甘い体臭が独特のにおいを含み、がくぽの咽喉が勝手に鳴った。
興奮が募る。多少くちびるを湿らせたくらいでは、堪え切れない。
色形でも美女と遜色ない美麗ながくぽのくちびるが開き、赤い舌が突き出される。とろりと唾液を伝わせながら、伸びた舌はきつく締まる窄まりに触れた。
ÉGÉRIE-06
「ふ………っ」
荒くなる鼻息に自分で眉をひそめつつも、がくぽはしんなりと垂れるカイトの性器のさらに奥、きつく締まっている蕾を舐め解す。
「ん、ぁ………ぁ、ふぁ………っ?」
「………」
掴んだ太ももがびくりと揺れ、カイトが惚けた声を上げた。はっきりしない意識まま、与えられる感覚にか、自由を求めてか、足がじたじたともがく。
堪えるような体格差でも力の差でもなく、がくぽは平然と押さえたまま、窄まりに舌を這わせ、唾液をこぼし続けた。
「ぁ………っあ、ん、ふやぁ………っぁ、あ、がく、がくぽ、さま………っ」
「起きたか?」
「んんん………っ」
しらりと訊いたがくぽに、焦点がはっきりしたカイトはきゅっと太ももを締める。しかし今度は、がくぽの手によってがっちりと押さえられている。
自分が望むほどには締めきれず、ましてや感覚を刺激されている。
きゅっと眉をひそめると、カイトは苦しさを吐き出そうとするように仰け反った。
反り返る体の角度に、がくぽは笑う。
「やわらかいな。幼さゆえか、資質か?多少の無茶には応えそうだ」
「ぁ、あ………っ、ゃ、や………んんっ、め、………っがくぽ、さま、め………っ、ん、そこ、なめちゃ、……」
芳しくない予想も聞こえず、カイトは身悶える。遠くにいるがくぽへ懸命に手を伸ばし、ようやく長い髪を掴むと、きゅいっと引っ張った。
「びりびり、する………お、なか………びりびり、するから………また、おしっこ、しちゃう………っ」
「………これで萎えないから、俺は余程だな。いや、そなたの色香が余程なのか………」
どうでもいい感じに悩ましく吐き出し、がくぽはあまりに幼い言葉を繰る相手を呆れたように眺めた。
興奮は治まらない。
治まらないが、理性は戻った。戻っても結局、止まれないので意味はない。
わかりきったことだが、カイトがしたのは粗相は粗相でも、そちらではない。さすがに、刺激されても出しようがないほど、幼い体ではなかった。
「………今さらだが、ぞっとするな」
「んん、がくぽさまぁ………」
成長期の子供は、難しい。年は達していると強引に結論して体を開いたが、してみたら実際には思った以上に幼かったとなったら、いくらがくぽでも自己嫌悪で死にたくなる。
「僥倖だ。相変わらず、俺にとってだけだが」
「がくぽ、さま………ね、おねがぁ……っぁ、も、だめぇ………っ」
考えに沈むがくぽは、相変わらず無意識のままにカイトを嬲っている。しつこく舐めしゃぶられた蕾はほんのりと綻び、ひくつくたびに垂らされた唾液を飲みこみ押し出して、ちゅぷちゅぷと耳を犯す水音を響かせる。
掠れた声を上げたカイトは、大きく仰け反った。
はたと我に返り、がくぽは片足を押さえていた手をぱっと離し、カイトの性器にやった。きゅっと、根元を締める。
仰け反っていたカイトが、びくんと竦んだ。幼い顔が、くしゃりと歪む。
「ゃあ、ぃたいぃっ」
「ああ、力が………いや、堪えろ」
上がったのは混じり気なしに本気の悲鳴で、がくぽは反射的に手を離しかけた。
しかしすぐに思い直すと、わずかに力を緩めるだけで、興奮に兆すカイトの性器を抑え続ける。
「そなたが敏感なのは構わんが、そうそう何度も達し続けては、身が持たなかろうが。実のところ、前哨戦が終わった程度で、これからだぞ?」
