「んっわっ?!っっぅぷっ!」

唐突な勢いに素直に悲鳴を上げて、カイトは慌てて自分の手で自分の口を塞いだ。

ロズウェラ・モーヴ-03-

「な、なに、がくぽ、いきなりスイッチ………ナニがあ………っんっ、ぁ、ゃ……………あっぅぶっ」

「せんせ、せんせぇ…………っせんせぇ………っっ」

嬌声は堪えようもなく、カイトは両手で力いっぱい、自分の口を塞いだ。

興奮に見境を失くしたがくぽの攻めは、普段のまじめっこぶりが嘘のように激しかった。

それまでは覚束ない舌とくちびるで、恐る恐ると触れていた胸に、腹を空かせた仔犬のようにむしゃぶりつく。

しかも口だけではなく、もう片方の胸も、指で辿ってこりこりと弄ばれた。

弱いと言っている。普段だとて、触れられれば蕩けてしまう場所なのに、両方。

「ぅ、ぁ………っ、んっ、んん………っ、くぷっ、ぅ…………っっ」

両手で口を塞いでも、こみ上げる快楽は尽きない。体には苦しいほどに熱が募って、頭が朦朧としてくる。

そうでなくても、場所の緊張感で普段以上に感覚が尖っている。

とても立っていられず、カイトはへたへたと地べたに崩れた。それでも構わず、がくぽはちゅうちゅうと吸いつき、尖ったものに熱い舌を絡め、吐息を吹きかける。

「せんせ………っ」

「ぅっ、あ、ちょ、ちょっとま…………待って、待て、がく…………ん、ぉねが、待って………っ」

「せんせぇ、せんせぇ………っ」

「なんなの、もぉお…………っ!」

――正直、ちょっぴり舌足らずに先生せんせい言いながら、夢中になって吸いついてくるがくぽはかわいい。かわいさ絶頂だ。

ときめき過ぎて、なんでも言うことを聞いてあげたくなる。

が、そうも言っていられない。

なにかしら、ぷっつんキレたらしいがくぽはすっかり忘れているが、ここは公園、外だ。

しかも、がくぽの家の近所の。

自分から誘っておいてなんだが、そうそう興奮ままに、好き勝手するわけにはいかない。

いつもなら、カイトが言い聞かせればそれなりに『待て』が出来るお子だというのに、今日はまったく手綱が取れなかった。

珍しいほどに鼻息を荒げて、カイトへと伸し掛かってくる。

帰り道、別に電車やバスといった公共交通機関を使うわけではないから、多少は汚れてもいいとはいえ、それ以上に問題が――

「んっ、ちょ、ちょっと、立って、がくぽ………っ、ね、いいこ…………立って立って……、せんせが、がくぽくんの、なめなめしてあげるから………」

「せんせ………」

まるで幼い子供にでも言い聞かせるようになったカイトに、がくぽはようやく体を起こした。

快楽と緊張と諸々相俟って、カイトの体は完全に痺れて、動きが覚束ない。それでも出来る限り素早く膝立ちになると、がくぽを背後の木に押し付けた。

そのうえで、スラックスの張り詰める部分へと顔をすり寄せる。

「せんせ、そんなの………」

いいからとにかくツッコませろと。

おそらく言いたいのは、そんなことだろう。

若い――『幼い』とは、そういうことだ。恋人同士が体を繋げることを、『メイクラブ』という、古臭くもやわらかな言葉ではなく、『セックス』という、非常に俗で発散的な行為として考える。

カイトだとてそこまで悟りを開くような年ではないが、がくぽが相手だと、年上としての意識が冷静さを呼ぶ。

下半身をもぞつかせるがくぽに、カイトは張り詰める場所をくちびるで揉んでやりながら、笑った。

「一度、出しておこまずはせんせが、上のお口でごっくんしてあげるから……せんせの下のお口に入れるのは、そのあと。がくぽだって、入れる前にイっちゃったり、入れた途端にイっちゃったりしたら、ショックでしょ?」

