大江戸噺-02-

「ん………っんん…………っ」

扉を閉めた途端、がくぽは荒々しくカイトのくちびるを塞いだ。ここしばらくで馴らした相手は、震えながらもきちんとがくぽに応じる。

「あ、ふぁ…………っがくぽさま………っ」

「そういう声を出すと、本物の娘のようだな」

「ん………っ」

笑って告げられた言葉に、カイトがいやいやをするように首を振る。

がくぽはさらに笑って、震えるカイトの体を抱えると部屋に上がった。布団を敷くこともなく、畳に直に転がす。

「あ………」

「もちろん、そなたが娘でないことは、重々承知だがな」

「ゃ、だめ…………っ」

意地悪な口調で言いながら着物を割って下半身を探る手に、カイトは真っ赤になる。

伸ばした手でがくぽの手を止めようとして、どこかで躊躇って、かえって誘い込むような動きになった。

「………わかっているようだな」

「んく………っ」

抵抗すれば、ばらすと言われている。

だがそれだけでなく――

「が、くぽ、さま………っ」

「ああ、もう反応しておる。ほんにそなたは好きものだ」

「ちが………っんっ」

形を変えつつある場所を下着の上から撫でられ、カイトは力なく首を振った。

泣きそうな瞳で見つめると、伸し掛かるがくぽは愉しげに舌なめずりしてみせた。

「このようなものを持つものが、娘なわけがないな。それなのに、なにゆえ娘の形などしておるのか」

「……っ」

カイトはくちびるを噛み、顔を背ける。

構うことなく、がくぽは下着をほどいて外すと、カイトの下半身を曝け出した。

そこには確かに、娘ではない証がある。ここしばらくで馴らされたがくぽの愛撫によって、敏感に反応するようになってしまった男の証が。

がくぽは無遠慮に掴み上げると、やわやわと揉みしだいた。

「ぁ…………」

「相変わらずきれいな色だ。遊びも知らぬ。…………そういえば、己で慰めることすら覚束なかったか。どうだ、教えてやって以降、ひとりきりでやってみたか。ここをこう………」

