「ふぁあっ」
揺すり上げられて、わずかに体を支えていたカイトの膝が崩れる。
さらに深くがくぽが突き刺さって、カイトは仰け反って痙攣した。
Snowman in the Lover's arms-02-
「ぁ……あ、が、くぽ……のっ…………おなか…………おなかの、おく……おくに……ふかぃ…………っ」
「ああ……そうだな。このまま、突いてやろうか」
「ぁああっ」
逃げられないとわかっていても腰を押さえて、がくぽは奥深くを貫いたまま、軽く突き上げた。
カイトは顔を歪め、過ぎる感覚に悲鳴のような声を上げる。
体が崩れるのを自分が起き上がることで抱きとめて、がくぽは縋りつくカイトへ笑い声を吹きこんだ。
「どうする?深いところだけ、ずっと突いていてやろうか」
「ひ……っぅ、ぁ…………ぁあう…………っ、ぁ、ぁあっ、ふっ」
カイトは懸命にがくぽに縋りつき、その背に爪を立てて頭を振る。
それでも逃がせない感覚に言葉が言葉にならず、ゆらりと腰が蠢いた。
がくぽはますます笑って、自分をきゅうきゅうと締め上げながら、さらに貪欲に味わおうとばかりに腰を揺らめかせるカイトを抱きしめる。
「気持ちいいか、カイト?」
「ぁ………あ、ん…………っん…………っ、いい、よぉ…………きもち、いい…………っ」
こくこくと首を振って頷くカイトの肩に、がくぽは軽く顔を埋めた。
興奮にか、体温が上がっているのだろう。いつも以上に、甘い香りがする。
もちろん、常につけているお気に入りのバニラの香水の残り香も多少はあるのだろうが、カイトの体臭は、がくぽにとってはひたすらに甘かった。
甘いものが苦手ながくぽだが、カイトの香りが甘いのは心地良い。
いつまでも鼻を埋めて、嗅いでいたいと思う。
カイトにとって、自分の香りもそうだといいと――甘い甘くないではなく、鼻に心地良いといいと、ほんのわずかに願う。
自分の願いに笑ってから、がくぽは再び、カイトの腰を抱え直した。
いくらなんでも、そろそろがくぽも限界だった。これほど相手を我慢したのは、片恋のとき以来だ。
片恋のときは、己の勝手な欲望に相手を巻きこむまいと思えばこそ、自制も容易かったが、現在は相思相愛。
互いに互いを求め合える仲だ。
欲しいと思えば我慢する必要もないのに、我慢を重ねた。
猟奇的と言われるがくぽの忍耐も、今日は切れ切れだ。
「カイト」
「ん、ん…………ふ、ぁあっ、ん……っ」
抱き締めた体が、爪を立ててしがみついてくる。
痛くても、その痛みがさらに欲望を煽り立てて、がくぽは抱えたカイトを突き上げた。
ゆっくりと味わおうと、そう思いを上らせる隙もない。
とにかく、思考が飛ぶほどにカイトに埋まって、カイトを啼かせて、カイトとともにいることを確認したかった。
「ぁ、あ、ぁあ…………っ、ひっ、ぅく……っ、ぁ、がく、が…………んっ」
「カイト」
堪えきれずに、がくぽはカイトの首筋に牙を立てた。カイトは甲高く啼いて、体を仰け反らせる。
その瞬間に中がきつく締まり、がくぽを搾り取るように絡みついた。
「く…………っ」
思わず、がくぽはカイトの中に精を放っていた。
「っぁ、なか……っ、なか…………ぁあっ」
腹の中に吹き出す感触に、カイトもびくびくと震えて、極みに達する。
「ぁ……おなか…………ぁ、がくぽ……いっぱい…………」
「………………」
うれしげなカイトの声を聞きつつ、しかしがくぽはがっくりと項垂れた。
しがみつくカイトの肩に顔を埋め、犬のように擦りつく。
「すまん……」
「ん?」
謝られて、なんのことかわからず、カイトはわずかに身を起こした。
顔を覗きこもうとするが、がくぽは頑固にカイトの肩に擦りつく。ぐりぐりと痛いほどに擦りつかれ、長い髪がまだ鋭敏に尖る肌をくすぐって、カイトは身を震わせた。
「ん……んん、がくぽ…………」
甘く詰ると、がくぽは懊悩著しい声を吐き出した。
「先に達った…………」
「…………」
カイトは黙りこみ、がくぽの言葉を考える。
――確かに、がくぽが先にカイトの腹に放った。その感覚でカイトも達したのだから、間違いない。
いつもなら、がくぽが散々にカイトを啼かせ、喘がせ、限界に達して力がなくなってから、ようやく放つというのに。
「…………そーだね」
「………………」
「…………ふひゃ」
「……っっ」
笑ってはいけないと思いつつも、カイトはつい、吹き出した。
――かわいい。
思いが突き上げて、がくぽにぎゅうっと抱きつく。
「ね……よかった?俺の中、気持ちよかった…………?」
耳にくちびるをつけて吹きこむと、がくぽはカイトにしがみつく手を強くして、頷いた。
「よかった」
素直にこぼされる、言葉。
「ふひゃっ」
満たされて、カイトはまた笑うと、肩に懐くがくぽに頭を擦り寄せる。
しかし、がくぽはすぐにふるりと首を横に振った。
「…………いや、違うな」
「ん?ぁ、ふぁっ?!」
顔を上げたがくぽに腰を抱えなおされ、その感触にカイトは小さく啼いた。
達したばかりの体は、まだ敏感に尖っている。わずかな刺激が、いつも以上に響くのだ。
そのカイトの顔を、がくぽは力を取り戻した顔で覗きこむ。にんまりと、くちびるを笑みに裂いた。
「気持ち良い、だ…………現在進行形で」
「ぁ、あ……っふぁっ」
がくぽは未だにカイトの腹の中に入ったままだ。掴まれた腰を軽く揺さぶられて、カイトは慌ててがくぽにしがみついた。
「ん、がくぽ……」
「次は、お主を先に達かせてやろう」
「ぁ、ぁう……、ん、がく…………っ」
本格的に抱え直され、次が始まる予感に、カイトはぶるりと震えた。
しがみつくがくぽの背に責めるように、煽るように爪を立て、そっと頬にくちびるを寄せる。撫でるようにくちびるを当てると、耳朶へと辿った。
やわらかなそこを食んで、舌とともに言葉を吹きこむ。
「ん…………いっぱい、イかせて…………」