ハチミツ入りホットミルクチョコレートプラス
小さな手が、ぎゅっと寝間着を掴む。
「………かいちょ、聞き分けろ」
「や。しらない」
努めて穏やかに言ったがくぽから、かいちょはぷいと顔を逸らす。けれどその手は、がくぽの寝間着を掴んだままだ。
がくぽはかいちょの手を掴み、出来るだけやわらかく、しかし厳然としてもぎ離した。
「かいちょもそろそろ、ひとりで寝られるようにならなければだろう?暗いのが怖いなら、豆電球を点けておいてやるから」
「こぁくなんかないも!!」
がくぽの言葉に、かいちょは瞳を尖らせて振り返る。
もぎ離された手を取り返すと、再びがくぽの寝間着を掴んだ。だけでなく、全身でしがみつく。
「かいちょ、こぁくなんかないもん!!くぁいの、へーきだもん!」
「ならば…」
「かいちょはぁくぽとふーふなんだから、いっちょにねゆの!!」
「…」
いくら小さく力無いとはいえ、痛いほどにしがみつかれて叫ばれ、がくぽは頭を抱えた。
「かいちょ…」
「ふーふはいっちょのおふちょんでねゆんだよ!!だからかいちょは、ぁくぽといっちょのおふちょんでねゆの!だっこだっこでねんねすゆの!!」
頑固に叫ばれて、がくぽはますます頭を抱える。
そのがくぽを、かいちょはきっとして睨んだ。
「かいちょは、ぁくぽのおよめしゃんでしょ?!」
『将来の』が、抜けている。
予定は未定で、かいちょが大きくなったら、どうなるかもわからないのに――
がくぽは軽く天を仰ぎ、かいちょを抱き直した。
そう、将来、どうなるかはわからない――こうやって言ってくれるのが、いつまでのことなのか。
わからない、から。
「…………仕方ない。今晩は、いっしょに寝てやろう」
殊更に重々しい声をつくって言ったがくぽに、かいちょはぎゅううっと擦りついてきた。