「ゃあ…………っんんっ」

「己の手で扱きあげ、擦り、快楽に浸ってみたか?」

「んぅう………っ」

カイトは声を殺すのに懸命で、がくぽの言葉に応える余裕がない。

わかっていて責める手を緩めず、がくぽは屈んでカイトの耳朶を食んだ。

「ひぁ…………っ」

「答えぬと、酷うするぞそうだな、外ででもこうして、着物を開いてやろうか開いて、人の目前で責めてやろうか」

「ぃや………あ………っ」

意地悪くささやかれる言葉に、カイトは堪えきれずに涙をこぼす。

ふるふると弱々しく首を振り、懸命に伸ばした手でがくぽの着物を掴んだ。

「がくぽさま………っがくぽさま………っ」

「…」

涙声で呼ばれて、がくぽはねこのように瞳を細めた。赤い舌が、ちろりとくちびるを舐める。

「カイト、答えよ。答えたら、やさしうしてやっても良い」

「………んくっ」

カイトは震えながら、瞳を瞬かせる。その間にも巧みな手が不慣れな場所を追い立てて、とても考えがまとまらない。

洟を啜るカイトに、がくぽはやさしそうに微笑んだ。

「ひとりきりのときに、己の手で慰めてみたかここを、俺がしてやるように」

「………っふ」

カイトはこくりと唾液を飲みこみ、微笑むがくぽを見つめた。

「して、ないです……………」

「嘘をつけ」

「ひぁっ!」

答えを即断して、がくぽは握ったカイトのものをきつく締め上げた。カイトは大きく震えて仰け反る。

がくぽは微笑んだまま、カイトのものを容赦なく締め上げ続けた。

「これほど快楽に弱いそなたが、ひとりきりの夜に、知ったばかりの手妻を使わずにおれるものか。言え、素直に。ほんとうのことを吐け」

「ひぅう………っぁう………っ」

ふるふると首を振り、カイトは懸命にがくぽの着物を引っ張る。立てた足先が畳を引っ掻いてもがくが、体が示す抵抗はそれだけだ。

涙をこぼしてがくぽを見つめ、カイトは洟を啜った。

「ほんと、です………だって、がくぽさまの、手じゃないと…………っ」

「…」

カイトの答えに束の間止まり、それからがくぽはあからさまに笑み崩れた。

さっきまでのどこかつくりものめいた笑いではない。心底からうれしそうな、それでいて性の悪い笑みだ。

「そうかそうかそなた、俺の手でなくばイかれぬのか。己の手では、物足らぬか。そうだな、そなたではいかにも技巧が足らぬげだ。こうして」

「んやぁっ?!」

責め方を変えられて、カイトは堪えきれずにかん高い声を上げる。

がくぽはますます愉しげに笑った。

「このように遊ぶことすら、思いもよらぬのだろう」

「ひぁあ、やぁっ、んんんっっ」

狭く壁の薄い長屋に響き渡る声を上げるカイトに、がくぽは笑みの形のくちびるを落とした。

そのまま激しい口づけで塞いで、諸共に声も塞ぐ。

「ふぅう………っんんぅうっ」

上から下から責められて、カイトはさっきまでとは違う涙をこぼした。

苦しげにもがく体が幾度も幾度も跳ねて、とうとう絶頂へと押し上げられる。

迸ったものを器用に手のひらに受けて、くちびるを離したがくぽは舌なめずりした。

「このように子種を撒き散らすとは、勿体ない事をするものだ。いくら仮初めに娘の形をしていようとも、そなたも男だろう無為に垂れ流すのでは、心も痛もう」

粘つく液体を指に絡めて遊び、がくぽはその手をカイトの下半身へと戻す。

しどけなく力を失った男の証の、そのまた奥に隠された場所へ。

脱力していたカイトが、びくりと体を震わせた。

「ぁ、だめ…………っがくぽさま、そこは、だめっ」

「なにがだめだ?」

ささやき、がくぽは濡れた指をカイトの秘所に添わせる。

「俺が辛抱強く馴らしてやって、これこのように…………」

「ふぁあっ」

「すんなりと指を呑みこむようになったというに」

「んん………っ」

言葉とともにがくぽの指が中に入りこみ、カイトは震えて仰け反った。

カイトの放ったもののぬめりを借りているためだけでなく、そこはすんなりと指を受け入れる。

二本、三本と増やされても、カイトが痛みに顔を歪めることはない。

「そろそろ………」

「んん………っだめ、………ねがぃです、ぃれないで…………それだけは…………っ」

舌なめずりしたがくぽに、カイトは懸命に縋りつく。

ここまではカイトも従順に受け入れる。けれど、この先、がくぽ自身を受け入れることだけは、頑として拒む。

確かに、そこに指ではなく、男のものを受け入れるのはまた、次元が違う躊躇いがあるとはわかるが――

大きな瞳に涙を溜めて懇願されて、がくぽはくちびるを歪めた。中に押しこんだ指で、きつく粘膜を押す。

「ここはこうも悦んでいるというのに…」

「ひぁ………っん、や、…ねが、ぃで、す………っそれだけは…………っ」

「…」

不満げながくぽの着物を掴み、カイトはぐす、と洟を啜った。

「がくぽさまぁ………っ」

「…」

甘い声が名前を呼んで、がくぽの肩は小さく落ちた。

カイトの秘所に忍ばせた指を、さらに奥深くへと差しこむ。

「ひぁあ………っ」

涙を散らして、カイトが二度目の頂点を極める。

がくぽの連日に及ぶ辛抱強くもしつこい馴らしで、カイトは後ろだけでも達せるようになっていた。

それでも頑固に、最後の一線を拒む。

びくびくと震える様を眺め、がくぽは首を振った。

「…………まあ、初物を頂くなど面倒だ。堪えてやるゆえ………」

ここまでしておいて、無為な言い訳だ。だが、一言つぶやかずにはおれない。

一度カイトから手を離すと、がくぽは着物をくつろげて、屹立する自分のものを取り出した。

泣き濡れて腫れぼったいカイトの顔の前に差し出す。

「口で奉仕しろ。やり方は覚えておろう」

「はぃ………」

従順に頷き、カイトは力の入らない体を反した。畳にうつぶせると、がくぽの股間へと顔を埋める。

ぬめる口内に包まれ、がくぽは軽く眉をひそめた。無防備なカイトの尻へと再び手を伸ばす。

念入りに馴らし続けてやったために、もはや指ならば抵抗もなくすんなりと受け入れられるようになっているそこを、未練がましく揉んだ。

「ふぁあ……っ」

「気を散らすな」

「ひゃぃ………」

カイトは頷き、懸命にがくぽのものをしゃぶる。

がくぽは肩を竦めた。

「まったく、いつまで経っても下手糞だ」

ぼやく声は、意識もせずに甘く溶け崩れていた。