「ぐぅ」

ぐうの音は出た。

がくぽはわずかに冷静さを取り戻して、笑うカイトから顔を背ける。

――はぢめてなんだから、しょーがないしょーがないちゃんとフッカツさせて上げるから、ヘコまないの。だいじょぶだいじょぶ☆

今でも鮮明に思い出せる、穴があったら埋めたい思い出。

初めてで、しかも相手が、短い人生でこれほど好きになったひとはいないというほどに、好きなひとだった。

カイトがひどくうれしそうで、愉しそうだったことも、よく覚えている――

「もうね、ちょっと馴れたでしょ……初めに一回、出しておいたらそんなことにならないから、がくぽ」

「…………ぅう」

慰めてくれているような、からかわれているような。

微妙に項垂れたがくぽとはさっぱり切り離されて、わずかも項垂れないものを取り出し、カイトはくちびるを寄せた。

「ん…………ぁむっ」

「………っ」

――ついでに言うと経験を重ねて、カイトが口に含んだ瞬間に極めてしまうということも、どうにかなくなった。

しかし久しぶりに、口に含まれた衝撃だけで達するところだった。

思わずくの字に身を折って堪えたがくぽを、上目で見たカイトが、咽喉奥まで咥えたまま笑う。

「せんせ………っ」

「ん、っぷ………はふ、ん…………ちゅ、んく………」

「ぅ…………っ」

入れた瞬間に出すことだけは堪えたが、すでにイきたい。

そうでなくても、カイトはがくぽの弱いところを熟知している。他と比べようもないのでなんとも言えないが、たぶん口淫自体も上手い。

裏筋を舐めるだけにしても、ねっとりとした舌の絡ませ方と、微妙なくすぐり方で、背筋が震える。

いくらなんでも秒殺はどうだと思うので歯を食いしばって耐えるが、それもそれでなにかが違う気はする。

「ん、ふ…………ん、んぷ、ぁ、は…………ん、がくぽ…………」

「ぁ、ちょ、せんせっ」

なんという声で人を呼ぶのかと、がくぽは腰を跳ねさせた。ついでにカイトは、がくぽのものにくちびるを添わせたまま、呼んでいる。

弱いところをくすぐられ、甘ったるい声で呼ばれて、がくぽは歯を食いしばる自分の口に手をやった。

きゅっと押さえるが、もはやそれで堪えられる射精感ではない。

限界を見て取ったカイトは、殊更に誘うように、とろりと濡れるがくぽの先端に舌を這わせる。

「がくぽ…………ねちょぉだい…………せんせのお口に、がくぽの濃ぉおいの…………」

「…………っひ、く…………っっ」

ちゅっと吸われて呼ばれるまま、がくぽはカイトの口へと放った。

「ん…………んっ、んく………っ、ふ………っっ」

「………ぅ、あ……………せんせ…………」

「んー…………ん、は、んく…………っんくん」

誘ったとおりに、カイトは吹き出すがくぽの体液を余さず飲み込む。

暗闇に透かして見るともなしに見ながら、がくぽはこれが若いといわれる由縁かと、茫洋と考えた。

すでに漲って、硬い。

「んっふっ」

ようやくひと段落つき、カイトがくちびるを離す。それでもしばらくは、咽喉がこくりこくりと嚥下に動いた。

「…………先生」

「待て。…………これで終わりなんて言わないから、ちょっと待て」

「………でも、……」

すぐさま伸し掛かりたい素振りを見せるがくぽを、カイトは手を挙げて制止する。

いつになくがっつくお子に苦笑しつつ、傍らに放り出していたコンビニの袋を漁った。

「………見ちゃだめ」

「無理です」

「即答しやがったな、このヤロウ………羞恥プレイ推奨って………いつからそんな子に」

へちゃんと地べたに座り、下半身を露出したカイトがやることに、がくぽは目が釘付けになった。

暗くて詳細はわからないが、カイトはコンビニでローションか、それの替わりになるものを買ってきたらしい。そのチューブを、スラックスと下着を半ば下ろして露出した自分の下半身に当てる。

