行為が始まってからこちら、『我が儘』ばかり言われている。

戸惑うカイトがだめだとか、いやだとか言うたびに、したいと、止めないと、言い張られるのだ。

瞬間的に困るが、そうやって夢中になって体を求められることは、うれしい。

こんな体でも、そうまで夢中になってくれるなら、この感覚にも価値があると思う。

「ぁ、がくぽぉ………っんんっ」

中を探る指が増やされて、カイトは腰をくねらせた。

逃げたいような、もっとして欲しいような――

「ぁあ………ん………っぁあ、ぁああ………っ」

さわらないでくれと嘆願した性器が、自分勝手に勃ち上がり、ふらふらと揺れる。がくぽの指が的確に刺激する場所は、間違いなくカイトの弱点だった。

揉まれ方もコツを心得ているように思えて、カイトはぐすりと洟を啜る。

がくぽは夢中になってカイトの胸に舌を這わせ、突起を口に含んでは吸い上げる。

そこからは、下の性器のようになにかが出てくることはない。カイトは女性ではないから孕むこともなく、神だからといって乳の出る可能性はない。

それでも構わないのか、それともいつか出るとでも信じているのか、がくぽはしつこくしつこく、吸い続ける。

「ぁ、ぁ…………っんん…………っ」

カイトは口寂しくなって、胸に埋まっているがくぽの髪を引っ張った。

「カイト殿?」

「ね………ちょぉだい」

軽く舌を突き出して強請ると、がくぽは戸惑う顔になった。

求められていることがわからないわけではない。わかるうえで、躊躇う理由がある。

「………口を、漱いでいませんから………」

「いーから……っ」

カイトの性器を直接含んで、精を搾り上げて飲みこんだ口だ。

気を遣われていることはわかっても、カイトはがくぽの首を抱き、自分へと招いた。

「ほしいの………」

「………」

こくりと唾液を呑みこみ、がくぽが顔を寄せる。

くちびるを塞がれて、蕩けるように熱い舌が口の中へと入りこんできた。確かに最初のときと味が違ったが、それでも構わずに、カイトはがくぽの首に回した腕に力を込める。

「ん………ふ、んんぅ………っ」

最初こそ躊躇っても、始めてしまえば大胆なのが、がくぽらしい。

口の中に入りこんだ舌の違いといえば、味だけとしか言えないほど熱心に、がくぽはカイトを漁って嬲り、追いこむ。

「は、ん………っぁ、んんんん………っ」

熱を吐きこぼす口を塞がれ、腹の中は相変わらずがくぽの指が弄り回している。

両方から攻められて、カイトはがくぽに下半身を押しつけた。そこでカイト以上に熱く漲るものと、布越しに触れあってしまう。

「ぁ………っぁあ…………っ」

ぶるりと震えて、カイトは布越しでもわかるがくぽの熱へ、腹を擦りつけた。

「………カイト、殿っ」

くちびるを離し、腰も浮かせて、がくぽが小さく声を上げる。

カイトは蕩けた瞳で、うっとりと笑った。

「………がくぽ」

「………」

呼ぶ声が甘く、それだけで心が蕩かされ、体が漲る。

懸命に堪えていた理性も正気も飛んで、がくぽはカイトの腹から指を抜いた。己の着物を寛げて、下半身から痛いほどに漲るものを取り出す。

「…………ぁ…っ」

「カイト殿……」

ふるりと震えたカイトに、がくぽは一度、唾液を呑みこんだ。

ここまで来た以上、後戻りなど出来ない。

体は治まらず、カイトだとて――

「大丈夫………」

誑かす言葉とともに、がくぽはカイトの頬に口づけを落とした。髪を梳いてやり、冷たく濡れる顔に口づけの雨を落とす。

「ぁ………」

カイトの気が緩んだと見たところで、がくぽは一気に腰を進めた。

「ぁあ………っはっ………っ!」

仰け反り、カイトは大きく震えた。何本指を入れられても、追いつかないほどの質量と熱を持ったものが、腹の中を進んでいく。

指では到底辿りつかない奥を突かれて、カイトは涙目で首を横に振った。

「がくぽぉ………っ」

「カイト」

「……っ」

呼びかけに返ってきた応えに、カイトは瞳を見開いた。

あからさまに所有を表す、呼び方。

これまでどれだけ求めても願っても、線引きされていた、それが――

「カイト………」

「ぁあ………っひぁあ………っっ」

やさしくやさしく吹きこまれて、カイトは激しく痙攣する。

精を吐き出さないままに、体が限界を極めていた。

「カイト……っ」

熱くうねる場所にさらにきつく絞り上げられて、がくぽは呻く。

馴染むまではせめてと思ったのに、堪えきれずに腰が動いた。

「ぁあ………っん、ぁあん…………っっ」

達したことで敏感に尖る粘膜を、がくぽは容赦なく擦り上げる。

見つけておいたカイトの弱点もうまく引っ掛けられ、突き上げられて、快楽が止まることがない。

「ぁ、もぉ………っもぉ………っっ」

震えたカイトが、呆気なく極みに達する。

「カイト……っ」

「ひっぁああ……っぅっ」

殊更に甘く呼びかけられたと思ったら、がくぽの欲望が腹の中にぶちまけられた。

内腑が灼かれて爛れる感覚に、カイトの意識は一瞬、飛ぶ。

腹が熱で満たされて、虚ろに開いたカイトの瞳から、ぽつりと涙がこぼれた。

雨に紛れてわからないその涙を、屈んだがくぽは正確に舐め取る。そして、止まることなく腰を揺らめかせた。

「ぁ、がくぽ………っ」

挟んだがくぽの腰を太ももで締め上げ、カイトは戸惑いに瞳を揺らした。

がくぽの精は、カイトの腹の中に確かに注ぎ込まれた。だというのに、カイトの中に入ったがくぽは、未だに力を失っていない。

見上げるカイトに、がくぽは微笑んだ。

「厭ですか?」

「………」

瞳を揺らして応えないカイトに、がくぽは微笑んだまま、腰を締めつける太ももを掴んだ。

割り開き、押し広げる。

「がく………っ」

かっと赤く染まったカイトを見下ろし、がくぽは腰を揺らめかせた。

「――たとえ厭だと言われても、もはや堪えが利きません…………存分に、お付き合い願います」

「………っ」

がくぽの『存分』が、どれほどかわからない。

わからなくて、そこには怖さもあるけれど――

ふるりと震え、カイトは割り開かれた足から力を抜き、押さえつけられるままになった。

「して………」

許諾に、がくぽは本格的に腰を打ちこみ始めた。