「ふぁ………」
ふっと目を覚ましたカイトは、寝転がったまま小さく首を傾けた。
また、だ。
SPSS
「今日もかぁ………」
寝惚け半分の甘い鼻声をこぼしつつ、カイトは布団の中でもそもそと身じろぐ。とはいえほとんど、動けない。
それもそのはずで、カイトの体は背後から、がっちりと抱え込まれていた。寝ているとも思えないほどに腕の力は強く、容易く振りほどけるものではない。
そうでなくとも、普段から力の差も大きい。
相手は、がくぽだ。
最近新しく家族となった彼はなぜか、毎晩カイトが寝入ったあとに、カイトの布団に勝手に潜りこんで勝手に同衾するという、ちょっと困った癖の持ち主だった。
縋るようにきつく、カイトを抱きしめて――
ついでに言うと、抱く手をパジャマの中に潜りこませ、素肌に直に触れて。
「んー……ふぁん……」
寝る前にはきちんと、きれいに着られていたカイトのパジャマだ。しかし潜りこんだがくぽが、素肌を求めてボタンを外し裾をからげとして、朝となると無残なまでに乱れている。
毎日のことで、言っても男同士だ。
その手が胸に触れていようが、腹の際どいところを抱いていようが、貞操がどうのと騒ぐほどのことでもない。
とはいえさすがに、ズボンを半ば脱がされて下半身を剥き出しにされ、太ももに手を絡めていたときには多少、抗議したが。
「ぇへへ………っ」
堪え切れずに笑い、カイトは自分を抱くがくぽの腕に手を這わせた。きゅっと、抱きしめる。
こんなふうに添い寝を欲しがったり、べったりとしたスキンシップを求めてきたり――
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「ね。しっかり者っぽいけど、がくぽってほんとは、とっても甘えんぼさんなんだよ。ぇへへっ!」
――蜜のように蕩ける笑みで話を締めたカイトに、ダイニングテーブルの対面に座っていたミクは、隣のメイコの袖を引っ張った。
空白の表情でカイトを見つめたまま、ぼそりとつぶやく。
「めーこちゃん。カイトくんネラわれてない?」
メイコは肩を竦め、あっさりと応えた。
「狙われてるでしょ」