「んっ……………つめた…………ぁ」

「………っ」

中身を、がくぽを受け入れる己の秘部へと押しこんだカイトは、体温とはあまりに違うその冷たさにぶるりと震える。

「………っふ、ぁ…………っぁ、ん…………っ」

「…………せんせ…………」

入れるだけでなく、チューブを放り出したカイトは替わって指を差しこみ掻き混ぜて、やわらかに解す。

大量のローションを入れられた場所は、カイトの指がわずかに動くだけでも、くちくちくちゅくちゅと卑猥な水音を周囲に響かせた。

興奮しているところに持ってきて、自分で自分のものを弄りながら悶えるカイトという光景。

見るなと言われたところで目が離せるわけもないし、興奮は萎えるどころか意識が飛びそうなほどに募っていく。

「せんせ…………っっ」

「ん、あと、これ、だけ…………」

「っ」

すでにくったりと蕩けかけているカイトだが、なんとか力を振り絞ると、再びコンビニの袋を漁った。

取り出したのは、ゴム――いわゆる、男性用避妊具だ。

ひとつの封をぴっと破ると、カイトは上目になり、困ったようにがくぽへと笑いかけた。

「今日は、これしてね、いい子………」

「………っ」

その締め付け感が好きかどうかはともかくとして、カイトが嵌めてくれるということが、背筋を痺れさせる快楽になる。

「ん、もぉ………出したばっかりなのに、こんなにおっきくしちゃって……」

詰るように、期待に蕩けるように言いながら、カイトはがくぽのものを覆う。もうひとつ封を切ると、それは自分のものに嵌めた。こちらは服が汚れることの、予防だろう。

そのうえでよろよろと立ち上がると、カイトはがくぽに背中を向ける。木に縋るように手をつくと、腰を突き出した。

「がくぽ…………いれて……」

「っ、せんせ………っ」

振り向いて言われ、がくぽは堪えようもなくカイトに伸し掛かった。支えるように腕を回しながら、抱き寄せる体に己を埋め込んでいく。

膜越しのもどかしい感触と熱ががくぽを包み、それだけは変わることなく、きゅうっと締め付けられた。

「ぅ、あ………っきつぃ………せま………っ、せんせ、せんせ………っ、きもちいぃ………っきもちぃい、せんせぇ…………っ」

「ぁ、んっ、ぁ………っあ、んんんっ」

興奮の激しさを表して、がくぽの腰使いも荒っぽく、急だった。容赦なく奥にまで叩き込まれ、突かれて、擦られる。

いくら解しても、いきなりそこまでの動きには追いつけないのだが、それでもカイトのくちびるからこぼれるのは、紛い物ではない嬌声だった。

支えてくれている反面、縋りつかれるようにぎゅうっと抱きしめられて、あまりに切ない声が耳に吹き込まれる。

いつも落ち着いて抑えられた声が、幼く舌足らずに感情を吐き出し、カイトを求めて高く啼く。

かわいさが募って、カイトのときめきは心臓が壊れそうなほどだ。

背筋をぞくぞくと、寒気にも似た痺れが駆け抜け、足が崩れかける。

「せんせ………っ」

「ゃ………っ」

ぎゅうっと抱きしめて呼ばれ、カイトは夢中で首を横に振った。

わずかに首を捻って振り返り、潤んだ瞳でがくぽを見つめる。

「『カイト』って、呼んで………せんせじゃなくて、名前で…………『カイト』って、がくぽ………っ」

「ぁ、カイト…………っ」

「っぁあっ」

請われるまま、素直に吹き込まれた言葉に走ったのは、寒気どころではない。雷だった。

堪えきれず、カイトは大きく仰け反って達した。

「ぅ、あ、しまる…………っっぅ、ぁあ………っ」

達したカイトにきゅうきゅうと締め上げられて、がくぽも呻くと、二度目の精を放った。

二度目であっても衰えを知らない勢いと量を吹き出しつつ、がくぽはカイトを抱く腕にぎゅううっと力を込める。

ついうっかり、愛していますとつぶやくところだった。

そこまでべったりしたことをすると、こんなときであろうとも、少女マンガの読み過ぎですかヲトメンですか神威がくぽくんと壮絶にいやな顔をするのが、カイトだ――