He said...-05-
開く体。
それは、いつもいつも相手にしている女性たちのものとは、まるで違う。
「痩せぎすだな」
もう少し太らせたい、と思う。触り心地や、女性に近づけたいという意味ではなく。
荒れた生活の名残りで、一樹の体は同年代のそれと比べても、発育が悪い。
今はしあわせに暮らしているはずなのに――こうして、肉付きの薄い体を見てしまうと、まだまだ少しも自分の力が足りていないのだと、思い知らされる。
「とぉる」
幼い声が、舌たらずに呼ぶ。
蕩けた表情は甘く、無防備に緩んで晒されている。
「………もっともっと、愛してやる」
「ゃあ……っ」
痩せぎすな体を撫でて、ささやいた。熱くなった肌が、しっとりと吸いつく。
「もっともっと……」
愛して、甘やかして。
原型も留めないほどに、蕩かしてやろう。
ささやいて触れる手に、跳ねる体。
辿る舌に、震えながら悶えて、縋る手が伸びる。
「とぉるぅ………っ」
「きちんと全部、愛してやる」
「ゃだぁ………っ」
他人の手を知らない体を、隈なく撫でた。一樹が『一樹』であって、彼の母親ではないと、確かに証立てる場所も。
ぼろぼろと涙をこぼしながら、一樹は心地よさを吐き出した。
「ふぇ……っえ……っ」
「これくらいで泣くな」
初めて他人の手で達した一樹は、子供のように泣きじゃくって、トオルはわずかに苦笑する。
そんなに初心な反応をされては、これから先へと進むのに躊躇ってしまう。
そう思いながらも、欲求に素直な手は、一樹のそこを撫でた。びくりと竦まれて、誤魔化すために口づける。
呼吸も覚束ないキスを与えて誑かし、細い体を抱きしめた。
「とぉる……っ」
舌足らずに、一樹は名前を呼ぶ。
責める色を帯びることもなく、ひたすらに甘い声音で。
大きな瞳に、ずいぶんとあからさまな欲に歪んだ自分を映して。
「一樹」
名前を呼んでやると、幼い顔がくしゃりと歪んだ。
「一樹………」
呼びながら、抱きしめた。
一樹は大きくしゃくり上げて、トオルにしがみついた。
「俺のこと………なんだ…………」
小さく、ちいさく、つぶやく。
「ちゃんと、わかってるんだ…………俺だって………」
「当たり前だろう?」
掠れるつぶやきに、トオルは呆れたように言い返した。
「今自分が誰を抱いて、誰を啼かせているかくらい………きちんと、わかってる」
呆れを隠しもしない響きに、一樹はぐすりと洟を啜り、さらにきつくトオルにしがみついた。
トオルは笑って抱きしめ返す。強く、つよく。抱き潰しそうなほどに。
「…………捕まえたからには、もう放さん」
こぼれた言葉に、一樹は震えて、さらにしがみついてきた。