「んん、ゃあ………っぃたい………ぃたいの、がくぽさまぁ………っ」
説いて聞かされても、カイトはぐすぐすと洟を啜って解放を強請る。
ふっとため息をつくと、がくぽは舐め解いた場所をさらりと眺めた。
今は与えられる痛みにきゅっと締まっているが、先までは程よく蕩けていた。
「だからと言ってなあ………」
ぼやきながら、がくぽは張り詰めて服地を押し上げている己へと目をやる。
つぶさに観察したこともないし、したくもないが、それはそれ。自分の体の中でも、ある意味もっとも付き合いの深い場所だ。諸々、把握している。
馴れた女性でも微妙なものを、初めての、それも男相手で、ろくに用意もなくねじ込んでいい代物ではない。
もはや止まれないが、だからとそこの配慮までかなぐり捨てているわけではない――
「無駄な理性だ」
「りょうしゅ、さまぁっ」
「あ?」
慨嘆したところで、懸命に身を起こしたカイトが首に手を掛けた。ぐすぐすと愚図りながら、媚びとおねだりを含んでがくぽに縋りつく。
「僕、たんじょうびです………りょうしゅ、さま、お願い、なんでも聞いてくれるって…………ね?だから、はなして………いたいの、ゃあ………」
「……………」
カイトが身を起こすのに合わせて足を解放してやり、がくぽは寝台に座った。
性器は解放しないままながら膝に乗せてやると、カイトはぺろぺろと、ねこが毛づくろいでもするような舌遣いでがくぽの顔を舐める。
愛撫には程遠く、だからといって不快でもない。心地よく、愛らしさが募る。
カイトは躊躇うこともなく、性器を舐めしゃぶっていたがくぽのくちびるにも舌を這わせた。
「ん、ん………ん、ちゅ……はふ、んん………っ」
「願いを聞くにやぶさかではないが」
「ふ、ぁんっ」
濡れていたものをきれいに舐め取られたところで、がくぽは口を開いた。ついでに締めていた性器からも手を離す。
解放されて、カイトはぶるりと背筋を震わせた。緊張に強張っていた体が一気に緩み、へちゃんと座りこむ。
勢い達することはさすがになく、しかしほっとして崩れる体を抱え顎を掬うと、がくぽは甘さを取り戻した瞳を覗きこんだ。
「俺は領主として、そなたに約したわけではない。そなたの『夫』として、『妻』たるそなたが強請ることを叶えてやると約したのだ」
「ぁ………っ」
厳しささえ含んだがくぽの言いように、カイトは瞳を見開く。不安が混ざった瞳が揺らいで、泳いだ。顎を捉えられているから、顔を逸らすことも俯くことも出来ない。
逃げることも出来ないまま相対して、カイトはひくんと引きつる息を呑みこむ。
ふと、がくぽは表情を緩めた。持てる美貌の威力を遺憾なく発揮して、蠱惑的に笑う。
「ふぁあ………」
――案の定で、カイトは一瞬で蕩けた。
瞳を細めてそのさまを眺め、がくぽはちろりとくちびるを舐めた。
「そのうえ俺のことは、領主ではなく名前で呼べと、あれほど言ったというのに………事ここに来てやらかすなど、そなたはまったく困った子だ」
「ぁ、ごめ、なさ……」
「おかげで思い切れた」
蕩けきった謝罪を聞くことなく、がくぽはきっぱりと告げた。
「言ったな?覚えられぬなら、覚えられるまで仕込んでやると。仕置いてやろう、カイト。そなたが二度と、俺を領主と呼ばず、夫として愛おしく名前を呼ぶようになるまで」
「え?え?え……?」
「多少痛くて怖くても堪えろよ。なにしろ、仕置きだ」
きょとんと瞳を瞬かせるカイトに告げるがくぽの声音はさばさばとしていて、笑みはむしろ無邪気で明るかった。