伸ばした手を、寸でのところで伸びた手ががっしと止めた。

生徒会室すぐ隣、資料室に於いて始まる、理由も不明な力比べ――

Dog's God

「下着を見せるんだろう」

「まあね。っていうか、下着じゃなくて『変柄ぱんつ』ね『変柄おぱんつ』もっと正確に言うと『なえなえ変柄おぱんつ』見たらがくぽの大事なとこが、しょぼぼんってしちゃって、この若さでご復活遂げられなくなっちゃうような、変柄おぱんつ!」

むしろ静かにも過ぎるほど、淡々と問うがくぽに、カイトは即座に訂正した。

怒りを堪えるような、どこか引きつった笑みを浮かべつつ、正対するがくぽをひたと見据える。

「つか、この問答はちょぉ覚えがあるけど、でじゃぶーブタもいいとこだけどとりあえず脇において、言うけどね?!確かにね、がくぽはちょーーーっと萎えたほうがいいかもって、俺も思うんだよねそりゃまあ、精力絶大なヤりたい盛りのお年頃ってことは、俺だって同い年なんだし、理解しないではありませんよありませんが、がくぽくんはちょっっっと、過ぎ越しだよね絶倫だよねサルか!」

「犬だ」

「自信満々に堂々と主張すんなぁっ!」

生徒会長はぎゃあすと怪鳥の叫び声を上げ、ズボンを脱がそうと迫って来る、困ったちゃんな問題児の手を払いのけた。

それでも懲りずに伸びて来る手を、べしべしべしと叩き落とす。

「大体にして、絶倫というのは褒め言葉だろう。褒め言葉だ。褒められた以上……」

「褒めてないっ、このおばかわんこっ文脈読めや、学年トップスリーの成績優秀者っ!」

カイトが一方的に不利な攻防をくり広げつつ、二人は一歩も譲らず睨み合う。がくぽはカイトのズボンを脱がそうと、カイトは脱がされまいと――

「てか、だから『変柄ぱんつ』だって言ってんよね?!言ってんでしょ?!飼い主の言うことくらい、たまには耳に入れたらどうなの?!どんだけおばかわんこなんだよ言っとくけど、俺のセンスとかナメんな?!ほんっっっとにヘンだからね?!」

「そこはむしろ、信頼感が絶大だ。疑いを差し挟む余地などない」

「きっぱり言い切りやがったなっ!」

――必死過ぎて、生徒会長のお言葉の乱れぶりが凄まじい。

それでもがくぽも譲らず引かず、隙を突いてカイトのズボンにがっしと手を掛けた。カイトも慌ててズボンを抑え、またしても事態は膠着状態に陥る。

「だーかーらーさぁ、がくぽっ……ヘンでナエるって言ってんのに、なんで見たがる。ナエたいの実は俺にナエたいとへえ、そう……」

「なんでもいい」

据わった目に引きつる頬、低く抑えた声――

本気で怒っていると示すカイトの言葉を遮り、がくぽは茶化す様子もなく、真顔できっぱりと言った。

「おまえが下着を見せると言う。大事なのはそこだ。おまえが下着を見せる。自ら進んで――あとのことはまあ、どうとでもしてやる。俺は絶倫なんだろう心配せず、とっととズボンを脱いで下着を見せろ、いいから」